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『三日月よ、怪物と踊れ』黒博物館シリーズ原画展(旧尾崎テオドラ邸)藤田和日郎
藤田和日郎さんの黒博物館シリーズは、熱烈な固定ファンのいる名作。最初に『ゴーストアンドレディ』を読んだときの感動は忘れられませんし、ちょっとめげそうになったときには、いつも読み返してパワーチャージをしています。
そんなわけで、最新作の『三日月よ、怪物と踊れ』も期待しかなくて、だけど毎回、単行本の発売を待つのも辛いので、がまんして連載の完結を待って、一気読みしました。ああ、至福の時間。イギリスのヴィクトリア朝時代の物語を堪能しました。
今回、黒博物館のキュレーターさんがお迎えするのはSFの祖ともいわれるゴシック小説『フランケンシュタイン』を書いたメアリー・シェリー。すみません、私はずっと、怪物の名前をフランケンシュタインだと思っていましたが、怪物をつくった人の名前がフランケンシュタインだったのですね。
メアリーの母はフェミニズムの創始者(先駆者)ともいわれるメアリー・ウルストンクラフト。父は無神論者でアナキズムの先駆者ウィリアム・ゴドウィン。 夫は詩人のパーシー・シェリー。なんか、すごい経歴の彼女は若くして『フランケンシュタイン』を書いて、エリート街道まっしぐらっぽいのに、かけおち結婚だし、子どもを何人も亡くしているし、夫も若くして亡くしたあとは、女手一つで息子を育てています。
息子の大学費用を工面するため、意に沿わない執筆を山ほど抱えて生活に疲れたメアリーのもとに、驚きの依頼が舞い込むところから物語がスタートします。いきなりあらわれたヴィクトリア女王の親衛隊長と、うさんくさそうな博士が、暗殺者の身体と農民の娘の頭をくっつけた怪物を教育して、ダンスパーティに出られるようなマナーを身に着けさせろとメアリーに要求します。
お金が欲しかったメアリーは、成り行き上、夫の実家のお屋敷で、体中包帯を巻いた「怪物」で無知な田舎娘の言動をする彼女に、「エルシィ」(=Little Child)と名付けて共同生活を始めます。女性に対する差別的な扱いが普通だった時代ですが、暗殺者としての身体を持つエルシィは強く、男たちをなぎ倒し、ロシアのコサックのように馬を操り、孤軍奮闘するメアリーを助けます。まるで、卵から出たばかりの雛が、最初に見たものを親だと思いこむように。
苦労するメアリーや、お屋敷のメイドたちを圧倒的な身体能力で助けるエルシィ。やがて2人の間には、母娘か姉妹のような感情が芽生えていきます。そこに有名な詩人バイロンの娘で、自身も有名な数学者のエイダ・ラブレスや、メアリーの息子パーシー、パーシーに思いをよせる貴族令嬢も加わって、物語はどんどんおもしろくフクザツに。
しかし、エルシィの身体は元暗殺者。彼女は女王護衛の任務のためだけに、大英帝国に生かされている存在です。しかも、彼女の元の仲間たちが、やがて彼女を追ってきて、当初の目的だったヴィクトリア女王の暗殺を実行しようとします。そして……
ああ、もう本当に、実際にあった歴史上の事件や、当時の文化、実在の人物を使って、こんなにステキで泣けて、元気になれるオリジナルな物語をつくれるなんて。藤田さんは本当にすごい。黒博物館シリーズの『スプリンガルド』の登場人物もちらっと出たりして、ファンサービスも上手いし。
実は、私はイギリスのこの時代のことに詳しくないので、最初『スプリンガルド』を読んでもどこがおもしろいのか、ちょっとわかりにくかったんです。でも、『ゴーストアンドレディ』や『三日月よ、怪物と踊れ』を読んで時代背景がわかってくると、物語の解像度が一気にあがって、おもしろく読めるようになりました。
そんな時、ちょうど『ゴーストアンドレディ』を東京の劇団四季が舞台化して、藤田さんの原画展もやっているときに、東京へ行く機会がありました。
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舞台チケットはとっくに完売だし、来年に決まったはずの大阪公演もチケットほぼソールドアウト状態。せめて、原画展くらいは見たいと世田谷に足を伸ばしてみました。ぴあでチケットを購入したら、時間制限のおかげで、ゆったり少人数で見れるんですね。うれしい。
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