神様の記録。映画『ペレ 伝説の誕生』アメリカ、2015年
娘と映画を見に行くときは、なるべく楽しい映画を選びます。スポーツ映画は王道。深刻なドキュメンタリーも必要だけど、見た後に元気になって、「明日からまたがんばろう」って思える映画や思い出が人生には必要だから。
ペレといえば、サッカーの神様。ブラジルの英雄。サッカーにあまり詳しくない私でも知っています。でも、一番昔の記憶では、夜中まで起きてワールドカップの試合を見ていた頃のスター選手はマラドーナやベッケンバウアー、プラティニ。
ペレは、さすがにリアルタイムでは見れていません。私の記憶では、映画『勝利への脱出』のペレ。戦争映画ではヒーローのシュワルツネッガーが、サッカー映画ではイマイチどころか、いま3なのがかわいいです。もとい。
この映画は、1950年のサッカーワールドカップ、ブラジル大会から始まります。自国開催なのに決勝で負けて優勝できなかったブラジル。スラムを駆け回って洗濯物を丸めたボールを追っかけている主人公ヂッコ(ペレって本名じゃなかったんですね。知りませんでした)は、元サッカー選手の父親が、つらそうに涙するのを見て、自分がサッカーワールドカップ選手になってブラジルを優勝させると誓います。
でも、スラムで生活するヂッコの家庭にとって、子供にサッカーをさせるのは大変なこと。お金持ちの家や病院で雑用をして生活費を稼ぐヂッコと家族。いつも、お金がない。サッカーの試合にでるにも靴もない。でも、元気で明るい子どもたち。そんなヂッコは、お金持ちの子どもたちとのサッカーの試合をしようとして盗んだピーナッツがもとで友達を失い、一時期サッカーから遠ざかってしまいます。
ようやく自分の気持ちに前向きになって、サッカーチームのスカウトを受けると、今度は差別や嫉妬が待っています。怪我もします。父親の励ましや母親の応援、なにより「自分自身を信じる」ことで、ヂッコはティーン・エイジャーでナショナルチームを背負い、ワールドカップで優勝を手にします。
映画は全てブラジルで撮影したとのことで、色彩豊か。音楽もステキ。なにより、ペレ(ヂッコ)役の男の子や周囲の子どもたち、選手たちもみんなしっかりプレーできる人を揃えたらしい試合シーンはお見事。ノリノリで楽しかったです。
映画『勝利への脱出』を見ていると、当時のサッカーは現代とはかなりスピード感が違うけれど、この映画は現代に近づけているのでリズミカルでスピーディ。軽快で踊るようなプレーは、やはり大画面でみると迫力あります。
余談ですが、ブラジル・サッカーの歴史を説明する場面で、ヂッコの特異なドリブルスタイルの「ジンガ」の由来が植民者に対する抵抗の武術って驚き。本当なのかな? もしかして、有名な『少林サッカー』って単なるお笑いコメディじゃなくて、実はサッカーの伝統に忠実だった!?(わけない!)
なけなしの私のサッカー知識は、大体漫画の『キャプテン翼』で仕入れたものが3分の1くらい。よく漫画に出てきた背番号10番=キャプテンって慣習は、実はペレの番号10がキャプテンナンバーだったから、というのを今回初めて知りました。
せっかくなので、今の仕事が一区切りついたら終わったら、娘のために『勝利への脱出』を一緒に観ることにしたいです。