カジュアリスト ~可読性を上げるカジュアルな箇条書き~
文章ではなく箇条書きを使うと、可読性が上がることがあります。特に作法にとらわれず、カジュアルに書くことも組み合わせた箇条書きをカジュアリスト(Casualist)と呼びます。
カジュアリストの例を見ていきます。
例1
GitLab本から抜粋します。
1: 可読性が低い文章
可読性が低いというか、無いに等しいでしょう。まともに読み取ることができません。文法的に破綻しています。
2: 可読性がまずまずの文章
同書で述べられている「可読性が高い」例です。
意味的には通じますが、読み手の認知負荷が高いです。人によってはメモしながらでないと理解できないでしょう。可読性が高いとは言えないと思います。
3: カジュアリスト
上記をカジュアリストで書き直してみます。
初期工程の納期見積もり: プロジェクトリーダーがつくる
何のために? → 次工程の開始時期を想定するため
納期見積もり期間の算出は、
以下a:とb:に基づいて行う
a: 同様の作業の今までの実績
b: 要求される品質
条件つきで以下c:も使う
c: プロジェクトマネージャーへの確認(リーダーの経験が浅い or a:がないとき)
あるいは、以下のようなまとめかたも可能です。
誰が?
プロジェクトリーダー
何をつくる?
初期工程の納期見積もり
なぜつくる?
次工程の開始時期を想定するため
つくりかた > 納期見積もり期間の算出方法は?
以下二つに基づいて算出
a: 同様の作業の今までの品質
b: 要求される品質
リーダーの経験が浅い or a:がないときは以下を使っても良い
c: プロジェクトマネージャへの確認
文章よりもかなりカジュアルですし、行が増えて縦長になってしまいますが、2: よりもはるかに読みやすいと思います。
そのカラクリは認知負荷です。情報が見やすく並んでいるので、頭の中で覚えたり並べたりする必要がないのです。
例2
書籍『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』で取り上げられた問題を例にします。
1: 可読性が低い文章
読解力の問題だそうですが、これを読解力でくくるのは軽率でしょう。読解力の他に記憶力も要求されます。実際、この例は、最初の一文だけで覚えることが4つもあります。
読み手に負荷をかけている、優しくない文章です。可読性は低いと言ってもいいレベルです。
2: カジュアリスト
カジュアリストで書き直します。
Alexは、男性に使われる名前
Alexは、女性に使われる名前
Alexは、女性の名Alexandraの愛称
Alexは、男性の名Alexanderの愛称
可読性は段違いです。続く問いも見てみましょう。
3行目を見れば明らかです。答えはAlexです。
これが可読性を上げるということです。
可読性のトレードオフ
上述したとおり、カジュアリストを使うことで可用性を引き上げられます。しかしデメリットもあります。
デメリット:
文章でこそ表現できる複雑な情報を表現しきれない
物語やルールの記述には不向きです
リズミカルに読めないので没入しづらく、疲れやすい
特に物語を読むセンスを持つ人は、脳内で物語として処理できると疲れにくいのですが、箇条書きではこれができません
オフィシャルには使えない
カジュアリストの名前のとおり、文体はカジュアルになります
正式な文書や発信内容として使うのは苦しいでしょう
ですので、これらデメリットを受け入れてでも可読性を優先したいときにカジュアリストを使います。
より一般的に言えば、可読性を上げれば上げるほど上述のデメリットが強くなります。トレードオフの関係があるのです。