見出し画像

『きょうはよい日だ』

 平日の休日、ひとり買い物帰りにイオンのドーナツ屋でランチセットを頼みお金を払う。ここのランチセットは650円でクロワッサンサンド・ミニピラフ・ミニサラダ・ドリンクが付きオトクなセットだ。

「ご用意ができましたらお運びしますので、席に座ってお待ちください」と店員さんに声をかけられ、私は外の風景が見られる窓辺の一人用イスに腰かけた。

 食べ終わった頃、私の座る席の左隣の席にお客さんが来た。

30代くらいの父親と2歳と3歳くらいの年子らしい娘ちゃん。2人の娘ちゃんはふわふわのフリースを着てる。ピンク色とラベンダー色だ。

 父親「どこに座る?ここ?いいよ。あっ、テーブルくっつけようか。はい、座ってー。」
と娘ちゃん2人にとってはちょっと高いイスに座らせてあげた父親。大人用のイスだからね…。
 しばらくして店員さんが3人分のランチセットを運んできた。

父親「これだけ食べられる?」と娘ちゃんに聞く。「もし残したら持って帰れるって。残してもだいじょうぶだよ」

 うわっ。なんていい言葉なんだろう。優しいパパだなあ…

父親「今日は二階でお昼寝してみようか。二階でお昼寝したことないもんね」
父親「あとでママが焼き鳥買ってきてくれるって。楽しみだね」
父親「ジュースの氷、食べ過ぎるとお腹こわすよ」

 隣の席でこれらの会話を聞いてると…なんだか涙がこぼれた。おとうさん、あんた、やさしいねぇ…。娘ちゃんのことをめっちゃかわいがっとるねぇ…こんなお父さんがいるんだね…日本の未来は明るいな…ええ話や…。

泣いてることがバレないように紙ナプキンで目をそっとおさえる。自分の息子が三歳くらいの頃の夫の姿や思い出も思い浮かび、ひとりひっそり泣く。

 三人が食べ終わると、父親は店員さんに
「全部食べられたので、持ち帰りする袋はだいじょうぶです」
と伝えると、三人帰っていった。

 私も帰ろう。

今日はいい日だ。

そう感慨にふけりながらエレベーター前まで歩いていくと…

開いたエレベーターから30代くらいの女性が降りてきて、私と目があった。

「あっ」と彼女。

「あっ」と私。

二年前、同じ保育所、同じクラスで仕事し、同じ時期に退職した人だった。

「ひさしぶり…」と言おうとしたら彼女は赤ちゃんを抱っこしていた…

 二年前、彼女は、当時の部署は激務で妊活がしにくい環境だったため、妊活しやすい職場に転職したのだ。私は別の理由で他の保育所に転職した。わたしの転職の理由は、彼女にも関連する内容で、彼女はそのストレスによる神経性胃炎になり、しばらく職場に来ることができなかった。

当時から、いやそれ以上前から妊活をがんばっていたので、結果的に彼女にストレスをかけることになってしまった。彼女は私を責めることはなかったけれども、私は勝手に責任を感じていた。

早朝ウォーキングするコースに、彼女の転職先があるのだが、その前を通るたびに祈っていた。

「彼女が幸せでいますように」
「彼女に赤ちゃんが授かりますように」

 なんにもできないので祈ることしかできなかった。

 退職したあとはしつこくしないよう、ストレスをかけないよう、こちらからは極力連絡しないようにした。

でも、気にはなってるから、彼女が興味を持ちそうな情報を見つけたときは、年に1、2回メールする程度の関わりだった。

 それが、2年後、偶然出会えるなんて。

しかも、彼女がほしくてほしくてたまらなかった赤ちゃんを抱いて。

 もう…、号泣ですよ。
涙がとまりません。

彼女「泣かないで〜」

私「嬉しすぎて泣ける…」「あっ、写真を撮ってもいい?」

彼女「えっ!?」

…若干引いた彼女の顔を見て写真を撮るのはあきらめました。

 彼女と分かれたあと、クルマの中でも泣けて、しばらく涙がとまらない。
ほんとうにほんとうによかった…!

 彼女の職場でのストレス、神経性胃炎、退職、などで私もつらかった。
お別れの際、彼女からもらった手紙には、

「リーダーとしてクラス内の人間関係をうまく調節できず、1年間嫌な思いをさせてしまいごめんなさい」

と書いてあった。

「私のせいで嫌な思いをさせてしまい…ごめんなさい」

と謝られてしまった!😰

 ことの理由は、同じクラス内の職員が、不適切保育をしていた。子どもを守るためには、その職員を正すしかなかった。園長・主任に訴え、管理職はその職員のことを口頭注意したけど、当人は全く改めてくれない。管理職は、『あの人の不適切保育のことは聞いているけれども、私たちの目の前では不適切保育しないため、現場で注意してください』
しかたなく、私は問題の職員に、その都度、『それは良くないですよ』など言葉や態度で抵抗するしかなかった。しかし、当然のことながら相手は反発した。
 私としては『正論』を伝えたのに、『なんで止めないの?』疑問が頭の中をグルグル。昼も夜も考えが止まらず、不眠症になった。睡眠不足でよけいイライラすることに。

当時は人間関係改善のスキルが私になくて、そういう方法しか取れなかったのだ。結果的には、私が正義感のために、短気を起こす形となり、自分の考えと異なる不適切保育をする同僚と、クラス内で戦うことになってしまった。

周りの職員は、ハラハラしながら傍観していた。それも、わたしの味方がいないように感じて孤独感とイライラ感が増した。そして、クラス内はギスギスした雰囲気になってしまった。


そういう事情があり、その影響で彼女は体を壊したのに。

彼女から謝られてしまった…。
もう何も言えないよ…。

その、不適切保育をした社員だが…1年契約社員のため、解雇されるかな?と、期待したが、その社員は、人事異動で別の園へ異動になっただけの処置に、私は絶望した。

『なんだよ、これ!』

『あれだけ戦った結果が、これかよ!』

『先送りしただけじゃないか!』

『もうここにはいられない』

と、失意したとき…知人の紹介で、今の職場に転職することになった。

 私は、転職した会社では、仲の良い人もできて、人間関係も、うまくいっていた。しかし、時々、彼女のことが気になってた。

どうしてるかな?
赤ちゃんできたかな?
でも、そんなことこちらからは聞けないな…

それが
なんと

 偶然2年後に会ったら、赤ちゃんが生まれてた!😲

 前の会社辞めて1年で妊娠できたんだ…長年不妊治療しててできなくて…辞めた後に妊娠したんだ…彼女にとっては、辞めて正解だったんだ…。

 すごくすごくうれしくて、2年前、職場の不適切保育に関するトラブルのことをずーっと相談してた従妹に電話した。従妹も、わがことのように、めっちゃよろこんでくれた。

うれしかった。
うれしかった。

クラス内のトラブルに対するストレスで神経性胃炎になるほど、心優しい彼女の願いが叶った…しあわせになった😊

やった、やったー✨🎉

「きょうはよい日だ」

という歌を作曲した、古関裕而さんの歌をうたおう。

古関裕而さんは、「栄冠は君に輝く」の作曲者。東京オリンピックの開会曲など多数の作曲者でもある。

きょうはよい日だ

みんなげんきで

こうしてあつまり

こうしてはなせた

ひとひらのはなのなかにも

天国はあるよ

みじかいときのなかにも

しあわせはあるよ

きょうはよい日だ

たたえよ ともに

ある意味🌿わたしの終戦記念日🌿

 最後まで読んでいただきありがとうございました✨

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集