オカワダアキナ FLAT
前から読んでみたいと思っていた同人作家さんがKindle Unlimitedであったので、速攻でポチった。
この本は短編集(表紙にはオカワダアキナ小品集となっている)であって、8つの話が載っている。
この中でぼくが好きなのは、『バイ・ミー』という話である。
バイの男が女性を好きになる話とざっくり言えばそういう話なのだが、そこに男同士の哀愁が感じられる作品になっている。そして、主人公の男の方も、元彼のことをどこか忘れられずにいて打算的にいるというところがあります。そこも切なさを感じさせて、ウズウズと泣けてきます。
あと、『サーモとカティ』伯父が庭に缶詰を埋めてたが、それは防災グッズでしかも缶詰ばかりで、缶切りが入っていなかった。伯母が「私たちまるで墓荒らしね」と言った。そんな言葉が優しさのある言葉が良かった。
話は変わって、そこには、ボトルシップがある。「伯父さんは、魔法が使えたから、小さい船にガラスを膨らませて瓶詰めにしたんだよ」と、教えられる。しかし、ボトルシップを水に入れたとき、瓶の中に水が入ってくる。よく見ると丸く切り抜いた跡があった。とそこで絶望とまでは言い過ぎだが、少し残念がるぼくがいたのだった。でも、成長したぼくは、ボトルシップ組み立てるときにカーティサークを作ることを決めるのだった。
最後は、『昨日のかみさま』もおすすめです。
学校が好きではないあたしが、くるみちゃんの誘いを受けて社交ダンス教室に入ることになる。しかし、あるとき、くるみちゃんは両親の離婚でいなくなってしまう。代わりに来たのがリボンちゃん。リボンちゃんは42才で身体の無駄毛ツルツルに剃られている。最初はうまくいかないが、段々とうまくいくようになる。それはなぜか。リボンちゃんは、元々社交ダンスなどで端数が出たときの助っ人に来るときの役回りの人のなのです。
そして、「一番になるのは難しい誰か神さまであったり恋であったりするものを押し付けるのは大変だし、けっこうつらい(略)おれの一番は君にとっての一番じゃない、別。わかる?」「誰がナンバーワンかは人それぞれってこと?」
このセリフで吹っ切れて社交ダンスの発表会はうまく行きました。
しかし、くるみちゃんの住んでいた部屋にはくるみちゃんのお兄ちゃんとお父さんが住んでいて、お兄ちゃんがあたしに向かってBB弾を撃ってくる恐怖は収まらない。残酷な現実の対比が、良かったです。