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4ki
2020年12月11日 12:11
まだ、あなたのことを意識をしていなかったときのこと。本館から少し離れた別館の2階の扉を開けようとしたら、あなたが外から中に入ってくるところだった。明るい外の光が眩しかった。誰かいるなんて思っていなかったから、不意に私の口から出た言葉は、自分でも意外なフレーズだった。「ネクタイ、茶色なんですね。素敵です」「あっ、ありがとう。そっちこそ、営業力あがってきましたねー」少し照れた様子は
2020年12月4日 10:59
よく考えてみたら、私の周りで真っ赤なストールを身に着けている人はいない。発色がいい赤のストールがあのときとても欲しくて、いくつも店をはしごした。できれば、質感がいいもの、カシミアが欲しい。あったかい大判のものがいい。希望のものを見つけた時はうれしかった。そして、同時にこれを私が身につけていいのかと戸惑いもした。こんな真っ赤なストールはだれも買わないのだろうかという思いまででてきてしまって、
2020年11月27日 11:16
二十歳の私に舞い込んだのは黒いサテンのボウタイブラウスだった。まだ学生で、ツヤツヤしていて襟元にリボンがくるであろうこの服をどうやってきたらいいのかわからなかったし、そもそもいつ着たらいいのかすらわからなかった。だけど、大人の女の人が着たらかっこいいだろうという思いとともにクローゼットにしまっておいた。初めて着たのはいつだっただろう。先輩の結婚式の二次会で同系色のパンツと合わせて着てい
2020年11月20日 14:46
三年前に買ったロングコート。今年も素知らぬ顔で着ている。グレーとネイビーのリバーシブルになっているけれど、ずっとグレーの顔をしている。今年もそろそろ終わる。そんなときに会えることになった。人々が賑わう場所へ行くことは久しぶりすぎて、私は着ていく服がないことに気づいた。あの頃の私を知っているあの人にガッカリさせないような、それでいて頑張りすぎないような服を着ていきたかった。待ち合わせ