【詩】の、ための
外に出らんなかったいくつかの
そういうことばが脳を押す
行き先なくして意味失って
散らばって
それから互いに手と手をとりあい
いっせーのせ
それは見知らぬ律動
頭蓋のうちを跳ねまわる
あ と見つけりゃ
い と驚いて
う と苦しみ
え と疑い
お と収束する
いつのまにか文字たちは
前とは違ったことばんなって
息をあわせりゃ文章で
いっせーのせ
それはあらたな情動
こころかきむしる意思んなる
ころころ転がる石のように
止めるものなく外へと急ぐ
うそいつわりなきうそいつわりは
繰り返しそうやってぼくを騙しにかかる
ひとの
ひとのための
本能の
むきだしの
そういうもんは都合良く
ここいら辺には見当たらない
――そうして、ことばが外にあふれ
割れる景色にきみの横顔を見
揺れた星空鈍色ビードロに似
ぽっぺんぽっぺん音を出し
蛇腹の夜がのびきるころ
ぼくは飛んで空は落ちてくる
雲のシーソー月をのせ
ぎっこんばったん音を出し
蛇腹の夜がちぢむころ
瞼ひらけば朝がのしかかる
そんなとき
ひとの
ひとのための
本能の
むきだしの
そういうことばが脳を押すんだ
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