映画感想「7つの贈り物」
先日は映画「ペイフォワード」をみた。贈与・借り・恩義に関する映画ということで今日は「7つの贈り物」という映画をみた。ネタバレしない程度の感想を述べる。
主人公が7名の人々に贈り物をするという筋書きだが、主人公にあまり共感できなかった。というのも、主人公がそもそも贈り物を始めた動機づけと主人公が誰かに贈り物をするという行動のつながりがあまり描かれていなかったからだろうと思う。言い換えると、贈り物以外の他の貢献活動や贈り物をするにしても他のやり方があったのではないか?と最後まで見たとしても思えてしまうからだ。
また、私の記憶力では対象となっていた7名を視聴中に数えて識別できなかった。このことの原因は、主人公の回想シーンと現在のシーンの切り替わりが曖昧であること、そもそも登場人物が多く、誰が重要な人物で誰がそうでないのか(モブなのか)がわかりにくいこと、主人公が贈り物をする基準が今ひとつハッキリしないことなどが挙げられるだろう。例えば主人公は徴税官として税金滞納者にアプローチするが、あまりにも私生活に踏み込みすぎていて、かつ、公務員にしては私情を挟み過ぎに思われ、良い印象を持つことができない。
加えて、映画の前半部では私はダレてしまった。なぜならば、展開は都市を主人公が歩き回るだけの地味なものでゆったりと進み、派手なアクションやギャグなどもないため、メリハリが感じられなかったこと、それから、主人公の行動の意図が伏せられ、謎が宙吊りにされている時間が長いからである。後から確認すればもちろん、伏線はハッキリと張り巡らされていることが認識できるのだが、最初はただ主人公があやしげな人物にみえるだけで、その時間が長い。
一応、後半部に主人公が恋に落ちるシーンなどがあるが、かえってラブシーンの尺が長過ぎた。興行的な意図があったのかもしれないが、カットしてもらった方がよかったのではないかと思う。なぜならば、映画全体の趣旨や無償で赤の他人に贈り物をするという観点からみると、主人公の個人的な恋愛感情は余計な印象を与えるからである。
贈与という観点から考えると、主人公が贈り物をする判断基準がもっとハッキリしていれば、一定の思想を印象として残すことができたのではないかと思うのだが、映画の中ではふと見かけた子供に贈り物をしたかと思えば、別の税金滞納者には僅かな証拠で突然冷たくなったりと気まぐれである。或る意味、慈善とはそもそも気まぐれなものであり、目についた人、そばにいる人、助ける意味がありそうな人を選別して助けるものなのかもしれないが、それならそれでもっと身内から助ける相手を探している様子があった方が一貫性はあるだろう(もっともそうなると、普通に家族愛を描いた作品になってしまう)。
(1,142字、2024.02.08)
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