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300匹のGを飼う友人と、交際0日で結婚した話 Vol.1

鼻を覆いたくなるツンとするニオイはケースの蓋を開けた途端に部屋中に広がった。ケースの中にはゴ⚪︎⚪︎リ(以下、Gとする)が、300匹うごめいていた。Gはカビのような湿った匂いに酸味を足したような独特なニオイになるらしかった。 G300匹がケースや他のGたちと重なって擦れるシャラシャラとした音は不気味で、よじ登って脱走しようとするGを旦那が素手で鷲掴みにしてケースの中へしまう。遠巻きに見守っていたわたしは早くケースに蓋をしてと泣きそうになる。 わたしの旦那はGを鑑賞用として

    • 人生を変えた高校留学

      高校の帰り道、ほとんど陽が落ちた薄暗い橋。思うようにペダルが漕げず、私は自転車を止めた。目の前の柵を越えたら楽になれるだろうか。ぼんやりしたまま両手をかける。飛び越える力は残っていなかった。 ふっと、消えてしまいたい。ベッドに横たわって、天井のシミをじっと見つめる日々を過ごす。学校に行かず3か月過ぎたころ、留学の資料を受け取った。英語が全く話せないなんて関係なかった。申込用紙をぎゅっと握りしめる。人生を変えられるかもしれない。乗り込んだ飛行機の窓からは、澄み切った青空が広が

      • おはよう、世界。ただいま、日本。ようやくスタートダッシュを切れそうだよ。

        右手には高層ビルがそびえ立っていて、斜め左手には、国道を通る車が朝からひっきりなしに人々を運んでいる。わたしがいたこの場所は、週末になると避暑地を求めて、大勢の人がやってくるモールに隣接する、ホテル15階。マレーシアの首都、クアラルンプール。 朝6時。地平線に向かって、おはよう、世界。と、ひとりつぶやく。それはまだ世界が真っ暗なヴェールに包まれていて、車のライトが、まるでちいさな命を宿しているように見える。朝日が登るのは午前7時過ぎだったっけ。 身支度をして1階の朝食会場

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