ささいな支えに助けられて。
外国人と結婚された友人と久しぶりに話した。なんでも彼は、奥さんを呼び寄せるために、かなりの苦労をしているらしい。住民票、戸籍、結婚証明書(外国で取得したもの)、出会いから結婚までの経緯を説明した書類などなど。合計で20枚以上の書類をそろえる必要があるそうだ。
そんな友人がVISA申し込みを受け付けている役所に今日行ったそうだ。待っている人数は100人以上。友人は3時間以上待合室で待ったそうだ。そこでは、各国から日本で働くため・暮らすために来た人でごった返していたそうだ。コロナウィルスの影響など、いざ知らず、人々は”暮らすための権利”をもらうために待っていたのだろう。
3時間たって、ついに受付に呼び出されたそう。嬉々として用意した20枚以上の資料を出すと、最初の1枚を確認し、こういわれたのだ。
”残念ながら、この資料ではなく、違う書類が必要です”
落ち込む友人が、何か代わりに出せる書類はないかときいても、、、
”戸籍に関する書類なので、ここでは何もできません。すみませんが、本籍地に問い合わせをお願いいたします。”
と非情な現実を突きつけられた。非情ではなく、準備不足だとわかりつつも、友人はそこで涙したという。
そこから、祖父母に友人は電話した。若いうちにご両親を亡くした彼は、祖父母が両親代わりのようなものだった。いかに自分が落ち込んでいるか、つらいのかを伝えたらしい。アラサーの男が涙声で祖父母と話したのだ。
そんな彼の話を聴いて、祖父母は彼にこういった。
”そんなこともある。役所の人だって、好きで受け取らないわけじゃないんだから。また取り直して出せばいいんだから、大丈夫だよ。”
そんなやさしい言葉にも友人は素直になれなかったらしい。なぜなら、準備期間は1ヵ月、待ったのは3時間、振出しに戻ったやるせない感情がどうにもこうにも、胸の中で引っかかったらしいのだ。
祖父母との電話を切った友人は、マッサージにいった。90分の贅沢を体にあたえることにしたのだった。
そして、そのマッサージの際に思い出したそうだ。海外で結婚した友人は、居住先の海外では取得できない書類を祖父母に頼んで取りに行ってもらったことを。そして、祖父母は一部の書類を忘れたことにより、往復3時間の道のりを2回も辿ったという事実を。
80歳を超える祖父母がそこまで辛抱強く結婚書類を準備してくれたのに、自分は”たった1回の挫折”で涙するとは・・・。恥ずかしくなった友人は、祖父母に電話し、感謝の言葉を伝え、めげずにいくことを宣言したらしい。
たぶん、日本人と結婚している人にはわからない経験だろう。それがいいとか、悪いとかではない。けれども、こういう人の痛み、やさしさ、思いやり、ふがいなさ、待合室にいる外国人の姿をみて感じたこと。こういうことは、この友人の心の豊かさにつながっていると思った。
そして、この友人が無事にVISAを取得し、奥さんが1日でも早く日本に来られることを願った。彼のおじいちゃんとおばあちゃんが、元気でいてほしいと思った。まるで素敵な映画のワンシーンを見ているようだった。
何気ない雨空の1日が、友人の経験談で、忘れられない1日になった。