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【かけ算の順序についての考察】今日もTwitterで議論(?)が繰り広げられとるな

こんにちは、わたねこです。
今回は『かけ算の順序問題』についてです。


1.かけ算の順序問題とは

かけ算の順序問題(かけざんのじゅんじょもんだい)は、かけ算によって解が得られる算数の文章題において、特定の順序で書かれた式のみを正解とする採点方針と、どの順序で書かれた式でも正解とするべきであるという主張の対立である[要出典]。日本では、1972年に朝日新聞で報道されて以来、数学者らにたびたび取り上げられてきた。「かけ算の順序強制問題」「かけ算の式の正しい順序」「かけ算の順番」などとも言われている。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

この『かけ算の順序問題』についてはTwitterでも常に論争が起きていて、終息する日は一生来ないと思っている。

「自分の意見が一番正しい」という主張を通すこと(≒証明すること)が目的になっている人が一部存在することと、揚げてもない足を取ろうと躍起になってすぐに💩リプ投げる人も一部存在することと、相手の立場を勝手に決めつける人も一部存在することと、相手の話を全て否定したがる人(≒それに快感を覚える人)が一部存在するからだ。

それに加えて、それぞれの主張の根拠や背景がみんなバラバラであるにも関わらず、相手の意見の根拠や背景に対して全くと言っていいほどに興味がない人がほとんど(という印象)なのだ。

彼らの言う「子どもがかわいそう」「子どものために」という目標設定が本当なら、様々な立場の様々な意見を取り入れて子どもにとっての最適解を見つけるのが良いと思うのだけれど、なぜそうならないのか……。

というような内容を、だいぶマイルドにしてツイートしてみたつもりなんだけどなぁ。

2.私の考え(ざっくり)

かけ算の順序問題について。視点を合わせないまま(お互いの視点を共有して理解し合ったりしないまま)何年やり続けるのでしょうか……。私は、それぞれがそれぞれの立場での最適解を話していると感じています。だからこそ、お互いの立場や視点を共有し合って繋げていくことが必要と思ってます。

子どもたちや教育関係の話になると熱くなってしまう私の悪い癖が出て、全然トゲを隠せていない……ということが冷静な今なら分かるのだけど……お察しの通り、まーーーーーた💩が飛んできた。そして、中には「一理あるな」って思うリプもあったけど、ほぼすべてのリプや引用RTが「憎き、順序固定派めぇえええええええ」という内容だった。

つまり「順序固定派」の方々からも、そちら側だと思われていたってことだよね。だから、そちら側からは💩が飛んでこない。
……そうそう!!!!
そうなんですよ。
どの派閥(?)にも💩投げ選手が存在する。
会話をするための言語力(コミュ力とも言える)がなくて見るに堪えないものも本当に存在するので、興味があるかたはTwitterで「かけ算順序」と検索をかけてみると良い。

……ところでさ??????
いつ、私が「順序を固定しろ」と言った??????

目の前の子どもが混乱しないことだけが正義だと思っている。

ただし、小学校学習指導要領がある限りは、教育現場にはある程度の制約があることや、かけ算を習う2年生の脳の発達のことを考えると、順序があった方が対応しやすい場面の方が多いのが現実ではないのかな、とは思っている。それが良いとか悪いとかを言いたいのではなく、そういう現実があるのは事実だってことを言いたい!かな。

だからと言って、順序に従わなかったらすべてバツ!とは思っていないし、計算することにおいてはどっちでも良いし、とにかく目の前の子どもが一番納得できる形がベスト。

ちなみに、ひっくり返せる式が存在することも知っている。

一見、矛盾して見えるかもしれないのだけど、そう感じる人にこそ、このnoteは読んでいただけたら嬉しい。

学校のテストで式をかかせる意味だとか、中学校に入ったとたんに算数だけが5教科の中で唯一「数学」と教科名が変わる意味とか……。そういう諸々の前提条件を含めてTwitterで140字でやり取りをする(定期的に💩が飛んでくる)のはエネルギー消費が激しいので、今回のnoteにすべてまとめることにした。

