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丸鶏の捌き方と食べ方

2020年5月にFBへ投稿したものだが、有益かも?と思ったので、noteに転載する。
魚の捌き方を書いたものはたくさんあるが、鶏の捌き方を書いたものは少ないからだ。
より詳細に知りたい方はYou Tubeを検索して、動画で学んだほうがいいだろう。
なお、羽抜きは終わっているが、鶏の死体が出てくるので、嫌な人はこれ以上、読まないでほしい。

この時の鶏は、ヤマトシャモ×土佐九斤の親と、インギー鶏×土佐九斤の親という、日本の古い品種ばかりをかけ合わせた特殊な鶏を180日育てたもの。ちなみにヤマトシャモはタイ王国から、土佐九斤は中国から、インギー鶏はイギリスからそれぞれ伝わった。
土佐九斤の血が濃く入っているので身体が大きいが、肉質的にはシャモの影響が強いように感じた。
インギー鶏は一度しか食べたことがないので、どんな感じで入っていたのか判断できず。
育ててくださったのは広島県大朝郡北広島町のふぁーむbuffo
養鶏をやっている人から見ると、そんなんでビジネスになるのか?と訝るような趣味性の高い養鶏を行っているが、僕は何度も現地に行ってディスカッションしており、全幅の信頼を置いている。
日本中探しても、ここより面白い鶏を育てているところは多くないだろう。

今回はオスだったこともあり、肉質と香りは野生のキジに近い。
(キジはオスしか狩猟できない)
脚の腱はキジほどではないが、鶏とは思えないほど強靭だった。
(キジはペンチで引っこ抜く必要がある)
また、市販の鶏肉とは比較にならないくらい肉に弾力があり、水分が少ない。
これも野生のキジと同じ。

下にあるペティナイフ一つで捌く

切るのは皮と腱だけで、肉は指で骨から引き剥がすので、大きな包丁はむしろ邪魔だし、ハサミは余計なところを切ってしまうのでNG。
小さくて鋭く、少ししなるような包丁が捌きやすい。
土佐九斤の血が入っているから、この掛け合わせにしては180日で1kgくらいと大きめ。
なお、ブロイラーは60日で2.6kgになるので、骨や腱の成長が筋肉に追いつかなくて、30%は歩行困難となる。

片足のモモ肉を外したところ

股関節を脱臼させて、周囲の腱を切り、骨盤についた筋肉を筋膜から剥がすようにすればキレイにとれる。
骨には全く肉が残らない。

両足を外した

背側から見た時、両側から抉れるように窪んだところ、ここにソリレスが収まっている。

この部分がソリレス。
品種によって形が異なり、この鶏の場合、窪みが浅くて広め。
シャモの影響と考えられる。
もう少し深くて剥がしにくいものが多い。

胸肉とササミ

手羽の付け根の関節を割り、そこから上手に剥がすと胸肉がとれる。
胸肉の内側にあるのがササミだ。
ササミが張り付いているのは胸骨で、ブロイラーならヤゲン軟骨がとれる。
しかし、しっかり育てた鶏から軟骨は取れない。
ヤゲン軟骨も膝軟骨も、硬い骨になっているからだ。

胸骨からササミを外す

端っこの腱の部分だけ包丁で切り、残りの部分は手で剥がしたほうがきれいにとれる。
止り木で眠るのが好きだった鶏は、この胸骨に止り木に押し付けたような変形が見られることがある。
もちろん味には全く影響がない。

首周りの皮は分厚くて旨い

首の皮を外した。
この部分の皮が最も分厚くて旨いので、焼鳥店の皮はほぼこの部分が使われている。

鶏ガラに近い形になった

ここまでに主要な部位。
モモ肉、手羽、胸肉、ササミ、首皮を外した。

フリソデを外す

希少部位でフリソデと呼ばれる肉があるけれど、あれは胸肉と一緒に剥いだ際、フリソデのように垂れ下がるためではないかと僕は考えている。
実際は肩の部分にある肉で(親指の場所)、この品種は割りとボリュームがあった。
ソリレスもそうだが、希少部位と呼ばれる肉が、どこに存在していて、どういう動きをする筋肉なのかを知ることは、鶏肉の理解において重要である。
焼鳥専門店で働く方ですら知らなくて驚くことがある。

小ササミを外す

鎖骨の下の取り外しにくい場所に、ササミを小さくしたような肉がある。
僕はこれを小ササミと呼んでいる。
非常に外しにくい上に小さいので、通常は鶏ガラに残したままにされるが、せっかくなのでこれも外す。
自分で捌くからこそ食べることができる希少部位だ。

希少部位4種

希少部位を並べてみた。
左下が小ササミ、その右上がセセリ(首肉)、その右が腹肉、一番右側が肩肉(フリソデ)だ。
腹肉はオウカクマクという名前で流通していることが多い。
しかし、鶏は鳥類なので横隔膜が存在しない。
商品名がオウカクマクなだけで、牛肉のハラミやサガリとは別の部位だ。
肋骨や胸骨に守られていない、内臓を包む肉で、人間でいえば肋骨より下、骨盤より上の腹回りの肉のような部位だ。

ピカピカの鶏ガラ

全ての肉と内臓を外したので、熱湯をかけて酸化した表面の脂と体液を流し、肋骨にへばりついている腎臓を指でこそげ落として鶏ガラダシをとる。
下のガラの右側にある菱形のような、三角形のような部位がボンジリだが、これは外さない。
尾羽根の毛根が大量に残っていて、それを除くは困難だし、脂の塊なので食べようとは思わない。
ブロイラーですら脂っぽいので...。

主要な肉

まだ胸肉と手羽がひっついているし、モモ肉は脱骨していないが、それは追々やる。
首肉は鶏ガラダシと一緒に下煮して、焼いて食べる。

希少部位盛合せ

右上から肩肉2つ、時計回りに腹膜2つ、小ササミ2つ、セセリ3つ。
鶏油で焼いて、塩をかけて食べた。
風味が濃い!旨味が強い!

