キツネ【詩作⑮】
キツネはコンコンと鳴く
鳴かず飛ばずのシグネチャーをどんどん書く私
キツネはコンコンと鳴く
静けさは松尾芭蕉にしか染み入らない
キツネはコンコンと鳴く
街は春を待とうとするが
いずれは謙譲語で塗りたくった喧騒を先頭に夏と冬を迎える
キツネはコンコンと鳴く
引く手あまたのあいつと違って俺は一人で字詰め
煙で喉を焼き 消毒液で喉を灼く
引く手あまたのあいつと違って俺は
独創性のみで盲目的にモノを書く
キツネはコンコンと鳴く
居るべきか俺のそばに
少なくとも今は
キツネはコンコンと鳴く
居るべきだ俺のそばに
キツネは滾々と泣く