マガジンのカバー画像

夕遊の中国旅

203
中国大陸とその周辺に関連する本や映画の話題を集めてみました。
運営しているクリエイター

#中国人

中国社会の暗部に挑む男たち。『検察官の遺言(長夜難明)』紫金陳(大久保洋子訳)

中国ドラマの名作『ロング・ナイト』(沈黙的真相)の原作。私は先にドラマを見ているので、ド…

夕遊
4か月前
37

「14億分の10憶」のリアル『中国農村の現在』田原史起

読む前から、間違いなく田原先生の本なら面白いだろうなと期待させられる本。そして、実際隅か…

夕遊
10か月前
42

ダサいけど無視できない。『戦狼中国の対日工作』安田峰俊

今から50年ほど前、当時国交のなかった中国と交渉するために訪中した田中角栄は、ホテルの部…

夕遊
1年前
34

中国ドラマや小説を楽しむために。『古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで…

出版直後からすごく話題でしたが、ようやく手に取ることができました。きっかけは、中国ドラマ…

夕遊
1年前
42

激変する社会と悩める若者たち『シン・中国人』斎藤淳子

日本では、世の中がすさまじく変わるという状況は、なかなか実感することができません。でも、…

夕遊
1年前
38

日本生まれの台湾人で、北京放送のアナウンサー。『陳真』野田正彰

私が初めて、NHK中国語講座をみたときに、穏やかな笑顔で発音を担当されていた陳真さん。て…

夕遊
2年前
33

難民、遺民、抵抗者。 国と国の境界線に立つ人々『境界の民』安田峰俊

一気に読める、読ませる本です。著者の安田さんは、大昔のblogの時代から文章がうまかったです。とはいえ、WEBと紙媒体では文章のまとめ方が違うので、最初の頃は肩に力が入った文章だったり、ちょっとまとめ方に気負いとか自意識がチラ見えしたり。 でも何冊か出版していく中で、そういう自分の色を上手くコントロールして、本書では難しい素材をうまく印象づける内容になっています。 さて、本書の主役はマージナルな人々。両親の片方が外国人で、日本人のコミュニティに馴染めず、かといって今すんで

移民焼き畑国家、日本『「低度」外国人材』安田峰俊

安定の安田峰俊さんのノンフィクション。悪名高い「技能実習制度」で騙されて、日本に来てひど…

夕遊
3年前
23

映画のような物語。『碁を打つ女』シャンサ

舞台は、1937年の「満州」。中国東北部の厳しい寒さの中で、広場に集まって男たちが碁を打…

夕遊
3年前
20

日本人にだって難しい。『ポンフェイ博士の知れば知るほど「はてな?」のニッポン』彭…

ある年配の日本人を、空港に迎えに来たときの彭飛(ポンフェイ)さんのエピソード。 著者の当…

夕遊
3年前
16

果てしないチャイニーズ。『もっとさいはての中国』安田峰俊

『さいはての中国』の続編。 おもしろさは、さらにパワーアップしています。 序章 濃厚な「中…

夕遊
4年前
19

怖すぎて、おもしろすぎる社会派ミステリー。『十面埋伏』張平(荒岡啓子訳)

タイトルの十面埋伏というのは、周囲に隙なく伏兵が潜んでいること。この小説の場合、警察組織…

夕遊
4年前
19

中国との商売が牧歌的だった時代。『中国てなもんや商社』谷崎光

首の入らないTシャツ。プリント部分がくっついて、蛇腹のようになってしまったシャツの山。ジ…

夕遊
4年前
24

江戸時代から薄給・兼業だったとは!?『<通訳>たちの幕末維新』木村直樹

文句なくおもしろい1冊。長崎のオランダ通詞が、組織として歴史上名前が登場してくるのは1641年。最初は特定の家の家業で、商売だけのやりとりの場合、およそルーティンな仕事だったらしく、家業として代々引き継げればいいレベルのものだったらしいです。おかげでオランダ側が、古臭い言葉の連続に驚くほど。 それが幕末が近くなると、英語の比重が大きくなり、多様な言語でのやりとりや政治方面まで大きく関わらざるを得なくなります。そして、個人の技能に大きく左右される通詞の仕事には、いろいろな人が