飲食事業者さんの悩み相談をよく受けるコピーライターがオススメする本10冊
炭田(すみだ)です。フリーのコピーライターですが、お菓子が好き過ぎて、菓子製造専門シェアキッチンの企画・運営もしています。
そんなわけで、私の周りにはちいさなお店(パティスリー、お菓子屋さん、パン屋さん、コーヒーショップなど)を営む人たちがたくさんいて、お店のコンセプトづくりや、販売時に気を付けたいこと、SNSでの発信内容などについてよく相談を受けます。
で、これらのお悩みを聞いて気付いたんです。
作るプロは、売るプロではない。
おいしいお菓子やパンを作れて、コーヒーを淹れられても、広告宣伝やブランドづくりに詳しい訳じゃない。みんな、手探りで一生懸命「自分のお店」を作り上げている。
そこで!
コピーライター歴16年、シェアキッチンの企画・運営歴2年、飲食事業者さんのお悩み相談をよく受ける私が、ちいさなお店を営む人のお役に立つ本10冊をご紹介します。
※インベスターZだけkindleで購入したので、トップ画像の写真無しです。
もちろんどの本も全部、自腹で買っているので、お役に立ったら嬉しいです。(実際は、この3倍以上の本を買ってますが……笑)
1. なぜウチより、あの店が知られているのか? ちいさなお店のブランド学/嶋野裕介・尾上永晃
ちいさなお店を営む人が何もかも分からないけど、広告宣伝の本を一冊だけ読むなら、こちらがおすすめです。私はもう20人以上に勧めています。
大手広告代理店のプランナーであるお二人が書いた本ですが、本のタイトル通りきちんと「ちいさなお店」に向けて書かれているので、いきなり『コンセプト大全』『広告宣伝のすべて』みたいなプロ向けの分厚い本を買って挫折せずに済みます。(新人コピーライターの頃に経験済み……デスクの上で埃かぶってました笑)
自分のお店の「ウリ」が何なのか、どうやってそれを発信していくのか、やさしい言葉で読み解かれているので、無闇にInstagramのリールを頑張ったり、流行りに乗った商品を開発したりする前に、これを読んで自分のお店のことをしっかり見つめる(=客観視する)のがいいと思います。
まずは足元を固めよう。リールはそれからだ!
2. ファンベース/佐藤尚之
お店をはじめると、オープン当初はお友達やらご近所さんの来店で売上が立つものですが、それって一時的なご祝儀なんですよね……。
この本では、お客様のことを「利益をもたらす存在」ではなく、「一緒にブランドを成長させていく仲間」として捉えています。
一過性の売上を求めるのではなく、中長期を見据えてファンと一緒にブランド価値を高めていく。それがいかに大切か、具体的な事例を交えて丁寧に解説されています。
ファンベースの本は色々とありますが、まずは本家本元のこちらの本を読むのが、いちばん「ファン」のことを理解できるはず! これからの時代のお店は、ファンなくしては成立しないと思います。
ちなみに著者のさとなおさん(佐藤直之さん)は、noteでご自分のバー開業までの様子を発信されていて、60代のさとなおさんがお店を開くこと、家族との関係、お金、物件取得など、読んでいて勉強になります。
あと、もちのろん文章がお上手で面白いので、早く続きが読みたいです(笑)。↓
3. 行動経済学が最強の学問である/相良奈美香
友人のパティシエに勧められて読みました。
なんでも彼のお店では、あえて商品の値札に「850円」と書かずに「850」と表記しているそう。理由は、行動経済学によると「円」を付けずに「金額の数字のみ」表記した方が消費が増大するから、とのこと。
実際、これまでより生ケーキが出る数が増えたそうです。行動経済学、すごすぎる……!