3.このnoteについて

まず最初に、サクッといくつか参考文献を示そうと思う。公的な文章はお堅いので、ちょっと補足や私見も挟みつつ。そして、改めてこの問題についての自分の思考を整理する良い機会にしようと思う。

そして、私のツイートに対して飛んできたリプや引用RTにすべて答えていこうと思っている。(2023.06.25 現在までのリプ&引用RT・気まぐれに随時更新)あれこれ言われっぱなしも癪だし、反対意見などをきっかけにして自身の考えをさらに掘り下げられる可能性もあるので、文字にしておきたいという自己満足。故に、表立って公開したりはしない。

何度も申し上げてきた通り、中には💩も含まれるので、善良な市民が誤って💩を踏んでしまわぬように……という思いもある。という訳で、お返事部分のみ有料にすることにした。

……とは言っても、そもそも私と本気で議論をすることで何らかの答えに辿りつこうとしている人はほぼいない印象なので、とくに問題もないと思っている。

ちなみに!
Twitterに飛んで探せば該当ツイート(リプや引用RT)にもたどり着けるとは思うが、「誰が発言しているか」は今回はとくに重要でないことや、ツイート削除されても文章が残せるメリットなどから、該当ツイートはnote上ではすべて匿名で載せていく。

【追記 2023.06.26】
小学2年生関連以外のリプも飛んでまいりまして(まだ有料部分に載せていない)、それは別枠にしようかな……。ちょっと長くなりそう。

さてさて、では本題。

4.参考資料や文献

①「学習指導要領」

「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準です。およそ10年に1度、改訂しています。
子供たちの教科書や時間割は、これを基に作られています。

「学習指導要領」とは?/文部科学省

昭和二十年代後半から、日本教職員組合は国の教育政策に対して激しい反対闘争を繰り返してきた。特に三十年代は学習指導要領改訂に伴う教育課程趣旨徹底講 習会への反対闘争や全国学力調査の実施への反対闘争が激しく、各地で教育紛争が発生して裁判で争われることとなった。

これらの裁判では、主として学習指導 要領の法的基準性(法的拘束力)の有無が争点となり、三十年代後半から四十年代を通じて、これらの裁判について次々と判決が出された。地裁段階及び高裁段 階では多くは学習指導要領の法的基準性を認める判決であったが、中には学習指導要領は単なる指導助言文書であり法的基準性はないとする判決などもあり、教 育界の一部では混乱を招いていた。

しかし、五十一年五月に旭川学力調査事件の最高裁判決が出され、学習指導要領には法的基準性がある旨の判断が示され、戦後長らく争われたこの問題に最終的な決着がついた。

学習指導要領をめぐる教育裁判/文部科学省

「学習指導要領には法的基準性がある旨の判断が示され」ているのです。つまり、この学習指導要領に基づいて授業を組み立てるのが基本ってことです。お国がそう決めているの。

というわけで、学習指導要領を読んでいない時点で『かけ算の順序問題』に口出しする権利はないと思っているのが私の意見。

そして、読んだ上で変更すべき点を指摘したいなら、まずは博士号をとって論文を書くことが有効だと思われる。それで結果どうなるかはわからないけれど、Twitter上でつぶやいているよりはずっと懸命なはずだ。

という訳で、学習指導要領を改めて読み込んでいくとする。まずは、算数が中学に上がったとたんに数学と教科名が変わる理由を見ていこう。

②算数の目的

数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学的に考える資質・ 能力を次のとおり育成することを目指す。

⑴ 数量や図形などについての基礎的・基本的な概念や性質などを理解すると ともに,日常の事象を数理的に処理する技能を身に付けるようにする。

⑵ 日常の事象を数理的に捉え見通しをもち筋道を立てて考察する力,基礎 的・基本的な数量や図形の性質などを見いだし統合的・発展的に考察する 力,数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したり目的に応じて 柔軟に表したりする力を養う。

