あのこと

中絶が違法だった60年代フランスの女子大生アンヌの物語。彼女は予期せぬ妊娠をするが、産むという選択肢はなかった。

ハードな内容を予想していたけど、意外とさらっと観れてしまった。と言うのも、サスペンスとしてとても面白かったから。中絶しようとしているアンヌは犯罪者、彼女に手を貸したものは共犯者、口止めしたり裏取引したり、痛めつけて血を流したり…もう立派な犯罪サスペンスだった。

お腹に宿っている命の事を考える余裕をこちらに与えないくらい、アンヌは中絶という名の犯罪を犯そうと奔走する。原作の短編小説のタイトル通り《事件》だった。
結婚、出産が人生の終わりかのような考え方って色々な所で聞くけど、まさにアンヌはそう捉えているんだと思う。自分の人生の軌道修正をする為ならなんでもする必死な姿には勇ましさすら感じてしまった。

中絶が違法だったことについて考えさせられるような内容ではなかったと私は思う。この事について考え始めるとキリがないから良かったと正直思ったけど、ただ考えるのを避けてるだけとも言える…。

アンヌの友人エレーヌ役のルアナ・バイラミは、燃ゆる女の肖像でも本作のテーマに通じる役を演じている。とても雰囲気のある女優さん。今後の活躍も気になるなぁ。