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クリエイターフェスでフェス!

クリエイターフェスでフェスをしよう!

10.1〜10.31まで、noteで開催されるクリエイターフェス。
このイベントを知ったときに、ぼんやりとこう思いました。
もう少し、その思いの解像度を上げると、

フェスに参加するバンドの気持ちで、物語LIVEをしよう!

400字という文字数のショートショート作品を、4年ほど書いてきました。
作品の特徴としては、ことばのリズムやことば遊びをおりまぜたりと、読む方の中で『音』を体感できるワクワクする物語を目指してきました。

ならば、このクリエイターフェス。
今まで書いてきた作品の中から、フェス仕様の物語セットリストを組んで、楽しんでいただこうと考えました。

となると、LIVE前のお喋りが長いのは白けると思うので、途中でMCという形で補足させていただきます。

下記のセットリストの気になるタイトルから読むのもよし、頭からの流れで楽しんでいただくもよし。
クリエイターフェス最後の週末を楽しんで、一緒に盛り上がりましょう!

1.ダービーパン

パーン、パパパパーン♪
鳴り響くファンファーレ。
中山ベーカリーでのサラブレッドの祭典。

出走!

トースタートダッシュをサクッと決めたのはクロワッサンダー。

続いて、パ体の長いショックパーイッキン、すこーんと抜けるスコーンドル、フィニッシュに強いオヤスミデニッシュ、リスクを恐れぬラスクエンペラー、カリージャパンも華麗に順位を揚げる。

ここでライムギバタケが先頭をつかまえた!騎手のサリンジャー、なかなかチャレンジャーだ!

いや、ホットマッドドッグもほっとかない!

P-1を3度制したカツサンドロップも勝つ気だ!

おっと、外からすごい追い上げだ!
あ、あれは、オシャレナパンケーキだ!
溶けたバターを滑らせて、一気にさした!

これは審議!
あれはパンなのか?ということでしょうか。

出ました!1着はホットマッドドッグ!
オシャレナパンケーキが抜けた後、必死に首を伸ばしての勝利!

奇跡のウィンナーだ!

2.焼ソバ戦線

『戸棚が開いた!突撃!』
隊長の掛け声で、ソバジャー部隊が目標をダッシュで奪取。

『蓋を点線地帯まで剥がせ!』
ベリッ!

「隊長!液体ソースが閉じ込められてます!」
若いソバジャーが救助に降りようとするのを、隊長が止める。

下には大量のかやく。

『まずは、かやくを底に逃がせ!貴様、学校で何を学んだ!どこの出だ!』
「はっ!自分は、付属スパイス高等学校であります!」
『後から入れ!でしゃばるな!』

かやくを処理し、液体ソースを無事保護。

『湯をはれ!』
ケトルから湯を受けとる。3分待機。
『湯を切れ!耳栓はしとけ!来るぞぉ!』

ボンッ!!

『よしっ!液体ソースを連れてこい!』
隊長自ら、ソースの封を斬る。
『悪いな、ソースるしかないんだ!かき混ぜろ!黒く染めろ!』

「う、うわぁ!」
倒れるソバジャーたち。
『あのビーム光線は…』 

マヨヨヨヨヨヨヨヨ!

『えーい、ひるむな!残さずに食べ進め!』

3.畳、駆ける

近所の畳屋に行列ができていた。
潰れかけていたのでは?
気になった俺は並んでみることに。

列が進み、中へ入るとコースター乗り場のようだ。
ついに俺の番。一畳分の畳が廊下を流れてきた。
俺は靴を脱ぎ、畳へと乗り込む。

畳が駆ける!
木造の廊下を右へ、左へ。
正面は行き止まり。
ぶつかる!
と思った瞬間、床下へ!
途チュー、鼠が逃げる闇を抜ける畳!

