蜜と唾 著:盛田隆二 光文社文庫
亮平が書いたブラック企業体験ルポが雑誌に載った直後、四年ぶりに美帆子から電話がかかってきた。美帆子はかつて亮平が家庭教師をしていた拓海の母親だ。拓海は中学受験を前に交通事故で亡くなり、その死はふたりに暗い影を落としている、はずなのだが......。この電話の二ヶ月後、亮平の元を刑事が訪ねてくることになる。リアリズムの名手が放つ傑作犯罪小説。
解説も含め406ページ読了。解説にもあった通り、亮平、早紀、波多野の3人の語りで展開して行く小説で、肝心の美帆子の一人称が無いのが謎に包まれた魔性の美女の輪郭を浮き立たせている。
最後まで読んで、拓海くんの死が明らかになり、美帆子が魔性の女であったと納得が行く作品だ。
読んでてイライラした。美帆子の振る舞いがどうしても身勝手に思えたからだ。その通り、美帆子が捕まって終わった。その経緯をライターである亮平が記したフィクションと言う結末に読後の納得感を味わっている。30万が手に入り、亮平の中国取材が泡と消えた時は残念だった。
雑誌の言論コロシアムの件もせっかく入稿したのに不掲載で、ライター家業と言うのは実入の少ない狭き門だなと思い知らされる。
いつものように読み進められなかったのはサスペンスでミステリー調だったからだ。昨今、ミステリーが流行のようだが、私は普通の一人称恋愛文学が好きだ。二人の関係がいったいどうなるのかなと読み進めるのが常だった。こんなホラーな結末は少し後味が悪い。
それにしても、カバーに書かれてる小説は全部読んだんだなと感慨を覚えている。
盛田隆二さんの他の著書の紹介に『おいしい水』『ありふれた魔法』『散る。アウト』『ストリートチルドレン』『あなたのことが、いちばんだいじ』『二人静』『身も心も』『蜜と唾』と紹介されてるのだが、全部読んでいる。私も盛田隆二ラバーと言って差し支え無いだろう。
次は『ニッポンの狩猟期』を読もうか『金曜日にきみは行かない』を読もうか。ありふれた日常に彩りを添えてくれて有難う御座います。
以上
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