⑶ 数学的活動の楽しさや数学のよさに気付き,学習を振り返ってよりよく問 題解決しようとする態度,算数で学んだことを生活や学習に活用しようとす る態度を養う。

小学校学習指導要領(平成29年告示)/文部科学省

『日常の事象』とある。つまり、『具体的な事象』『言葉で表現できるもの』を数理的に捉えて見通しをもって筋道立てて考察する」ということだ。

では、数学はどうだろう。

③数学の目的

 数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学的に考える資質・能 力を次のとおり育成することを目指す。

⑴ 数量や図形などについての基礎的な概念や原理・法則などを理解するとともに,事象を数学化したり,数学的に解釈したり,数学的に表現・処理したりす る技能を身に付けるようにする。

数学を活用して事象を論理的に考察する力,数量や図形などの性質を見いだし統合的・発展的に考察する力,数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表現する力を養う。

⑶ 数学的活動の楽しさや数学のよさを実感して粘り強く考え,数学を生活や学 習に生かそうとする態度,問題解決の過程を振り返って評価・改善しようとす る態度を養う。

中学校学習指導要領(平成29年告示)/文部科学省

日常』という文字が消えた。つまり、具体的な事象でなくなったのだ。この違いは大きい。

算数では、問題を読んだときに脳内で事象をイメージできることが前提となる。また、以下を見てほしい。


標準授業時数/文部化科学省

小学校と中学校の「国語」と「算数/数学」の授業時数を見比べてみてほしい。

小学校の国語の合計時間は、1,461時間。
小学校の算数の合計時間は、1,011時間。
その差は、450時間。

中学校の国語と数学の合計時間は、共に385時間。

また、べつの見方もできるので、それも示しておく。
言語能力が急激に発達するのは、10歳をむかえる小学4年生と言われている。その後の小学5年生からは、中学校の3年間と合わせた5年間で国語と算数(数学)の合計時間が同じになっている。ちなみに、735時間。

では、小学4年生までの4年間の合計を見てみよう。
国語が、1,111時間。
算数が、661時間。

4年間で1,111時間ある国語は、その後の5年間では735時間なので(その差は376時間)いかに国語教育が重視されているか見て取れる。

また、さらに分けて小学1・2年生の2年間と3・4年生の2年間でも考察してみると、低学年においては国語教育が中心であることがより一層色濃く反映されている。

小学1・2年生の国語は621時間、算数は311時間。
小学3・4年生の国語は490時間、算数は350時間。

ちなみに、国語の教科目標は以下の通り。

言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,国語で正確に理解 し適切に表現する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

⑴日常生活に必要な国語について,その特質を理解し適切に使うことができるようにする。
⑵日常生活における人との関わりの中で伝え合う力を高め,思考力や想像力を養う。
⑶言葉がもつよさを認識するとともに,言語感覚を養い,国語の大切さを 自覚し,国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う。

小学校学習指導要領(平成29年告示)/文部科学省

〔第1学年及び第2学年〕
1 目 標 
⑴ 日常生活に必要な国語の知識や技能を身に付けるとともに,我が国の言語文化に親しんだり理解したりすることができるようにする。
⑵ 順序立てて考える力や感じたり想像したりする力を養い,日常生活における人との関わりの中で伝え合う力を高め,自分の思いや考えをもつことができるようにする。
⑶ 言葉がもつよさを感じるとともに,楽しんで読書をし,国語を大切にして,思いや考えを伝え合おうとする態度を養う。

小学校学習指導要領(平成29年告示)/文部科学省

日本語の使い方を練習中の低学年、先生側の伝え方はかなり繊細な課題であることは間違いない。

ここで、脳の発達についても触れておこうと思う。

④具体的思考と抽象的思考

低学年の子どもは,対象とする人や物を自分と同化するなど,具体的なものをイメージして,そこから思考を広げます。その過程は,まず見る,触る,においをかぐ,など自分の身体を通して対象物を感じ取ります。これは発達段階としての自然な姿です。したがって学習においてこのような思考過程を意識して低学年の指導に取り組むことが重要なのです。