止まった……蝋燭が灯る。
小部屋のようだ。
からくりで部屋は上昇する。
障子が開き、大広間へと出た。
コース上は大宴会!
女中や客人や花魁やものの怪を避ける畳!
いくつもの襖が開くと……
体が浮く。空?
直後、板張りの滑り台を急降下!
目の前は庭園だ。
命を懸けて、畳が空を翔る!
すると池の錦鯉が跳び、畳ごと飲まれた。
鯉は池の中を優雅に泳ぐと、俺を吐き出した。
そこは畳屋だった。

俺は再び行列に並んだ。
この日、俺は畳に六乗した。
畳屋は大繁畳。当分はたためない床だろう。

MC1

焼きそばパンから始まるセットリスト、お楽しみいただいてますでしょうか?

前半の3作品は、ことば遊びたっぷりの作品をお届けしました!
ここからは、ことば遊びなしの作品を。

4.1K

なんでだっけ?
大学の同期だが顔見知り程度の山谷の家にいく流れになったのは。
秋なのにやけに暑い日だった。

「風呂なし1Kだけどくつろいでな。靴脱がなくてええけど」
中へ入り、驚いた。
キッチンのある場所は岩場で、川が流れている。
『何これ?』
「渓流」

本来、換気扇のある辺りには滝があり、見上げると天井はなく、秋晴れの空と紅葉した木々が見えた。
「吹き抜けなんだ」
山谷は奥の和室にいた。
「昼、ご馳走するわ」

山谷は馴れた手つきで火を起こし、水を汲み、湯を沸かし、蕎麦をゆで始めた。
川の水で冷やしたざる蕎麦。
わさびも育っていて、すって添えてくれた。
紅葉の流れる川のほとりで昼食をとった。

「風呂、入る?」
風呂なしでは?
よく見ると川の脇に溜まりがある。
「掘ったんだ。温度調整苦労したよ」
夜、俺たちは温泉に入り、満天の星を見た。

渓流から始まった交流は、だいぶ時間が流れた今でも続いている。

5.文豪ブックリポーターズ

本の形をした扉。
憧れの感想文部の部室だ。

「失礼します!」
扉を開くと、400字詰原稿用紙の床が見えた。

『新入部員さん?それとも、侵入部員さん?』
「入部希望です!」
『夏目よ、歓迎するわ。うちの部は感想を伝えて、この部室の床のマスに自分の居場所を作っていくの』
夏目先輩のマスには猫がいた。
『どう?』
「制限の中で自分の可能性を探るとは鮮烈です!」

それから、川端先輩の雪国を抜け、村上先輩に『やれやれ』と見送られ、太宰副部長のマスまできた。
『素晴らしい感想だ。私など副部長失格だ』

ついに、部室の奥に建つ巨大な門まで辿り着く。羅生門だ。
「芥川部長、入部させて下さい!」
『この部で何をしたいんだ?』
喋る門。
「作者の思いを読み解き、寄り添いたいんです!」
開く門。
『名前は?』
「一年の宮沢です!」

先輩たちのマスを縫うように進んできた銀河鉄道に乗り、私は羅生門の中へと入っていった。

6.ナイトプランナー

「うちは引き継ぎが大事だし、ブラックだけど?」
『大丈夫です』
面接官は私を屋上に案内した。

「背景を濃く、星は明るすぎる」
空にいる黒子に指示を飛ばす。
本物だ。
『夜のインクが薄いですね』
「わかる?」

この仕事は夜をつくる。
七夕の空、中秋の名月、冬のオリオン座……そのすべてを演出している。
夜空が大好きな私が憧れていた会社だ。

「今日は一大イベント。手伝ってもらうよ」
彼は指揮棒を両手に持った。
振ると、その軌跡を星が流れた。
彼が一回転すれば上空に円を描き、波打てばウェーブ。一点集中し、線を引くと太く。
圧巻の流星群だ。

「やってみな」
緊張でゆっくり引いた私の線を、ノロノロと星が流れる。
「サッと引くのがコツね」
少しずつだけど、綺麗な星を流せるようになった。

舞台が終わると、彼は黒電話で、朝へ引き継ぎを始めた。
「ようこそ我が社へ。素敵な夜をつくろう。同じ夜はひとつもないからね」

MC2

MCまで、読んでいただきありがとうございます!

