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Photo by
ヨハネス・フェルメール / メトロポリタン美術館
落花流水 著:山本文緒
手毬(てまり)こと、マリの一生を描いた作品。マーティルと言う幼馴染と結婚したあと再会して、駆け落ちしてしまうのだ。手毬の母親も蒸発してしまうし、女性が家族から切り離されて、自立して生きて行く様を描いている。
手毬の娘の姫乃とグミ、最後は手毬がボケてしまって姫乃と蒸発した母が介護の人に呼び出されて終わるのだ。とっても読み易い作品だった。
落花流水とは
落ちた花が水に従って流れる意で、ゆく春の景色。転じて、物事の衰えゆくことのたとえ。時がむなしく過ぎ去るたとえ。別離のたとえ。また、男女の気持ちが互いに通じ合い、相思相愛の状態にあること。散る花は流水に乗って流れ去りたいと思い、流れ去る水は落花を乗せて流れたいと思う心情を、それぞれ男と女に移し変えて生まれた語。転じて、水の流れに身をまかせたい落花を男に、落花を浮かべたい水の流れを女になぞらえて、男に女を思う情があれば、女もその男を慕う情が生ずるということ。
とても男女の馴れ初めを綺麗に描いてる。そして、その別れもあっけなく描かれている。手毬が小さい頃から年老いるまでを年譜を変えて語り手を変えて瑞々しく描き切った作品だ。手毬の母が生きてた事が最後ビックリしたが、皆一様に、それぞれの生活を持ち一抹の親心、子心を抱えながら手毬の元に会いに来る。手毬が愛したのは母の再婚相手であり、結婚後愛してしまったのはマーティルだった。その恋愛も長くは続かず、手毬は恩人のお爺さんの籍に入り、死んでしまおうと思っていたが、そうとはならず、2027年を最後として描いている。
ネタバレになってしまったが、思いのほか楽しめて読めて、読み易かった。意外な真実が挟まれビックリしながらも、文緒さんの文体の潔さが詰まった名作でした。
以上
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