この他にも、人間がモノを買う時にしてしまう合理的ではない行動の理由がいくつも紹介されています。
最近誰かに会うたびに、ドヤ顔でこの本の「行動経済学トリビア」を話しています(笑)。
商売をしている人に是非読んでほしい本です。
※ちなみに前書きが長くて挫折しそうになるので、目次を見て⇒興味のある行動経済学について書いてあるページに飛んでいくつか読んでみると、がぜん興味が出て一気に読めるのでオススメです。
4. 1キロ100万円の塩をつくる:常識を超えて「おいしい」を生み出す10人/川内イオ
商品の「価値」がどうやって生まれ、どんなふうに世間の人たちに評価されていくのかが、お店の中の人たちのインタビューを通して、まるで「読む情熱大陸」のように伝わってきます。
紹介されている10人の皆さんは全員、どんなトラブルがあっても「自分にはこれ!」と芯がブレません。
ちいさなお店だからこそ、大きなお店(チェーン店)とは勝負せずに「その店だけの魅力」を磨くことが大切だと伝えてくれる一冊です。
私はライターなので「あ~! こんな取材、私もしよう~!」と思わせてくれる一冊でもあります。イオさんに負けずに、食に関わる人たちの魅力を発信したい。(所信表明)
私もマルシェを開いたばかりだから、イオさんと肩を並べる日も近いはず……(言うのはタダ)。
5.インベスターZ(11) /三田紀房
あの『ドラゴン桜』を描いた三田紀房さんによる、中学生が学校運営の資金を得るために投資をする漫画。表紙右側にいる財前くんが、中学1年生ながら肝が据わっていて面白いです。初心者なのに、初っ端から30億円分の株を買う奴があるか。(流石の先輩たちもびっくり)
もちろん1巻から読むのもオススメですが、この11巻ではちいさな喫茶店を営む老夫婦が「繁盛しなくてもいい。行列ができていつも満員なんて、御免こうむる」と、個人店の商売の秘訣を語るシーンがあり、必見。
これまでシェアキッチンを運営していて、色々な飲食事業者さんとお話をするなかで「Instagramのフォロワー1万人! メディアに取り上げられました!」よりも、「いかにして細く長く無理なくお店を続けられる『状態』を維持するか」の方が大切なのでは? と感じていた気持ちに、この漫画がひとつの答えをくれました。
作者の三田紀房さん、公式noteがあります。↓
6. 月刊食堂 2023年06月号(ネーミング大研究)
コピーライターなので、やはり「モノの名前」は気になります。
この号は、飲食店の店舗名や商品名に限定してネーミングを紹介しています。売れてるお店の中の人が何を考えてその名前を付けたのか、発想の裏側を知れて学びが多い!
なにより、すべてに広告会社が入っている訳でない=プロが介入している訳ではないので、自分ひとりでお店を営む方も参考になる部分が多いと思います。
常連さんの名前をドリンク名にするというお店が、田中サワー、佐藤サワーに加えて、鈴木砂羽ーを作っちゃうとか(俳優の鈴木砂羽さんも馴染みのお客様だったそうです↓)。居酒屋ならではですね。
7. 山の上のパン屋に人が集まるわけ/平田はる香
帯の「健やかに年商3億円」に引かれて、読みました。
「わざわざ」は、公共交通機関では辿り着けない、車でしか行けない山の上にあるパンと日用品のお店です。
わざわざの代表取締役である平田はる香さんは、noteでも精力的に発信されているので、ご存知の方も多いかな?