ピカピカの内臓たち

内臓は鮮度が重要なので、その日に食べる。
左側の赤と白の斑になったものが気嚢。
鳥類の肺だ。
その横の小さな小豆大の粒が脾臓。
その上にあるのが肝臓。
肝臓の右側が心臓。
心臓の下にあるのが砂ずり。
一番右側にあるのが精巣だ。
馴染みがない部位も含まれているだろうが、脾臓と気嚢は鮮度落ちが早いのと、味的にも一般受けしないので流通しない。
肝臓、心臓、砂ずりは普通に売られている。
精巣は魚の白子だと思えばいい。
味的にも似ているが、ブロイラーは性成熟するまで育てないので、精巣が充分の育たない。
また、鶏も豚も猪も牛も同じだが、一般的にメス肉が好まれる。
オスは育てないか、去勢して育てることが多く、精巣が大きくなるまで育てられることが少ない。
そのため希少部位中の希少部位と言えるだろう。
この他にもオスならば鶏冠も食べられるが、特に味わい深いものではない。
コリコリしたゼラチン質だ。
他には腎臓も食べられるらしいが、外した時点でボロボロに崩れているし、肝臓より旨いとは思えない。
まだ食べたことがないので、いつか試してみたい。

ちなみに腸も食べることができる。
鶏のホルモンだ。
原初の焼鳥は焼鳥と看板を掲げていながら、豚や鶏の内臓を串に刺して焼いていた。
豚は体格が大きいので内臓も大量にとれるが、鶏は主に腸が使われた。
しかし腸には大腸菌やサルモネラ菌などの汚染がある可能性があるので、腸を切り開いて内側をきれいに洗い、しっかり加熱しなければならない。
これは牛や豚と同じだ。
一度試してみたが、さすが腸だけあって豚や牛の小腸と似た風味があった。
面白くはあったが、鶏の腸は細いのでムチャクチャ手間がかかる割に格別なおいしさではない。
動物性タンパク質に飢えていた明治から大正初期であれば、タダ同然で手に入れ、頑張ってキレイにして串に刺し、屋台で売れば客が来たようだが、今ではやる者がいないだろう。

焼いた内臓

気嚢は煮物にしたほうが旨いが、面倒なので全部焼いてしまった。
鮮度が良いのでどれも旨い。
健康的に育てられた鶏なのでレバーが別格に旨かった。
脾臓は少し苦味がある珍味系。
精巣は魚の白子と同じように、トロリとしてクリーミー。
人のも食べたらそういう味なのか?と、思わず我が股間をみた。

鶏ガラダシをとった残り

鶏ガラスープは胴ガラだけでなく、大腿骨の骨、手羽の先、頭、足(爪は切る)、ササミから外した腱まで、全部入れて、骨が崩れるまで炊く。
食べないのは、羽、気管、胃、腸、腎臓くらいだろう。
豚や牛もそうだが、頭からは良いダシが出るのだ。
写真を見てもらってわかるとおり、ふぁーむbuffoの鶏を使う場合は香味野菜を一切入れない。
鶏の良い香りの邪魔になるからだ。

黄金の鶏ガラダシ

オスなので鶏油が少なめだったが、それでも普通の鶏に比べると断然多い。
この鶏油が最高に旨いので、出てきたらすぐにすくい取る。
そのまま炊き続けると鶏油が酸化して嫌な匂いになってしまうからだ。
完成した鶏ガラダシに鶏油を戻してやると写真のようになる。
このスープは色んな使いみちがあるけれど、ジップロックに入れて空気を抜き、冷凍すれば日持ちする。
ホームパーティの博多水炊きなどで使うのもいいし、ラーメンにしてもいい。

首皮を茹でて焼いたもの

首皮は鶏ガラダシの中で程よく茹で、それを引き上げて、魚焼きグリルでパリッと焼いた。
程よく脂が抜け、ゼラチン質たっぷりだが、煎餅のような香ばしさで、非常に旨い。

旨い鶏でしかおいしくならない

ササミは鶏酒にした。
これは旨い鶏でなければできない。
同じ料理をキジでやるとキジ酒になる。
この料理は明治天皇が毎晩のように召し上がられていた料理に基づく。
最初は半信半疑でやってみたが、最後は吸物のような味になる。
酒は剣菱黒松などの古い骨格の酒が合う。
飛び切り旨い鶏肉を手に入れたら試してほしい。

ディープな情報になったが、鶏肉好きの方の参考になれば幸いである。

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シャオヘイ
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