『どこにでもあるどこかになる前に。』へのラブレター。
親しい友人から、『どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜』という本をいただいた。とても素敵な本だった。
著者は、東京に憧れ、働き、富山に戻ったアラフォー女子。藤井聡子さん。
東京で働いたあと、富山にUターンすると、街の景色が「どこにでもあるどこか」ばかりであることに気づく。しかし、藤井さんは、それと同時に「どこにでもあるどこかになる前」の富山も多く発見していく。この本では彼女の半生と共に、富山の隠れた魅力が描かれる。
この本の中には、「人間味」であふれている。
藤井さん本人はもちろん、藤井さんの家族や街で商売を営む人たちが、何をかんがえ、どのような人生を歩んできたのか。多忙な日々を過ごしていると見逃してしまうような人たちの日常が、この本には描かれている。
今は、「どこにでもある」風景でたくさんの街が覆われている。
駅を降りれば、おなじみのユニクロ、サイゼリヤ、牛丼チェーン、携帯ショップ、居酒屋チェーン・・・。
どこの街に行っても、駅前の景色は変わらないように見える。
ただこれは、日本に限った話ではない。世界の街をあるけば、コカ・コーラを片手にマクドナルドを頬張り、H&Mの服を着て、シャネルのカバンを肩にかけている人がいる。「どこにでもある」は世界中で増えている。
一見すると「どこにでもある」だらけの世界が広がっているように見える。大企業の作る製品や店舗、ビジネスが「どこにでもある」を増やしている点は否めない。
けれども、この本を読めば、「どこにでもある」ように見える街にもたくさんの「どこにでもある前のどこか」があることに気づかされる。
富山のブルースシンガー、ケンタッキーが大好きな飲食店を営むママ、地域を盛り立てるために活動する人々。魅力的な人物が描かれている。
この本の言葉には、「ありふれた毎日」を「虫眼鏡で見る楽しさ」があふれている。普段は見逃されてしまいそうな人々が、見逃されてしまいそうな日常が、丁寧に描かれている。その描写は、自分の生活も「虫眼鏡」で見てみたいと思わせる。
富山出身の藤井さんが語る「富山の隠れた魅力」。本を読み進めていけばいくほど、富山に訪れたいと思う。
ただ、それだけでなく「じぶんのまち」にも興味をもった。
なぜなら、「どこにでもある」ようにみえる「じぶんのまち」も、好奇心という「虫眼鏡」で見れば、もっと素敵な発見があると思えたからだ。