☆コラム 具体操作の大切さを重視するということ/教育出版

具体的操作期(7~11歳)1個○○円の鉛筆を20本買ったらいくら、といった具体的な事柄について論理的な捉えが可能になる段階(算数レベルの思考が可能)。
「可逆操作」(5つから2つあげたら3つになり、2つもらえば5つになる)が可能にならないと算数はできない。すなわち、「保存」が可能になる段階。
しかし、具体的体験と切れたところで、純粋に論理だけで考えるのは難しい。
この頃の理屈は、まだ自分自身の具体的・生活的な体験や欲求を離れていない論理で、独りよがり、一般性へと広げられないなど、いわゆる「子どもの理屈」となる。

ピアジェの発達理論/『Piagetの発達理論・Vygotskyの発達理論

抽象的思考とは「抽象的に考えること」

「抽象的」とは、「事物の共通点に着目し、一般的な概念でとらえること」です。そして、その考え方を「抽象的思考」といいます。簡単にいうと、ざっくりと大きなまとまりで考えるということです。

具体的思考との違い

抽象的と対になる言葉が「具体的」です。具体的思考は、抽象的思考の反対になります。「犬」を表現するときを例に挙げてみましょう。「チワワ、トイプードル、近所のポチ」と表現するのは具体的です。「4本足で歩く動物、哺乳類」と表現するのは抽象的です。

つまり、具体的思考はより狭く分解して考えること。抽象的思考は、より広く大きなまとまりで考えることを指します。

小学校高学年は抽象的思考が発達する時期

高学年は、この抽象的思考力が発達する時期にあたります。「割合」のように、抽象的思考を使って物事を理解する力がつくことで、複雑で難解な学習内容もどんどん理解を深めていけるようになるのです。

抽象的思考とは? 広い視野で物事を捉えられるようになるために、小学生から訓練しよう/ベネッセ

小学2年生は、具体にイメージできたことをもとに理解していく年齢だということです。そして、それを言語化したり図に表したりながら伝えあって、イメージを共有しあうという発達段階にあたるということです。

さて、いよいよ『かけ算』について。

⑤指導要領のかけ算についての記述

⑶ 乗法に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができる よう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア) 乗法の意味について理解し,それが用いられる場合について知ること。 (イ) 乗法が用いられる場面を式に表したり,式を読み取ったりすること。
(ウ) 乗法に関して成り立つ簡単な性質について理解すること。
(エ) 乗法九九について知り,1位数と1位数との乗法の計算が確実にできること。
(オ) 簡単な場合について,2位数と1位数との乗法の計算の仕方を知 ること。

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。
(ア) 数量の関係に着目し,計算の意味や計算の仕方を考えたり計算に関して成り立つ性質を見いだしたりするとともに,その性質を活用し て,計算を工夫したり計算の確かめをしたりすること。
(イ) 数量の関係に着目し,計算を日常生活に生かすこと。

小学校学習指導要領(平成29年告示)/文部科学省

「かけ算の意味を理解し、用いられる場合について知ること。そして、用いられる場面を式に表したり、式を読み取ったりすること。」これが習得できるような指導が望ましいのだ、と書かれていますね。

そして、ご存じの方もいらっしゃるかもしれないのですが、学習指導要領には『解説』というものも存在していて、もっとかみ砕いて掘り下げて説明されています。そちらも確認しておきましょう。

⚠️学習指導要領の解説について⚠️

指導要領は、実際に本文をご覧になればおわかりのとおり、「大綱的基準」といって、あまり細かいことは書かれていません。これは、実際の運用は各学校の創意工夫に委ねよう、という考え方によるものです。しかし、抽象的な記述ばかりでは、その趣旨が理解しづらかったり、学校によって解釈に相違が出てきたりすることも考えられます。そこで、補足として文科省が教科ごとに「解説」を出すことが、通例となっているのです。
なお、この「解説」は、特に法令の定めによって作成しているものではありません。あくまで文科省が教育委員会などを「指導助言」する一環とされています。ですから、法的には指導要領のような拘束力はない、ということになります。

