SHE SAID /シー・セッド その名を暴け
観に行くか迷っていたところに丁度ライターをやっている友人がお薦めに挙げていたので行ってきた。
こんなにもハラハラさせられるとは思ってもみなかった。とてもスリリング。ずっと同じトーンで物語が進み、途絶えない緊張感でずっと背筋伸ばして観ていた。登場人物はほぼ笑顔を見せないし、スマホがひたすら鳴っているし、一寸先は闇の取材を繰り返す日々。あんなに地味で画変わりしないのに、すんごい熱量でバシバシ伝わって来た。
母としての彼女達の映し方も絶妙な塩梅でとても良かった。特にミーガンの産後鬱の描写。仕事をすれば大丈夫って言葉のチョイス。上手いなぁ…。
それからキャスト陣の演技の上手さよ。主演のキャリー・マリガンとゾーイ・カザン、派手な展開があるわけではないので感情を露わにするようなことも基本ないんだけれど、静かに燃える青い炎のような内に秘めた強い思いが滲み出ていた。上司の方々の頼れる感や安心感の半端なさも見事だったし、被害を受けた女性達、その中でもサマンサ・モートンとジェニファー・イーリーの平静を装いながらも気迫のこもった演技。とにかく全員素晴らしかった。
とても淡々としているのに、大スペクタクル映画を観た後のような気持ちにさせられた。この出来事は氷山の一角であり、一件落着ではないと感じながらも胸がいっぱいになってポロポロ涙が出た。
配信で観れればいっかな〜どうしようかな〜と観る前は思っていたけど、劇場で観れて本当に良かった。一般的に言われる『映画館で観るべき作品』ではないけど、強くそう思った。画面からビシバシ伝わってくるあの熱量は、ある種のスペクタクル作品だ。