UNLEARN BEERができるまで
こんにちは!デザイナーの加藤です。
今回は、WOWオリジナルビールプロジェクト「UNLEARN BEER」のことをお話していきたいと思います。
なぜWOWがビールをつくったのか
WOWは、2022年10月15日(土)から10月30日(日)まで寺田倉庫E HALLにて、25周年展覧会「Unlearning the Visuals(アンラーニング・ザ・ビジュアルズ)」を開催いたします。この25周年展覧会のスペシャル感を出すために、WOWオリジナル飲料を配りたい!という思いつきが始まりです。
他の飲料も候補にはあったのですが、お祝い事といえばお酒、さらにみんなで乾杯しやすい飲み物が良い、ということでビールを第一希望として企画が始まりました。
また、WOWはビジュアルデザインの会社です。サウンドやナレーションといった聴覚分野とのコラボレーションはこれまでもありましたが、味覚分野とのコラボレーションはありませんでした。ですので、ただオリジナルビールを作って終わりではなく、味覚とビジュアルとの関係に注目するプロジェクトにしようと企画を進めていきました。
どんな企画なのか
UNLEARN BEERは、アプリ体験を通じて味覚を学びほぐすことができるビールです。
「UNLEARN(学びほぐし)」という展覧会のコンセプトが決まってから、「UNLEARN」を体感できるビールにしようと企画を考えました。
オリジナルビールをテイスティングしながら、言語化しにくい「味覚」という抽象的な感覚を、専用アプリでフルーツ・植物・擬音語を彷彿とさせる図形を用いて表現し、ラベルとしてお持ち帰りいただくことができます。
りんごの味がするなら赤い色。酸っぱいものにはレモンのイラスト、冷たいものには雪の結晶。私たちが日常的に見るパッケージデザインは、味や風味などを象徴するビジュアルで溢れています。
私たちが感じている「味」は、そういったビジュアル情報から実際に影響を受けているという事実が、多くの研究で指摘されています。「クロスモーダル」という現象です。
さまざまな意図を持つパッケージデザインに囲まれる日々の中で、私たちは自分が味わっている味を本当に認識できているでしょうか?目隠しをされた状態で何かを食べたら、飲んだら、その味を当てることができるでしょうか?パッケージデザインやメディアから得た知識を元に自分の感覚を判断して、自分が感じている味を、他人の言葉で語っていないでしょうか?
本来、味覚はとても個人的で、主観的なものであるはずです。誰かがある食べ物を好きだ嫌いだと言って、それを糾弾する人はいません。正解も不正解もないのです。
UNLEARN BEERを体験いただくときは、喉越しや爽快感を求めずゆっくりといただき、ビールの味わいを自分なりに感じていただきたいです。
奥多摩のブルワリー、VERTEREさんとの出会い
ビールを実際に醸造してくださる協業先を探していたところ、弊社の20周年を記念した雑誌を作成いただいたDiscover Japanさんから、奥多摩にあるクラフトビールブルワリーVERTEREさんをご紹介いただきました。
VERTEREさんのビール缶には、風景写真を用いたシンプルなラベルが貼られています。ビールのネーミングも花の学名となっており、ラベルも名前も実際の味と連動していません。偶然ではありますが、「飲む前に味に先入観を持って欲しくない」というVERTEREさんの姿勢が企画内容とも一致しました。
プロトタイプのワークショップでの気づき
「テイスティングして体験者に味を表現してもらう」という企画内容が決まってきた頃に、奥多摩にお邪魔して関係者でワークショップを行いました。
プロトタイプなので、アナログな方法です。さまざまな形に切り抜いた色とりどりの折り紙を用意して、テイスティングして感じたことをコラージュで表現してから、意見を交換し合いました。
「味を画で表現する」というゴールがあることで、普段ビールをいただく時よりも慎重に味を探しにいったり自分なりの伝達方法を模索したりすることがわかり、この体験フローで「味覚の学びほぐし」が実装できそうなことが確かめられました。また、コラージュという手法をとることで、デザインを経験したことがない方も、自分なりの画を作ることができます。具体的な食べ物の発見、季節のイメージ、思い出の風景。さまざまな職能を持つメンバーが皆思い思いに表現を作り、発見を共有しあうことができました。
個人的に面白かったのは、グレイッシュなカラーを多めに用意したのですが、あまり表現に使われなかったことです。ビールが清涼感のあるアロマが強い飲料であったからなのか、人は感覚を置き換えるときにわかりやすい色を好むのか、興味深く感じました。ワークショップで得た気づきをもとに、実際のアプリの作り込みを行っています。
UNLEARN BEERは10/14からお披露目
UNLEARN BEERは、「自分の味覚を学びほぐす」というコンセプトにあわせて、さまざまなフレーバーを持っています。どの味を感じとるかは、体験者の皆様次第です。
どんな色を、形を、情景を、イメージするか。ぜひお試しになっていただけたら嬉しいです。
UNLEARN BEERは10/14の展示会レセプションパーティーにてお披露目後、体験アーカイブを展示会場に展示いたします。
<Writing : Designer / Saki Kato>
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