指導要領の「解説」って何?/ベネッセ教育情報

⑥指導要領の解説

第1学年では,加法の意味について理解することや,その計算の仕方を考えるこ とを指導してきた。また,第2学年では,数のまとまりに着目し,数を2ずつ,5ずつなどの同じ大きさの集まりにまとめて数えることを指導してきている。

第2学年では,乗法が用いられる実際の場面を通して,乗法の意味について理解 できるようにする。また,この意味に基づいて乗法九九を構成したり,その過程で 乗法九九について成り立つ性質に着目したりするなどして,乗法九九を身に付け, 1位数と1位数との乗法の計算が確実にできるようにするとともに,計算を生活や 学習に活用する態度を養うことをねらいとしている。

なお,ここでの学習の内容は,第3学年の多数桁の乗法や除法の学習の素地とな るものである。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説/文部科学省

⑦指導要領の解説(ア 知識及び技能)

ア 乗法が用いられる場合とその意味  

乗法は,一つ分の大きさが決まっているときに,その幾つ分かに当たる大きさを 求める場合に用いられる。 例えば,「1皿に5個ずつ入ったみかんの4皿分の個数」を求めることについて 式で表現することを考える。

「5個のまとまり」の4皿分を加法で表現する場合,5+5+5+5と表現する ことができる。また,各々の皿から1個ずつ数えると,1回の操作で4個数えるこ とができ,全てのみかんを数えるために5回の操作が必要であることから,4+4 +4+4+4という表現も可能ではある。
しかし,5個のまとまりをそのまま書き 表す方が自然である。

そこで,「1皿に5個ずつ入ったみかんの4皿分の個数」を 乗法を用いて表そうとして,一つ分の大きさである5を先に書く場合5× 4と表 す。このように乗法は,同じ数を何回も加える加法,すなわち累加の簡潔な表現と も捉えることができる。言い換えると,(一つ分の大きさ)×(幾つ分)=(幾つ 分かに当たる大きさ)と捉えることができる。
また乗法は,幾つ分といったことを何倍とみて,一つ分の大きさの何倍かに当たる大きさを求めることであるという意味も,併せて指導する。このときも,一つ分 に当たる大きさを先に,倍を表す数を後に表す場合,「2mのテープの3倍の長さ」 であれば2× 3と表す。 なお,海外在住経験の長い児童などへの指導に当たっては,「4×100 mリレー」 のように,表す順序を日本と逆にする言語圏があることに留意する。

ここで述べた被乗数と乗数の順序は,「一つ分の大きさの幾つ分かに当たる大きさを求める」という日常生活などの問題の場面を式で表現する場合に大切にすべきことである。

一方,乗法の計算の結果を求める場合には,交換法則を必要に応じて 活用し,被乗数と乗数を逆にして計算してもよい。 乗法による表現は,単に表現として簡潔性があるばかりでなく,我が国で古くか ら伝統的に受け継がれている乗法九九の唱え方を記憶することによって,その結果 を容易に求めることができるという特徴がある。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説/文部科学省

つまり……
立式する際には
(一つ分の大きさ)×(幾つ分)=(幾つ 分かに当たる大きさ)
という言葉で表せる式にしましょうね!ということ。
かけ算は、一つ分の大きさの幾つ分かに当たる大きさを求めるときに使いますよ!ということ。

その上で、計算上は交換法則に基づいてひっくり返してOKだよね!ということ。

ちなみに、『上記の学習指導要領(平成29年告示)解説』にあえて補足するなら、こうだ。

3個ずつ5人にイチゴをくばりました。イチゴはいくつありますか。
これは、「3個ずつ」の「5人分」だから「3×5=15」

これに対して「トランプを配るように1人に一個ずつ3回に分けて配ったら?5×3だろ?」というコメントを見かけるし、確かにそう(「5個ずつ配る」の「3回分」)なのだけど、小学2年生でそれを言語化できている子に私は出会ったことがない。

