特殊詐欺じゃないよ(えせエッセイNo.11)
「あんたも騙されてるわ。三輪さんに阻止してもうように頼んでくるか」
三輪ちゃん、やるなぁ……と、新聞を読みながら感心している私の隣で妻がぼそりと呟いた。
先日、新聞の地方版に知り合いの写真が掲載されていた。
パートの三輪ちゃんだ。
どうやら、特殊詐欺を未然に防いだらしい。68歳の三輪ちゃんは、私の剣道仲間。とても控えめな性格で、いつも静かに黙々と稽古に取り組んでいるナイスガイだ。常に自信無さげな動きも愛嬌を醸し出している。
あるとき、稽古会のグループラインに三輪ちゃんからメッセージが入った。
「大阪マラソンの後から膝が痛いので、今日の稽古は休みます」
三輪ちゃん、大阪マラソン出場しとった。しかも、完走しとった。じつは、鉄人三輪ちゃんなのだ。愛用Tシャツは「100キロマラソン」だった。
そんな三輪ちゃんの職場はATM近くのカート置き場。電話をしながらATM操作をしている男性を不審に思い、そそくさと通報したらしい。
物静かな三輪ちゃんは、やるときはやる男なのだ。きっと、どぎまぎしながら通報したに違いない。それが三輪ちゃん。
話を戻そう。
じつは先日、妻からお金を借りた。それも、私の小遣いの約15か月分の大きな金額を。ローンの嫌いな私は、嫁ローンを利用した。
妻からは、特殊詐欺を疑われている。
うちの旦那は騙されてる
そう思いながらもお金を貸している妻も、きっと騙されている。実にややこしい話だ。
日々、特殊詐欺のニュースがメディアを賑わせている。新聞の地方版にも私と同年代の人が騙されている記事を見かけるようになった。もはや後期高齢者ばかりが特殊詐欺に狙われる時代ではないらしい。
県内の特殊詐欺による被害額は、かなり膨れ上がっていると記事では報じていた。
いや、特殊詐欺じゃないし……
と、思いたい。
昨日から、通信講座が始まった。Webマーケターの養成講座だ。Webマーケターが何なのかよくわかっていないのだが、なにやらデキる人っぽいので申し込んだ。
簡単に書いているが、じつは2週間くらい迷って申し込んだのだ。 被害 額が大きいので、申し込んでからもしばらく心配で眠れない日々を過ごした。
申し込んだのは5月初旬。実際に講座が始まったのは昨日だ。約2ヶ月もの間、何も行動を起こしていないのだ。騙されていると思われてもしかたがない。どうやら、講座の第1期生ということで、準備期間が必要だったらしい。
昨日は簡単なガイダンス的な話だけだったが……
ほかの受講者のレベルが高すぎて、質問についていけない。まず、質問の用語がわからないのだ。不思議なもので、レベルが違い過ぎると逆にまったく苦にならない。
「少年野球の体験入部だと思ったら、甲子園を目指している高校球児の個別塾だった」みたいな感覚だった。落ちこぼれ少年は可愛がってもらえるに違いない。
しかも、受講者の経歴を聞くと、すでにその道のプロとして活躍している人ばかりだ。さらに知識を深めようとする貪欲さに脱帽する。
なかには、ライターと契約して記事を書いてもらっている人も多いらしい。その仕事をちょっとだけこっちに回してやくれないかい?と思いながらも、小心者の私は黙って話を聞いていた。
何を隠そう、陰キャのコミュ障なのだ。詳しくは下記参照。
若い頃、レベルの高い集団に入れば、そのレベルになると言われたことがあった。剣道の話だけれども。
これから数か月間、このレベルに必死の形相をしながらも喰らいついていこうと思う。筋肉痛になろうが、骨折しようが、地を這ってでもついて行く。
たぶん、騙されてない。
しかし、妻に詳しい説明をしても理解してくれないだろう。きっと、ずっと特殊詐欺扱いなのだ。私は特殊詐欺に騙された被害額を早く返済できるようにコツコツ頑張るしかない。
漢は背中で語るのだ。
ちなみに、講座を修了すれば、仕事にもありつけるらしい。数か月後に逆転ホームランを打てるように、まずは地味~な体幹トレーニングから取り組もう。
▼このnoteを書いた人▼
SEO記事、取材記事のお仕事募集中です。執筆のご依頼をお待ちしています。