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えこな
2019年9月21日 07:33
雨の日の図書館ってのも嫌いじゃない。小洒落たショートケーキみたいな直方体の建物の中に、何十万冊の本が眠っている。本ってのは数百枚の紙からできていて、紙は空気中の水分を吸う。森林と同じで、呼吸をする。雨の日の図書館は、だから、音もなく外の雨を吸い込む。そして晴れの日に溜めこんだ湿度を解放する。そういう、無機質な生命体。その体内に、俺は今から入っていく。傘を閉じて、ジーパンの裾を軽くはたいて、靴底の