いるのかな……いるのだとしたら、その子はきっと授業中や宿題のドリルなんかでそういう解釈をすることがあるだろうから、先生側も気づくよね。で、テストも注意して採点するはず。

そんでもって学校のテストなら、きっとイラストがついていたりするだろうし、ついていなくても頭に浮かぶイメージは「一人一人の前にイチゴが3個ずつ並んでいる映像」で、決して「配っている最中の様子」ではないはずなのだ。

問題文は「配りました」であって「配っています」ではないのだから。

日本語で書かれた文章を読んで日本語で考えて解く以上、正しく問題を読み取ることも必要なスキル。
日常的な事象を一般的なイメージで捉えて、数理的に処理する技能を身につけるのを目的としている教科である算数なのだから。

補足的に書こうと思っていたのに、完全に口語になっちまった。まぁ、いいか。ここまできて正直ちょっと疲れてきた。

学校のテストで式を書かせるのは、このかけ算の意味(または使う場面)をきちんと理解し、脳内で整理して(一つ分の大きさ)×(幾つ分)=(幾つ 分かに当たる大きさ)に当てはまる形で立式できるか?を問うためなのです。

つまり、かけ算の文章問題は「これは、何のいくつ分ですか?」と問うものであり、式でもって「〇の、△つ分です」と答える問題ということ。

授業で説明されたことがテストの採点基準になるべきなので、学校のテストにおいて順序固定は最もだという認識。ただし、固定することの意味や重要性の理解と意識ができている先生がどの程度いるのかは、正直ちょっと疑問かな……。

私はかけ算の授業の際に必ず、保護者様宛にお知らせしています。「かけ算を使う場面を通して、かけ算の意味を理解させるねらいがあります。」と。そして、「日本語の能力も鍛えている最中であり、具体的なイメージでもって様々な日常的な事象を理解していく年齢のため、まずは問題文を読んで『〇〇のいくつ分』という言葉の式を立てられるようにしましょう。」と。

さらに塾では、「学校でも、そのように指導されているはずです。学校のテストで式を書かせるのは、それを理解しているかを見るためです。だから、式を書くときは順序に気を付けるようお子さんにお伝えください。もちろん、計算上はどちらでも良いです。苦手な7の段はひっくり返してもOKですからね!そのことについても本日の授業で理解しているはずですが、知識として定着するまでには少し時間のかかるお子さまもいるので、しばらく見守って差し上げてくださいね」と。

ちなみに、英語圏では立式が逆だ。(ヘッダー参照)
やっぱり、立式って言語の影響が大きいのだね。
つまりは「まずは言葉の式をつくろうぜ」って流れが、低学年の教育のベースにはあるってことなのだと私は認識している。

さて、さらに詳しい解説も見てみましょう。

乗法が用いられる具体的な場面を,× の記号を用いた式に表したり,その式を 具体的な場面に即して読み取ったり,式を読み取って図や具体物を用いて表したり することを重視する必要がある。その際,乗法の式から場面や問題をつくるような 活動も,乗法についての理解を深め,式を用いる能力を伸ばすために大切である。

式に表す指導に際しては,「1皿に5個ずつ入ったみかん4皿分の個数」というような文章による表現,○やテープなどの図を用いた表現,具体物を用いた表現な どと関連付けながら,式の意味の理解を深めるとともに,記号 × を用いた式の簡 潔さや明瞭さを味わうことができるようにする。

式を読み取る指導に際しては,例えば,3× 5の式から,「プリンが3個ずつ入っ たパックが5パックあります。プリンは全部で何個ありますか。」という問題をつ くることができる。このとき,上で述べた被乗数と乗数の順序が,この場面の表現 において本質的な役割を果たしていることに注意が必要である。「プリンが5個ずつ入ったパックが3パックあります。プリンは全部で幾つありますか。」という場面との対置によって,被乗数と乗数の順序に関する約束が必要であることやそのよ さを児童が理解することが重要である。 このようにかけ算の式を具体的な場面と関連付けるようにすること,さらに,読み取ったことを,○などの図を用いたり,具体物を用いたりして表現することが, 式を読み取る能力を伸ばすためには大切である。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説/文部科学省

