知らない誰かのやさしさで。
先日近所のカフェに座っていたら、老夫婦が席を探しに店内を歩いていた。
週末のお昼時ということもあり、カフェはほぼ満席で4人席のテーブルと、カウンター席が数席空いているだけだった。
もちろん老夫婦は、4人席のテーブルに座ると思ったら、
おばあさんは「ここは4人席だから、わたしたちはあちらにいきましょう」と旦那さんに話し、二人は狭いカウンター席に腰をかけた。
(そして注文した、パスタとコーヒーを食べていた。)
そうしている間に、ほぼ満席の店内に、
赤ちゃんと一緒に若い夫婦が4人席テーブルにやってきた。
「こんなに混んでいるのに、テーブルが空いていて本当によかった」
奥さんが笑顔で旦那さんに話し、そのあとパスタとコーヒーを楽しんでいた。
そんな一瞬の出来事を見て思ったのです。
この若いご夫婦は、知らないのだと。
カウンターに座っている老夫婦が、4人席を譲ったことを。
もし4人席が空いていなければ、この楽しいランチはまだお預けで、ほかのお店探しをしていなければいけなかったかもしれないことを。
それと同時に、いまこうして生きている世の中は、
実は「見知らぬだれかのやさしさ」の連鎖で成り立っているのではないか。
そんなことを思ったのです。
何気ないやさしさは、だれに褒められるでもなく、忘れられ去られてしまうかもしれない。
それでも、この老夫婦のように、見知らぬだれかのことを思いやり、行動することは、とても美しいことのように思うのです。