経営の「本質」は人と同じ。「稲森和夫の実学」稲森和夫 #9
この本の著者である「稲盛和夫」さんは「京セラ」の創業者です。
この本は稲盛和夫さんが京セラを日本を代表する企業に成長させていく中で、大切にされていた「経営」と「会計」の考え方が書いてあります。
僕自身、元々税理士を目指していたので会計学には自信があります。
ですので、読む前は結構簿記の内容が書かれているのかなと思っていました。でも、読み進めていくと、稲盛和夫さんの熱の入った言葉たちが「上部の知識ではなく、本質」を伝えてくれていました。
もちろん、細かい知識も書いてあります。経営者目線と税理士目線で会計学の捉え方が違い、中にはハッとさせられる部分があり、面白かったです。
きっと、本質は変わりませんし、読んで良かったと思う本です。
1,本質追及の原則
原理原則に則って物事の本質を追究して、人間として何が正しいかで判断する。物事の判断にあたっては、つねにその本質にさかのぼること、そして人間としての基本的なモラル、良心にもとづいて何が正しいのかを基準として判断をすることがもっとも重要である。
僕は、基本的に「経営者は決断する事が仕事」だと思っています。
そう思う理由ですが、沢山あるタスクの中で、人に振れる部分はどんどん任せていき、最後に残るのは重要な核となるタスクのみになるからです。
つまりは、決断する事。リスクとリターンを見て会社の方向を示す。そんな決断をする際に大切になるのが「本質追及の原則」です。
会社は、決して経営者の私的な利益を追求する道具ではない。会社の使命は、そこに働く従業員一人一人に物心両面の幸福をもたらすと同時に、人類、社会の発展に貢献することである。
上記の引用文を読んでも分かるように、もし経営を進めていくうえで、理屈に合わなかったり、道徳に反することを行えば、経営は決してうまくいくはずがないですよね?という話です。
直面した問題に対して、「心からこうであるべきだ」と納得して判断できるのは、良い経営をするための最低条件であり、人として大切な事だと気づかせてくれました。勉強になります。笑
2,キャッシュベースで経営をする
「キャッシュベースの経営」というのは、「お金の動き」に焦点をあてて、物事の本質にもとづいたシンプルな経営を行うことを意味している。会計はキャッシュベースで経営をするためのものでなければならないというのが、私の会計学の第一の基本原則である。
これは経営者と税理士で食い違いが起こるポイントの一つです。笑
現代の日本の会計学では、「発生主義」で収益や費用を計上していくのが常識です。
発生主義の良いところは、その年に出た利益を正確に出せる所です。P/L(損益計算書)と相性が良いイメージです。B/S(貸借対照表)の数字は過去と現在のP/Lの積み重ねと言った所でしょうか。
ですが、弱点があり、手元のキャッシュの把握が難しいです。
身近な所で説明すると、引き落とし日や締め日の違うクレジットカードが何枚もあり、同じように締め日と支払日の違う収入源が複数あるとします。
そんな時、今自分が「どれくらいの資金を投資に回せるのか?」「貯金しなければいけないのか?」を把握するのって難しいですよね?
経営では、そこに売掛金や買掛金、減価償却費等も入ってきて、よりキャッシュを把握するのが複雑になります。
そこで、便利になってくるのが、C/F(キャッシュフロー計算書)です!
稲盛和夫さんが経営されていた頃は特に、「キャッシュフロー計算書」が今よりも主流ではなかったそうです。
よく聞く黒字倒産は、企業のサイトが回らなくなる事で起きます。利益は出ているのに、支払いが間に合わないというのは、キャッシュベースの経営をしていないと誰にでも起きうる事です。
京セラを創業して間もないころ、私は松下幸之助氏の講演を聞く機会があった。その講演のテーマは「ダム式経営」というものであった。幸之助氏は会社を経営する際、ダムをつくることで川がいつも一定の水量で流れているように、「ダムの蓄え」を持って事業を進めていかなければならないと説かれた。このダム式経営と同じ趣旨で、私がよく使う言葉に「土俵の真ん中で相撲をとる」というものがある。土俵際ではなく、まだ余裕のある土俵の真ん中で相撲をとるようにする、という意味である。
お金の事を常に心配していては、良い仕事ができません。
資金繰りがギリギリの経営をするのではなく、体力のある、いつでも勝負をかける準備ができている経営を目指したいですね。
面白いなと思ったのが、稲盛和夫さんは「無借金経営」で京セラを大きくされたという事です。
普通と言いますか、多くの経営者の意見として、「借金をする事」は、より大きな勝負をかけられるという意味で良いものです。
ですが、稲盛和夫さん言わく、銀行に融資を受けなければ勝負をかけられないのでは、銀行に企業の運命を委ねてしまっているし、1番良いのは自己資本で勝負をかけられる事だそうです。
確かに、本質的な部分ではあるけれど、僕はこれを鵜呑みにせず、自分の目標とその時の状況を見て判断するようにはしたいなと思いました。
3,筋肉質の経営に徹する
これもキャッシュベースの経営に繋がる部分があるのですが、経営者は「筋肉質の経営に徹する」事が大切です。
聞いたらすごく当たり前に聞こえるのですが、意外とできていない人の方が多いです。筋肉質の経営とは何か?