順序固定の最大のメリットはここにあると思う。
同じイメージ(〇〇のいくつ分)を共有して、友だちと問題を出し合ったりもできるから。友だちと一緒に遊ぶようにかけ算に触れることは、思考力を育てるし、学びにもなるからぜひぜひやらせたいとも思う。実際、そういう授業をしている先生も多いのではなかろうか。
また、日本語で書かれた文章から内容を読み取るのが国語で、数字と記号で書かれた式を読み取るのが算数だとも言えるのではないかと私は思っている。

ちなみに、小学4年生の面積については「縦×横」でも「横×縦」でも良いとされています。これについては、図形をどこからみるかで縦と横が入れ替わるから。

これをあえてかけ算の式に当てはめるなら「4平方センチメートルの5つ分」でも「5平方センチメートルの4つ分」でも同じだよね、ってこと。

だから、結果的にひっくり返せる式もある。それは事実。

だからこそ、小学2年生の式をかかせるタイプの文章題は、脳内イメージが人によって変わってしまうような問題はないはずなんです。

さて、これ以降は一応参考までに載せ解こうかな……という感じ。

ウ 乗法に関して成り立つ簡単な性質
「内容の取扱い」の(4)で「主に乗数が1ずつ増えるときの積の増え方や交換法則 を取り扱うものとする」と示されているように,ここでは,乗法に関して乗数が1 増えれば積は被乗数分だけ増えるという性質や,乗法についての交換法則について 児童が自ら調べるように指導する。乗法九九を構成するときに乗数が1増えれば積 は被乗数分だけ増えること,乗法についての交換法則などを活用し,効率よく乗法 九九などを構成したり,計算の確かめをしたりすることも大切である。ここで「主に」と書かれているのは,児童の実態に応じて,図などと関連付けながら,乗法に ついての結合法則や分配法則に基づいた考えに触れてもよいことを意味している。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説/文部科学省

  エ 乗法九九
乗法九九は,以後の学年で取り扱う乗法や除法の計算の基盤となるものとして必 要なものである。したがって,乗法九九を構成したり理解したりする際には,体験 的な活動や身近な生活体験などと結び付けるなどして指導の方法を工夫することが 重要である。また,どの段の乗法九九についても十分に習熟し,確実に計算するこ とができるようにするとともに,それらを生活や学習に活用することが大切である。 乗法九九を生活や学習の場面で活用することによっても,技能の習熟が図られる。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説/文部科学省

⑧指導要領の解説(イ 思考力,判断力,表現力等)

ア 数量の関係に着目し,計算の意味や計算の仕方を考えたり計算に関して成 り立つ性質を見いだしたりするとともに,その性質を活用して,計算を工夫 したり計算の確かめをしたりすること 数量の関係に着目し,計算の意味や計算の仕方を考えること

 乗法における数量の関係に着目し,児童が自ら乗法の意味について考えたり,乗法九九を構成したりしながらそれらを身に付けていくことが大切である。
例えば,「4皿に3個ずつみかんが乗っている」場面を式に表す際,乗法の意味に基づいて 3×4と表すことを考えることがある。

また,3の段の九九の計算の仕方について, 3×5を3+3+3+3+3= 15 のように乗法の意味に基づいて構成したり,3 ×4の積 12 に3を加えることで求めたりするのである。こうした方法を後で学習する4の段などの九九の構成に生かしていくことが大切である。

