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圧巻「上絵金彩花文麒麟鈕大香炉」:横山美術館「錦光山と帯山」展、拝観記
名古屋の横山美術館「錦光山と帯山」展に行ってきました。
展示作品も錦光山と帯山の作品で80点以上、粟田焼ゆかりの諏訪蘇山や宮永東山、伊東陶山、河村蜻山、丹山青海や錦光山宗兵衛の盟友である松風嘉定、さらには清水焼・五条坂の乾山伝七、清風与平などを含めると優に100点以上、さらには文章の解説も充実していて素晴らしい展覧会でした。
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七代錦光山宗兵衛(kinkozan Sobei)「上絵金彩花文麒麟鈕大香炉」
Kylyu-shaped lidded large incense burner design、overglazed with gold
まず錦光山の作品ですが、今回初見の作品をいくつか紹介したいと思います。
そのなかでも、圧巻は「上絵金彩花文麒麟鈕(ちゅう)大香炉」でありました。行く前から見るのを楽しみにしていたのです、期待通りの逸品でした。
何と言っても、鈕(ぼたん)の麒麟の存在感が圧倒的です。
冒頭の画像をご覧になっていただくと、中国神話の伝説上の動物、麒麟がまるで生きているかのように躍動感があります。顔は龍に似ていて、眼は爛々と輝き、口には小さな牙が見え、本物のヒゲがはえているのではないかと錯覚するくらいに精巧です。
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身体は鹿に似ていますが、毛や尻尾が黄金色に輝き、肢は馬のようにな蹄があります。これだけの造形力のある麒麟はひとつの陶彫と言ってもよく、実見はしていませんが、七代錦光山宗兵衛作の精緻な舞妓の陶彫(画像はあとに添付)を見た以来の感動を覚えます。
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さらに目を下に転じていきますと、麒麟が乗った蓋(ふた)部分の透かし彫りも精緻で雅(みやび)です。胴につながる首回りが、朱に細かな金彩の模様が描かれ、西洋風でモダンな感じの朱の耳、耳の下につながる朱に金彩模様、その下の緑地に金彩模様、さらには最下部の朱と緑地の金彩模様につながり、これにより全体を余すところなく引き締めており、造形と色彩に一部の隙もありません。
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そして何と言っても心憎いのは、胴部の地が墨色で木目のような、雷模様のようなギザギザ模様が描かれており、その落ち着いた暗色の上に、金彩の葡萄、白の花や緑の葉、さらには薄紫のボタンが描かれていて、一層、色あざやかさが際立ち、ひとつの幻想的な美の世界に誘ってくれることであります。
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わたしとしましては、よくぞこのような東京国立博物館の七代錦光山宗兵衛作の「色絵金襴手龍鳳文獅子鈕飾壺」と並び立つような、逸品を横山美術館様が所蔵・展示してくれたことに、横山博一理事長をはじめ友松照雄館長、原久仁子学芸員など横山美術館のみなさまの鑑識眼の高さに敬服しますとともに、心より感謝したいと思います。
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このほかにも初見の作品をいくつかご紹介したいと思います。そのひとつが七代錦光山宗兵衛作の「釉下彩秋草図花瓶」です。満月にススキや野菊など秋の草花をあしらった落ち着いた作品で錦光山の多様な作陶を思わせるものと言えましょう。
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また七代錦光山宗兵衛作の「染付藤図鉢」も染付の藤の周りに薄桃色の火色があらわれ、国内向けの作品と思われますが、錦光山の作陶の多様さを示すものと言えましょう。また七代錦光山宗兵衛作の「上絵金彩桜蝶図花瓶」も珍しいピンク地に桜と蝶を描き、肩部の豪華な割文様とあいまって華麗な風情を醸し出しています。
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なお初見ではありませんが、七代錦光山宗兵衛作の「上絵金彩柳燕図花瓶」の意匠は、学芸員の原さんのお話では、絵付が大耕の版画に類例が見られるとのことであり、大耕という人物がどのような人物なのか興味がわくところであります。
またわたしが大好きな七代錦光山宗兵衛作のアールヌーヴォー様式の逸品「盛上網文葡萄図花瓶」は現在貸し出し中で今回展示されていませんが、そのデザイン画が展示されていたことは新しい発見でありました。
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つぎに帯山与兵衛の作品を簡単にご紹介しましょう。
帯山与兵衛の作品としましては、やはり「上絵金彩牡丹蝶図蓋付壺」が、まさに金彩と多彩な色をふんだんに使った華やかな帯山与兵衛の傑作のひとつではないかと思われます。まさに陶酔してしまうような華麗な世界ではないでしょうか。この華麗な世界と対称をなすのが今回展示された「上絵寺院図飾皿」ではないでしょうか。墨色のモノトーンで寺院の山門が写実的に描かれており、まさに寺院の静謐で落ち着いた雰囲気が出ていますが、いつ頃どのような理由で描かれたのか謎と言えましょう。
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八代帯山与兵衛は、明治5年(1872)に、わたしの曾祖父の六代錦光山宗兵衛とともに神戸の外国商館におもむき、粟田焼を「京薩摩」として海外に輸出する道を切り拓いた盟友でありますが、九代帯山与兵衛は、清水六兵衛家の出身で帯山家の養子に入り、明治27年(1894)に製陶を廃業し、その後、台湾に渡ったと言われており、その人生は謎に包まれており、いつかこれらの謎が解かれることを期待したいものです。
なお、今回の「錦光山と帯山」展は作品だけでなく、解説も充実しておりまして、この展覧会を見れば「京薩摩」のことが一通り分かるようになっているのに感心いたしました。そこでいくつか画像をアップしておきたいと思います。
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また会場に約12分の「錦光山と帯山」というビデオ画像が流れていますが、学芸員の原久仁子さんが京都の粟田に出かけ、わたしの拙著『粟田、色絵恋模様 京都粟田焼窯元錦光山宗兵衛外伝』を読んでいたので「味わい深く有意義な旅となりました。著書のなかで書いておられるように『錦光山安全』と彫られた祠だけが往時を物語っているかのように感じました」とおっしゃってくれて、「錦光山安全」の祠を写真に撮り、ビデオ画像に使ってくれました。ありがたいことで、心より感謝いたします。
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どうもありがとうございます。
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