なんとなくnoteやインタビューを通してお店のことは知っていましたが、すべての行動に対して、一つずつきちんと理由があって、さらにそれが言語化されていることにビックリしました。物事に対して漫然と選ぶ、とか平田さんにはない。
だからこその3億円か~! と唸ります。平田さんのようには出来なくとも、年商3億円までの思考の「過程」を本でなぞることは、きっとお店を営む人の役に立つはずです。
10万部を目指しているそうです。是非。↓
8. 菓子店、パン店、カフェ 小さな店のつくり方: 3坪~の個性派ショップ開業事例30/柴田書店
お店を開いてみたい。
でも何から手を付けたらいいか分からない。
身近にお店を営む人もいない。
そんな人はまずこの本を読むのがオススメです。
開業までの準備について全体の流れが分かるのはもちろんですが、特にいいのが開業した先輩たちのリアルな声。
「売り場から厨房が丸見えで、休憩をとれる死角がない!」とか、「大きく美しい窓にしたのはいいけど朝日がショーケースを直撃!」とか、「店舗用の大型機材をうっかり自宅に配送してしまった!」とか。
開業あるあるが目白押しで、読んでおくだけで防げることがたくさんあると思います。
9. お客さん物語 ー飲食店の舞台裏と料理人の本音ー/稲田俊輔
私は自分で時々お菓子屋さんをしているくせに、飲食店で働いた経験がありません。なのでこの本を通して飲食店の舞台裏を知れて、とても勉強になりました。
特に印象に残っているのは、「お客さんに可愛がられるお店、リスペクトされる店」というエピソード。
値段が安くて気軽に使えるお店は可愛がられるし、お店を営む人自身も「それがいいお店」だと考えるけど、本当にそうなのか。そこに、リスペクトが必要なのではないか。
自分ひとりでお店について考えていても辿り着けない発想だったので、読んでよかったです。
稲田さんによる、軽妙洒脱な語り口が心地よく、コラムとして読んでも面白いです。「嫌いなものについて堂々と語ろうではないか論」が好き。
ライターの玉置標本さんによる、稲田さんのインタビュー記事も併せてどうぞ。↓
10. 月刊専門料理2023年06月号(経営とお金論)
みんな大好き、お金の話!
……主語がデカい。お金の話は経営をする上で大切ですが、表立って話すのは難しいもの。
この号では、コース料理やドリンクの原価率、人件費、家賃などなど、赤裸々に、なんとレストラン&シェフのお名前と共に紹介されています。
これが出来るのは、柴田書店さんがそれぞれのシェフと良い関係を築いているからですよねぇええええ。
インターネットではお目に掛かれない情報の大洪水! で、おすすめです。
レストラン以外の収入(EC、メニュー監修、料理教室など)も紹介されており、ビジネスのアイディアとして取り入れてみたくなります。
ちなみに、柴田書店さんはなぜか「cafe-sweets」だけnoteがあります。↓
【おまけ】おかし/なかがわりえこ・やまわきゆりえ
『ぐりとぐら』の作者お二人による絵本です。お店やるのマジつれ〜ッ!てなった時に、本屋さんで見掛けて手に取りました。
お菓子を作って誰かにそれを食べてもらえることって、すごく楽しくてウキウキすることだよなって、この絵本を読んで思い出しました。
そんな自分にとっての一冊、あるといいですよね。ってことで、おまけとして紹介します。
以上、飲食事業者さんの悩み相談をよく受けるコピーライターがオススメする10冊+おまけの1冊でした。
どれもイチオシで、正直これさえ読めばコピーライターなんて要らないのでは?? と一瞬頭をよぎる本たちですが、この本たちのおかげで私は「ちいさなお店を応援するコピーライター」として、これからやってくぞ! と心が固まりました。
フリーランスになった時、料理とお菓子が好きだから「フード系中心で仕事したいな♡」くらいの気持ちだったのが、日々いろんな飲食事業者さんたちとお付き合いをしていくうちに、今では全力でちいさなお店を「言葉」で応援する人でありたいと思っています。
本を読むのが好きじゃなかったり、営業が忙しくて時間がなかったりする方は、私にお店のことを相談してください〜♡
世の中広しと言えど、ちいさなお店の事情にこれだけ詳しく、自分でもお店をやったことがあるコピーライターは、私くらいのものでは。えっへん。
お店を営む人がみんな、健やかに末長く自分の満足のいく形で、商いを続けていけますように。元気にお店を続けてほしい。まじで。
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