それは、「売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える」という事です。
一般家庭に落とし込んで考えれば、「給料は最大限にもらえるように努力し、生活費は必要最低限になるようにする」と言った所ですかね。
僕もできてないですね。笑
すぐに自己投資に回してしまってお金がないです。笑
一般的には、売上が伸びれば経費もそれに比例して大きくなっていくとされています。給料増えたら生活が豪華になっていくみたいな感じです。笑
ですが、土俵の真ん中で相撲をとるために、経費を抑えましょう。
例えば、備品はなるべく中古や、旧式のもので我慢する。ここもあくまでパフォーマンスと経費の額のバランスを見て判断するのが前提です。
他にも、固定費を抑える事。投機はしない事。そうやって経費を抑えるか、売上を伸ばす事でしか、利益率向上、利益額の増額には繋がりません。
すごく単純ですが、忘れがちな原則だと思います。
4,完璧主義を貫く
完璧主義とは、曖昧さや妥協を許すことなく、あらゆる仕事を細部にわたって完璧に仕上げることをめざすものであり、経営においてとるべき基本的な態度である。
九九パーセントでも結構だとなれば、今度は九〇パーセントでも仕方がないということになる。いや、八〇パーセントでもいいじゃないか、七〇パーセントでもいいじゃないかとなるだろう。そうすると会社の経営は甘くなっていき、どんどん社内の規律も緩んでいくであろう。一〇〇パーセントは一〇〇パーセントなのである。
経営判断をする際に必要なのはリアルタイムの数字です。
その数字に少しでも誤りがあれば、経営者は経営判断を間違ってしまいます。なので、100%の数字を出すという姿勢は大切です。
少し厳しいようですが、その姿勢がなければ、妥協する雰囲気がどこから発生し、会社の膿として広がっていくでしょう。
また、「マクロとミクロの視点」を持つことも必要です。
・マクロ→会社全体を動かすような仕事
・ミクロ→部下のやっている(現場)の仕事
マクロの視点を持っている経営者が多いですが、やはりどれだけ会社が大きくなっても、現場を見るという事は良い経営に繋がります。
2代目社長や3代目社長の代で会社が傾いたりする原因は現場を知らない事が原因なのが多いそうです。
5,会計で大切な事
・一対一の対応を貫く
これは、伝票をきる文化があった時代の話なので今は違うのかな?とも思いますが考え方は本質的です。
一つの取引は、最後までしっかりと紐付けて管理するのです。
例えば、商品を製造、納品、請求、振り込み確認という流れがあるとします。
その過程で、取引先の急なお願いで納品を早めた結果、請求する際に個数の把握が正確にできなかったらどうでしょう?正確な会計の数字は出てきませんし、その数字で行う経営判断は100%正しいとは言えませんね。
取引先のお願いでも、経理が正しく行えないので!と断るか、正しく行える方法に従ってもらう事が大切です。
・ダブルチェックで人に罪をつくらせない
ダブルチェックとは、経理のみならず、あらゆる分野で、人と組織の健全性を守る「保護メカニズム」である。
人はふとした弾みで過ちを犯してしまう弱い面を持っています。
もし社員がミスをしてしまった際に、その人1人の責任にしてしまう事もよくないですし、何よりその罪をつくらせない仕組み作りが必要です。
具体的には、仕事を分解して、お互いにチェックし合います。
今となっては当たり前かもしれませんが、根本にあるのは人を守るという事だと知っているだけでも違うかなと思います。
ダブルチェックを取り入れるメリットは他にもあり、会社に良い緊張感と雰囲気を作ってくれます。
「まあ良いだろう」という妥協を生み出さない仕組みが社員のモチベーション管理にも繋がるでしょう。
6,感想
如何でしたか?
何かこう、土台となるような内容が詰まっている本でした。
特に、経営者視点の会計学の考え方は面白かったですし、やっぱり経営者は熱い想いがあってこそだと思いました。
途中途中、稲盛和夫さんの熱い言葉が書かれています。笑
そして、正義感のとても強い方なんだなと思いました。
こうやって上に立つ人は人格者なのだと、本を読むと毎回思いますし、しっかりと僕も人として成っていけるようにしたいです。
紹介した内容以外でも沢山の本質的な所を学べる本ですので、是非読んでみてください😄
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!
この記事が参加している募集
新時代を生き抜くヒントはここにあります。あなたの応援は無駄にはしません。ありがとう。