数量の関係に着目し,乗法に関して成り立つ性質などを見いだすことができるよ うにする。

例えば,児童が3の段の乗法九九の構成を通して「かける数が1増えれ ば答えは3ずつ増える」ということを見付けることがある。このことについて,ほかの段の乗法九九でも同様なことが言えるのかを,乗法九九の表を構成したり,完 成した乗法九九の表を観察したりして調べ,帰納的に考えて「乗数が1増えれば積 は被乗数分だけ増える」という計算に関して成り立つ性質を見付けることができる。

また,児童が乗法九九の構成を通して「3×4」と「4×3」の答えが同じ 12 に なることを見付ける場合がある。このことについても,幾つかの場合から帰納的に 考えて 「 乗数と被乗数を交換しても積は同じになる」という計算に関して成り立つ 性質を見付けることができる。

 なお,乗法九九の表における数量の関係に着目すると,児童が見いだすきまりは, 例えば,3の段と4の段の和が7の段になること,l×1,2×2,3×3,…と いうように同じ数どうしをかける計算は斜めに並んでいることなど,様々である。

 乗法九九を構成したり観察したりすることを通して,乗法九九の様々なきまりを 見付けるように指導することは,児童が発見する楽しさを味わうことにつながるも のである。 計算に関して成り立つ性質を活用して,計算を工夫したり確かめをしたりすること  乗法に関して成り立つ性質を用いると,計算の工夫や確かめをすることができる。 例えば,3×9については,3の9個分を求めるために,累加で求めてもよいが, 交換法則を認めれば3×9=9×3=9+9+9= 27 と求めることもできる。

また,ある九九を忘れたり曖昧だったりする場合,交換法則や 乗法に関して成り立つ性質を用いて,知っている九九を手が かりに,積を再構成することができる。  また,図を基に5×4と3×4を合わせると8×4になる ことから,8×5や8×6も同じようにできるのではないか と考えて,計算の工夫をしたり確かめをしたりすることもで きる。  こうした計算の工夫や確かめは,ここでの乗法だけでな く,後の学年で指導する乗法の計算の仕方を考えるときにも活用していくことがで きる。

 このように,数量の関係に着目し計算について考えることによって,計算が簡単 になったり,計算の確かめをしたりすることができるという数学のよさに気付き, これらの方法を学習に活用しようとする態度を養うことが大切である。  

イ 数量の関係に着目し,計算を日常生活に生かすこと

身の回りには,同じ個数のものの集まりが多くある。これらの数を知りたいとき, 乗法を活用することで,その数を簡単に知ることができる。靴箱の数や,教室の絵 画や習字の作品の数など,長方形のように配列されたものの数は数えることによっ てではなく乗法で求めることができるという,乗法や乗法九九のよさを味わわせ, 日常生活で生かそうとする態度を養うことが大切である。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説/文部科学省

ここまで引用文が多いとはいえ12,442字。
ここまで脱落せずに読み進めてくれた猛者は存在するのだろうか……。

これ以降は、有料の閲覧注意区域となる。
これは完全なる自己満足であり、私だって人間なんだぞ!ちょっとは傷つくんだぞ!という想いを消化するための儀式みたいなものである。(だから、読まないで欲しい!振りではない。)

とは言っても、ここまで書いてきて結構なエネルギーを使ってしまったので、正直な話をすると少々面倒な気分にもなってきた……。笑。

けど、まぁ、行ってみよう。

一気に全部は無理かもだから、ちょこちょこ休みながら行きます。(どうでもいいな。というか、ここまで残っている猛者がそもそもいない説w)

5.お返事&💩掃除

問題のツイートはこちらだ。

今回のnoteをもって、私の中ではかけ算順序問題についての発信はおしまいにする所存だ。やり切った感がすごい。

とは言え、また新しい流れがあったら熱を帯びた感じで発信してしまうかも……?気をつけなきゃ。

さて、まずはリプから行ってみるとする。
ちなみに、当たり前ですけど有料部分の無断転載禁止ですからね。
というかそもそもここまでたどり着いている猛者が(3回目

本来であれば、リプは丁寧に返したいところなのだけど、およそキャッチさせる気のないボールを投げてくる人もいるので、もう普通に口語でいくやで。

➡リプ

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