「ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ」Inner MBA 体験記 #5
Inner MBA 本編の2週目に入った。今週はまた別の講師から、実践的な瞑想の練習と免疫マップの作成方法の続きを学んだ。後者は今後何度も出てくるので、今回の投稿では前者のみについて書きたい。
リーダーシップの具現化: Richard Strozzi-Heckler
心理学の Ph.D である Richard からの講義は、道場のような広い部屋から行われた。彼の専門はエグゼクティブ・コーチングだが、バックグラウンドは少し変わっている。海軍の父を持ち、幼少期からあらゆる激しい格闘技を経験してきた(柔道、柔術、空手など - そして常に鼻血とひっかき傷にまみれていた)。その中でももっともハマったのが合気道で、本人も黒帯を持っている。さらに、陸上競技の全米代表として大学に入ってもいる。マッチョには見えないが、とんでもないフィジカルエリートだ。
つまり、彼は心理の専門家でありながら肉体の専門家でもある。言うまでもなく、心と身体は密接につながっているのだ... というストーリーラインで講義は進められた。「ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ」オリンパス社の名コピーが頭をよぎる。
彼がトップレベルの競技生活から学んだことの一つは、"How to win" でななく、"How to lose" だった。例えば陸上でオリンピックメダリスト達と競っていれば負けることの方がほとんどである。ただし、その中でも自己ベストを出したとか、自分に勝ったという経験を見出せるか否か。これが(ただでさえ競争環境の激しい)現代のリーダーに欠けている感覚なのだという。
知性、能力、責任感
そして話はリーダーシップ*へ。Richard 曰く、良いリーダーの条件は3つある。
1. 知性とコミットメントを持っているか。コミットは誰にでもあるがそれを適切にプレゼンする知性がないといけない。
2. その領域で有能であること。専門家でなくてもいいが、その領域で必要とされる能力を持っていること。
3. 自己があるということ。自分の行動に責任があり、ただ参加するのではなく、助言するでもなく、自分でないと導けない(Lead できない)と思えるか。
この部分、私なりにはそれぞれ 1.知性、2.能力、3.責任感と脳内翻訳してみた。そして、3要素のいずれかが欠けたらどうなるか?と考えてみた。
例えば仕事のチームなら、知性+能力だけだと「優秀な参謀」、知性+責任感だと「優秀なイエスマン」、能力&責任感だと「優秀なプレイヤー」となる。やはり3つ揃っていないとリーダーとは言えないだろう。
センタリング・プラクティス
話はスポーツに戻る。競技生活でも自己認識(Self-Awareness)がマインドフルネスの基本であり、そして良いリーダーになるための第一歩だ。Richard からのメッセージは性格やマインドだけでなく、身体を整えて自分の身体を意識することから始めようというもの。身体を意識することで、エナジーは後からついてくる。曰く "Energy follows attention"。
ということで、講義の後半は身体の動作によって心理をコントロールする方法が紹介された。名づけてセンタリング・プラクティス。サッカーのセンタリングではなく、自分の身体を世界の中心(センター)に持ってくる方法、ということだ。面白かったがテクニックを全部紹介すると長いので、ここではごく短くまとめる。
不安を感じているときは身体にも現れている。逆に身体をリラックスさせられれば心も釣られて落ち着く。これは、TED の名プレゼンHow body language shapes who you areとかなり主張が近いのでリンクを参照されたい。緊張する場面の前にお決まりのポーズを取ることによって、意図した通りに心をコントロールできるというものだ。イチローやラグビーの五郎丸で有名になったルーティン*もこの一種。
センタリング・プラクティスは呼吸を整えてニュートラルに立つ、いわば "瞑想的に"立つ技術。上下左右前後、全方向に意識を向けて空間と一体化する方法。
"上から釣られて天と繋がっているような感覚、足の裏から地面にしっかり支えられている感覚、前方向には衣服を通り越して、壁も通り越して遠くの草木や動物の息吹がある感覚、後ろは背中、背筋の向こうに置いてきた傷や過去がありその経験によって今があるという感覚..."
このように意識を(距離的、時間的な)遠くから身体の内部、センターまで持ってきて世界と自分をつなげるという練習を行った。ちなみに立てない時は座って行ってもいいそうだ。
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以上、今回も長くなってしまった...。最後にこの言葉が講義の中で紹介された。
"知識は自分の身体に入るまではただの噂だ"
瞑想エクササイズの後に肉体の専門家から言われるとさもありなん。文字通りの腹落ち、ということだろうか。
次回、Inner MBA 体験記 #6 「ダイバーシティの先へ」に続く!
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*脚注 1「リーダーシップ」というテーマだけで無数に本が出ているし、人によってその理解も哲学も千差万別だが、一旦、固定観念をなるべく捨てて Richard の主張を考えてみた。
*脚注 2 面接やプレゼンなど緊張する場面では個人的にもよく使っているテクニック。私の場合は両足で小刻みに2-3回ジャンプをして緊張をほぐす。同僚の中には腕組みをして鏡を睨み付けるという人もいたし、トイレで両手を上げて歩き回るという人もいた。
*脚注 3 余談だが私は漫画『ハンター・ハンター』の「円」を思い出した。
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