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「タイムトラベルする心」Inner MBA 体験記 #11

今回は注意力(Attention)と脳科学について、神経科学者の Amishi Jha からの講義。注意力が脳内のシステムにどう影響するのか?という話。

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 注意力のサブシステム

脳科学的には、注意力は大人になっても完全には完成せず、それどころか25-35歳をピークに下がっていく。そんな注意力には以下の 3 種類の特性があるという。

フラッシュライト: カメラのストロボのように一箇所を照らすシステム。複数箇所を同時に照らすことはできない。マルチタスクは不可能、神話である。タスクスイッチングは可能なのだが。この記事を書いてる間も...
警戒サイン: 運転している時に見える道路標識のようにアラートを出すシステム。
ジャグラー: お手玉のようにゴールとアクションが連動してるかマネジメントするシステム。全体を意識しながら個々のアクションを主導する。

そして、ストレス環境に晒されると注意力は散漫になる。

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昨年からよく聞かれるようになった VUCA というキーワードがある。不安定さ、不確定さ、複雑さ、曖昧さの頭文字だ。言わずもがな、2020年に世界はより一層 VUCA になり、我々はみな注意力を保つのが難しくなっている。注意力が散漫になると、脳内では以下のことが起きる。

1.フラッシュライトがハイジャックされる。どこに注意を向けていいかわからない。
2.アラートが暴走し、全てが警戒サインに思える。小さなことが気に掛かる。
3.軽快なジャグリングどころではなく、物事の優先度がわからなくなる。そして全てのボールを落としてしまう。

このようなコンボが決まってしまう。そして、鬱になる。

タイムトラベルする心


 注意力を失うケースとして、過去を思ったり未来を想像したりすることはよくある。これは人間特有の脳機能である。嫌なことを反芻したり、憂鬱なシナリオを想像したり。そして「いま」にフォーカスできなくなる。

では、心の中の巻き戻しや早送りではなく、「いま」のプレイボタンを押すには?そこでマインドフルネス / 瞑想のトレーニングが必要になる。

しかし、Amishi 自身にも瞑想に懐疑的だった過去があるという。彼女は学生の頃、著名な教授に「脳科学の脳の健康に良い事は何か?」と尋ねた。彼は一言だけ、「瞑想だ」と言ったという。「ここは科学のクラスよ?なぜそんな言葉が?」と彼女も最初は驚いた。

ただし、科学者としてはデータを見るまでは判断できないという事で、マインドフルネスを研究室で実験することにした。テーマは注意力のトレーニングとして有効かどうか。

被験者グループとして、配属される前の州兵たちに対してマインドフルネスのトレーニングを行った。戦場という究極のストレス環境に投入される前に。その中のある士官は ISIS 対策のためにイラクに派遣された。実際、マインドフルネスは VUCA どころではない危険な環境の中での判断力、すなわち「情報の選択と集中」+「自分の感情的反応の把握と対処」にも役立った。そして帰国した彼は昇進し、現在はペンタゴンで働く大佐になっている。

次の内容は実験の一部だ。

脳波測定実験とさまよう心

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日常の50% の時間、人間の心はさまよっている。ただし、白昼夢や妄想することはいいことである。これは脳に気持ちいい体験を与えている。問題は、「集中しなければならない時」にそれが起こることだ。

そもそも、脳はさまようように設計されているので、それが自然な状態なのだという。そして前述のようにハイストレス環境ではさまよう確率はさらに高まる。テストが近いのに無駄に部屋の掃除をしだし、掘り出した漫画に読み耽った経験があるのは私だけではないだろう。

Amishi の行った実験では、被験者に人物の顔写真と風景写真をミックスして次々に見せた。そして人物なら男か女か、風景なら屋外か室内かをボタンを押して答えさせた。写真が写ってからボタンを押す反応が早いほど注意力が高い状態。

次に、同じ被験者に対し、写真のセットから風景写真だけを不快な風景写真に変える(汚染された海や災害の写真など)。意図的にストレスを与えるわけだ。結果、風景写真だけでなく人物の写真に対しても反応時間は遅くなった。次に、同じ被験者に対し、写真のセットから風景写真だけを不快な風景写真に変える(汚染された海や災害の写真など)。意図的にストレスを与えるわけだ。結果、風景写真だけでなく人物の写真に対しても反応時間は遅くなった。

ストレスは注意力を鈍らせる。そして、単純な作業でもミスを引き起こしやすくなる。

(戦場の制圧ほどでなくとも)成し遂げたい目的のあるビジネスパーソンも、ストレスに正しく対処する必要がある。意図的に心がさまよう時間を減らし、ミスを減らし、注意力を存分に使いたい。

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以上、今回はサイエンスの角度からマインドフルネスを勉強した。ITの分野で働いている私としてはやはりデータや根拠に基づいた話がとてもわかりやすい。一方で、「大脳辺縁系」などの専門用語が難しかったので、いずれ録画を見返して復習したいとも思った。

次回、Inner MBA 体験記 #12 に続く!

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