<自治体との連携②>みまたフィットネス教室「ぴしゃトレ」@宮崎県三股町
WONDER未来図が受託する宮崎県内の介護予防事業は、現在5自治体。その中の1つが、先にご紹介した宮崎県新富町の「ポジトレ」がこちら。
2022年10月、WONDER未来図は新たな事業をスタートさせました。その名も「みまたフィットネス教室“ぴしゃトレ”」。宮崎県三股町の65歳以上を対象とした介護予防教室で、祝日を除く毎週木曜日に三股町武道館で行っています。取材日はスタートしてまだ2カ月の頃でしたが、すでに80名を超す登録者がいました。
楽しくてつい限界まで体を動かす高齢者のフィットネス。自治体サービスに組み込み、未来の介護を先延ばし
【第1部】ちょっと先の、より良い状態を目指すクラス
9時半スタートの第1部は、この日は33名が参加。12月の寒い日でしたが、暖房で温められた体育館に参加者たちが続々と集まってきました。名簿でチェックしたら、各自ヨガマットを持ってスタンバイ。
ちょうど取材の日は木佐貫町長も視察にいらっしゃっていました。
まずは、ストレッチからスタート。担当トレーナーはWONDER未来図社長の金子さんです。
前方でお手本を示すトレーナーを真似ながら、姿勢を整え体の各部を伸ばす参加者さんたち。胸を反らせたり脇腹を伸ばしたりする伸縮運動をメインに、トレーナーのカウントでリズム良く体を動かしていきます。
上半身の次は、下半身も動かしていきます。
もう1人のトレーナー丸中さんが、会場内を移動しながら参加者を適宜サポートします。2人のトレーナーの、ユーモアあふれる雰囲気作りはWONDER未来図が行う教室の特徴でもあります。
休憩をはさみ後半は、ヨガマットの上に仰向けになります。足を上げたまま上下交互にクロスさせたり、うつ伏せになり手足を浮かせたり。
次は横向きに寝そべり、片足上げてキープ。足や腰回り、腹筋、背筋に効きそうなメニューですが、みなさん黙々と取り組んでいます。
「…9、10!」
トレーナーの10カウントで、参加者からは「はーっ」という声がもれると同時に表情がゆるみます。ちょっときついレベルの運動も頑張れるのは、トレーナーや仲間と一緒だからなのかもしれません。
さあ、まだまだこれから!
次は床と並行に体をキープする「プランク」を10カウント、そして倍の20カウント。こちらはさすがにハードでしょうか。続いて四つん這いのネコの姿勢で体を前後に揺らしながらの肩のストレッチは気持ちが良さそうです。
みなさんの様子を確認しながら金子さんは、
「体が熱くなったでしょ。寒い時は服を着こんでじっとするんじゃなくて、体を動かしてあったまる方がいいですよ」
と、日常生活でのアドバイスもはさみます。
毎日の行動をちょっとだけ意識して「動く」こと。週1回のリハビリだけでなく、日常生活での習慣化が大切です。
【2部】待ったなし! 介護生活を食い止めたいクラス
参加者が入れ替わり、10時45分からの第2部は12名が参加。トレーナーも丸中さんにバトンタッチし、全員が椅子に座りました。
こちらではノルディックポールと、筋膜ローラーを適宜使いながらのトレーニング。第1部より負荷を下げた内容で、要介護がより身近な方々を対象としています。
「さあ今日もがんばりましょうか。みなさん」
丸中トレーナーの笑顔と声かけでまずは肩の力を抜き、ゆっくりめのカウントでストレッチ。次第に反動をつけながらの動きに変わっていきます。
「腰から捻りましょうね。はい、顔を上げて、胸を張って。…背中側でローラーが握れますか? ギリギリみなさん届いて…ないですね〜笑」
トレーナーの丸中さんが調子よく進行役を務める一方で、金子さんは参加者のより近くで一人ひとりをサポート。力の入れ方、関節の伸ばし方、体重のかけ方など、トレーニングの効果をより引き出すための声かけをしながら、2人はあうんの呼吸でトレーニング空間を作り上げます。
丸中さん「2回目はさっきより届くでしょ。…ん? あんまり変わってないですね(笑)。ぜひおうちでもやってみましょうね〜」
会場の雰囲気も参加者も、だんだんとあたたまってきました。
次は座ったまま、筋膜ローラーをおヘソの下へ突き当て、腹筋に力を入れます。
「せーの、ふ!」
で、スティックを押し出します。繰り返したら今度は力を入れたまま静止して10カウント。
丸中さん「呼吸は大事ですよ。冬は特に呼吸が浅くなりがちですからね」
何のためにこの運動が必要なのかをしっかりと伝えることも、WONDER未来図が大事にしていることの一つです。
10分の休憩をはさんで、今度はノルディックポールを補助に使って行います。
肩を伸ばしたり、回したりしながら、可動域を少しずつ広げていく運動。
足を上げる動作は結構キツいようで、まさに筋トレに取り組んでいるかのよう。
「あー、死ぬごたる(死にそうにキツイ)」
思わずもれた参加者の言葉に、どっと笑いがおきました。キツさも笑いと勢いで乗り切っているようです。
最後は立ち上がり、椅子を支えに使いながらの運動です。
スクワットや足踏み、ボーリングのような動きなど、無理のない範囲かつちょっとのキツさを感じながら、それぞれの体調に合わせながら全員で最後までやり切りました。
他の自治体事例を視察して「これだ!」と直感、連携へ
最後に、このような介護予防教室で三股町がWONDER未来図と連携することになった理由を聞きました。
「諸事情で、うち(三股町社会福祉協議会)が理学療法士不在に陥っていたところ、WONDER未来図さんが新富町でやっている“ポジトレ”の存在を知りました。そして視察を通じて『これだ!』と思ったんです」
と話してくれたのは、三股町社会福祉協議会の有川さん。
自治体側の課題感と、これからの介護問題を真っ向から解決しようと取り組むWONDER未来図の提案が合致。2022年10月から「ぴしゃトレ」としてスタートしたのです。
高齢者の介護を先に延ばし、自治体の財政負担を減らす
第2部の参加者の中には、すでに介護認定を受けられる状態の人たちも含まれています。介護認定を受けてケアマネージャーが付けば、その時点で自治体には費用の負担が発生します。
WONDER未来図は介護認定を受ける前に少しでも早く手を打ちたいと考えます。例えばぴしゃトレに参加して体を動かす習慣を身につけてもらい、この先も元気にいきいきと過ごせる時間を伸ばした方が、ご本人の心身の負担は軽くなります。もちろん自治体の財政負担も軽くなります。
金子さん「ぴしゃトレの第1部は5〜10年後の状態を良くするため、第2部は今まさに介護になりそうな方を食い止める、少しでも先に伸ばすための内容になっています。
まだ始めたばかりですが、私たちは自治体と連携しながら介護や地域の持続可能性という社会課題に立ち向かっていきたいですね」
明日をいきいきと暮らすため、今から体を動かす習慣を。WONDER未来図の挑戦はまだまだ続きます。