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隊長さんのTPS(ターニングポイントストーリーズ)

 人は人きっかけで変われる!そんな転機の物語です。

 大学1年の夏、コリン性蕁麻疹になった。コリン性蕁麻疹とは、汗が原因で出てくる蕁麻疹のことで、チクチクとした痛みも伴う。夏の日に汗をかいた後、体中に蕁麻疹が現れた。首から下である。その蕁麻疹を人に見られるのが嫌で、夏でも長袖を着ていた。長袖のシャツの手首や首の回りに蕁麻疹が見え隠れする。それも、他の人からどのように見られているのか、気になって仕方がなくなった。
 中高は卓球に熱中していたので、大学に入って卓球部、テニスサークルに入ったが、人の目が気になって、すべて辞めた。蕁麻疹について、親にも言えなくなってしまった。そして引き篭もった。最低限、大学の単位だけは頑張り、それ以外は一切家から出られず、部屋に籠ってゲームをしていた。大学へ電車で通うときも、できるだけ目立たないところにいた。人目を避け、できるだけ車両の端に立ってた。そんな学生だった。


 今の俺を知ってる人たちは、きっと「あり得ない」という。俺もそう思う。だけどそんな時代が本当にあったのだ。そんなことが2年続いた。
 コリン性蕁麻疹についてやっと親に相談することができ、漢方による治療を始めだしたころ・・・。大学3年の俺の誕生日に親友が言ってくれた。

お前なんか隠してるやろ。お前はすごい気にしてるけど、周りはそれほど気にしてない。だから大丈夫!

 その時の俺にとって衝撃の言葉だった。俺が気にしてるから、周りは気を使って話しかけなくなる。だからどんどん一人になる。そのことが手に取るようにわかってきたのだ。皮膚の状態がどうであれ、俺は俺だし俺であることには変わりはない。
 3年の冬、就職活動が始まった。ちょうど時代は就職氷河期。しかし2年の間押し殺していた自分の思いが噴出した。100社へ就職活動に走り回った。就活そのものが楽しくなってきたのだ。皮膚の状態がなんだ。俺は俺なんだ。この俺で勝負するのだ! そんな思いで就活していたとき、一つの塾に出会った。教員免許は取ったので興味を持って就職説明会に参加した。
 

 塾の説明会は、会社主催の就職説明会と異なり、会社の説明が少なかった。簡単な試験はあったが、内容が変わってた。中学3年生に向けての授業を、大学3年の俺たちに向けてしてくれたのだ。会社説明会の時間の半分が授業だったのだ。「今から中学3年生になったつもりで。」っと、塾の先生がくるっと一周回る。そこから中学3年生の子の受験体験記を話してくれた。高い志をもって、高校受験をしたけれど、落ちてしまった。それでもその受験に後悔していないこと。そしてチャレンジしたことを誇りに思っていること。そして新たな夢として塾の講師になりたいと思ったと。少年のエピソードを話してくれた。

 そして、「時は氷河期。落とされ、否定される連続かもしれないが、それでもあきらめずに頑張れ。まだまだだ!」俺らにむかって話してくれた。その言葉に感動した。人をこんなにも感動させる仕事があるのだと知ったのだ。
 あそこまで話ができるようになるには厳しい道のりだろう。しかし厳しいからこそ挑戦する価値がある。そしてこの塾に就職することに決めた。

道のり


 今もこの塾で講師をしている。そしてより一層、人を感動させたくって、鴨さんの話し方の学校で勉強している。さらなる高みを目指すために。
 塾では、アトピーの子どもたちの相談に乗ることもある。その時は自分の体験談を話す。

アトピーがなんだ!アトピーだからって、できないことが増えるわけじゃない。君は君なんだ。今こうして、生きてるじゃないか。

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