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有機シリカという何げない優れモノ!

「有機シリカ」が私の日常に飛び込んできた

三カ月ほど前に、ある開発プロジェクトの打ち合わせで一人の技術者と知り合った。その人がどのような技術開発に関わっているかについては、打ち合わせの主宰者から簡単な説明を受けていたので知っていた。しかし、その開発プロジェクトの中で彼の関連している技術がどういう役割を果たしているかについては、人に説明できるほど私は詳しくは知らなかった。というのも打ち合わせでは参加者が数人いたので、その人と二人だけで話し合う機会はほとんどなかったのだ。
ところがそれから三か月後に、突然その先生から電話があった。近く会って詳しく相談したいということだった。彼にしても私と同じように、私の得体がよく分からなくて、それがストレスになっていたのだと思う。お互いに仕事として連携できるかどうかは別にしても、まずは相手が何をする人で、どの程度の才能や専門的なスキルを持っているのか知っておきたいのだと思ったのだろう。

「シリカ」は、地球上で酸素の次に大量に存在するモノ

恥ずかしいことに、私はこの時初めて先生から「シリカ」というものについて聞かされて、身近なモノとして認識することができた。もちろん私にも、かなり不確かではあるが、一般人が知っている程度の知識はあった。「シリカ」というのは、「ケイ素」とも呼ばれているミネラルなのだが、よくよく聞いてみると、何気ない物質だが、「ちょっと常軌を越えた優れモノ」だという印象を持った。その驚きの第一は、「シリカ」は岩石や土壌の主成分で、この地球上では酸素に次いでたくさん存在する物質だということだった。岩石や土壌の主成分なので、パワーストーンとして人気のある「水晶」も「シリカ」だし、セイコーが国産第一号の「クオーツ時計」を開発しているが、この「クオーツ」という言葉は石英《セキエイ》、水晶《すいしょう》のことで、当然「シリカ」だ。この「クオーツ時計」は、 振り子やテンプの代わりに、水晶振動子の正確な振動数を時間の基準にするもので、これによって時計の精度を飛躍的にに高めることができたということらしい。

「シリカ」は、この地球上で、酸素に次いでたくさん存在するというのに、「シリカ」は人間の体内で生成できない。だから食べ物や自然の水の中に溶け込んだものを摂取しなければならない。なぜ人間が摂取しなければならないかと言えば「シリカ」は骨の形成に関与しているらしく、骨密度や骨質を向上させ、骨祖しょう症を予防するものと期待されている。それだけではなく、関節の軟骨や腱(けん)のコラーゲン生成を促し、関節痛等の改善にも効果が期待されているという。さらにはヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンの結束を強める力があると言われていて、強い肌や爪を作るのに大事な役目を果たしている可能性もある。

「有機シリカ」は植物由来で、その原料は籾殻《もみがら》

ところが「シリカ」といっても、ここまでは鉱物である「無機シリカ」が話題の中心になっている。しかし私がこれから説明したいのは、「有機シリカ」の働きだ。「無機」と「有機」の違いについては、短時間で説明するのが難しいので稿を改めるが、要は「有機」は植物由来なので「有機シリカ」は体との親和性もよく、これまで「かゆみ」「しみ」「ソバカス」「ろうはん(老人性色素斑)」の民間治療薬として活用されてきた。殺菌・抗菌効果は知られていたが、近年科学的な視点から再認識されはじめ、健康や医療、食品での応用範囲の可能性が格段に大きくなりつつある。具体的な可能性を挙げれば、有機シリカは人畜無害の物質で、しかも体内からは一定時間内で排出されるので、蓄積のリスクはまったくないらしい。「有機シリカ」の社会や人間への多様な有用性、ひいてはビジネスとしての可能性の多様性については説明しきれないので、ビジネスの可能性の一例を示しておきたい。

籾殻《もみがら》を原料にした「シリカ水」のビジネスモデル

シリカ水の原料は「有機シリカ」だが、すでに化粧品、食品、健康食品、飲料水メーカーなどの分野では有益な成分として大きな注目を浴びている。「籾殻」を原料とするビジネスの課題の一つは、原料となる「籾殻」を効率的に確保すること。そしてその「籾殻」を、必要以上の高温となる熱源を使わず、「シリカ」を焦がさず分解させることが不可欠だが、現状の方法論では高品質のものができず、いかに速く必要な高温を維持するかということが求められている。この課題を克服して実際に高品質の「有機シリカ」を大量に生成することを可能にしたのが、「磁気炉」と呼ばれる特殊な「炉」で、その開発の第一人者が、私が最近会った件の技術者というわけだ。この「磁気炉」では48時間で20リットルのシリカパウダーを生成することが可能だ。シリカパウダーは通常で1キロ当たり50,000円程度で取引されているが、完全な「有機シリカ」が誕生すると、その働きの多様性から、さらに高額になると思われるが、圧倒的な生産量が求められるようになる。
「磁気炉」の販売価格も明らかにされていないが、ビジネスの基本構造としては、比較的小さな出資で事業化できるので、十二分な事業性がある。エッセイのコラムとしては無粋かもしれないが、一つの試みとして、このプロジェクの進捗は、断続的に見守りつつ、多くの人と夢を共有できればうれしいと思っている。


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