【読書感想】リメイク コニー・ウィリス
図書館より。
ふとコニー・ウィリスのラブ・ストーリーが読みたくなったので手に取った。
裏表紙には「恋とダンスと映画でいっぱいの心ときめく物語」とある。「クロストーク」のようなときめきを期待していた。 結果、だいぶ予想とは違った。
といっても、この説明がウソということではない。たしかに、「恋とダンスと映画でいっぱい」だし、「心ときめく物語」でもある。ただ、実際のところは「1930年代のダンスの映画がいっぱい」といった方が良さそうだ。
ストーリーが面白くなかったわけではない。ただ、ストーリーに入り込む前に、古いミュージカル映画の物量が凄すぎてツラい。
物語の軸のひとつであるフレッド・アステアという実在の俳優は1930〜50年代に活躍した人物。他にも物語中に登場する人物、リメイクされた映画、これらの大半が1930年代。もはや現在(2023年)からしたら丸一世紀近くも昔の映画だ。80年代の映画もチラホラある(インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説等)が、これとて40年近く昔の映画である。この小説が発表されたのは1994年。当時にしても古い映画ばかりだったのでは?
ただ、それこそが作者の狙いの1つだったとも思う。
作中世界は映画産業がリメイクばかりになった世界。名作映画は古くなっても色褪せない、どころか映画産業全体が古い名作映画にすがるしかなくなった世界なのだ。
往年のスターと名作映画の続編で食いつなごうとしているのは、1990年代も2023年現在も大差なさそうだ。
ちょうど今夏、インディ・ジョーンズの最新作が公開されるらしい。ハリソン・フォードも老けたなぁ……80歳!?すげー。むしろ若いわ。
「リメイク」に話を戻す。
ただでさえ、「映画オタクの主人公」と「映画出演にあこがれるヒロイン」と「主人公に憧れて映画オタクになるサブヒロイン」による、元ネタ映画を知らないとわからないネタだらけで、しかもその多くがダンス主体のミュージカル映画なんだから厳しい。
ダンスやミュージカルというのは、言葉に思いを載せるよりも、ダンスや音楽に思いを載せることを選択した結果なわけで。それを小説(言葉)で表現しようとするというのは相当に難しい。
翻訳者は元ネタ映画を見漁るところから、脚注に付録もたっぷりつけて、翻訳以上のかなりの労力を割いている……がやはり厳しい。