400字という文字数は、原稿用紙一枚分。
400字が広がっていくと短編、中編、長編小説となっていきます。
僕が普段書いているショートショートもあれば、俳句や短歌、脚本に落語、キャッチコピーなどなど、ことばの表現は無数に存在していて、それぞれの場で表現される、続けるクリエイターの方を本当にリスペクトしています。

そんなクリエイターの方々の中であって、今回のこの記事は、自分が届けられるエンタメのひとつの形だと思いました。
全力には全力でこたえたい。楽しんでいただきたい。

つくってみた、やってみた。

そこから始まることがある。
それでは、ここからラストまでは一気にいきます!

7.履物連鎖

「埃っぽいよ、ごほごほ」

ここはある靴箱の最下層。
忘れられた靴達のスラムだ。
彼らはよく上を見上げた。
そこは上層のVIPと呼ばれるエリア。ブランド品や、デザイン性や履心地の良い靴達が何不自由なく暮らしている。

ある時、スラムの使い古しの紐靴が上層へと旅立った。
再び、表舞台に立つためだ。
旅の途中、ブーツにぶつぶつ言われ、サンダルに薄っぺらいと侮辱され、靴ベラにべらべら噂を流され笑われた。
それでも、歩を進めた。

最上層までもう少しのところ、ピンヒールが踏んづけてきた。
「ボロ靴が夢見るんじゃないわよ」
蹴落とされた紐靴はまっ逆さま。

覚悟を決めかけたその時、色違いの紐靴が紐を差し伸べた。
「あなたのソールを死なせない!」

「この組み合わせ、かわいい」
突如、現れた主は紐で結ばれた二足を手にし、履いた。
「明日、靴箱の掃除しようっと」
普段むれるのを嫌がる靴達も、その日は朝まで踊り明かしたらしい。

8.湯舟にのって

湯舟につかるとお湯が溢れた。

パパとママと入るお風呂は狭いけど大好き。
二人は今、喧嘩中。僕を挟んで知らんぷり。
もやもやのお風呂場。
何も見えない。

すると、湯煙の先から何かがきこえる。
泣き声だ。
人影が近づく。
パパとママが赤ちゃんをお風呂にいれていた。
まだ小さい僕だ。
二人は笑っていた。

今度は楽しそうな声がする。
若いパパとママが背中を流しっこしていた。
こっちの二人は、のぼせたみたいに真っ赤な顔。

数を数える声もする。
湯舟に肩までつかった男の子。
隣は若いおじいちゃん。
子供のパパだ。
僕は水鉄砲でチビパパの顔に水をかけて、驚かせた。

もやもやが晴れると、いつものお風呂場だった。湯舟からでると、三人で背中を流しっこした。
僕はママの背中を、ママはパパの背中をごしごし。

あれ?
僕の背中を洗っているのは誰だ。
振り向くと誰もいない。
そうか、わかった!
湯舟にのって、僕の子供がやってきたんだね。

9.時瓶

夏休み、私は久しぶりにばあちゃん家を訪れた。山奥の古い家だ。

『よう来たね』
「暑ちぃね」
ばあちゃん家の土間には水瓶があって、懐かしさに私はその水を飲んだ。
隣にはもうひとつ瓶がある。

「そういや、この瓶って何?」
『見てみな』

蓋をとり、覗くと硬貨や紙幣がたくさん入っている。

「貯金瓶?」
『それは時瓶といってね。その時代や場所に流れていた時間が、お金や貝殻や木の実に形をかえて落ちとってね。世界中を旅して、拾った時間を貯めてんのさ』
「どうするん?」
『このお金は換時すると、その時間を旅できてね。アンタにも時間通帳あげるね。貯時は楽しいから』

そう言い残し、ばあちゃんは消えた。
時瓶も空っぽ。
新しい通帳には、ばあちゃんがこの時代に残した時間が振り込まれていた。

帰り道、ばあちゃんくらいの歳の人とすれ違った。
私に似ていたような気もしたけど、時間を探していて、顔を思い出す時間はなかった。

10.甘乞い

世界を掛けて回る言葉遊び人がいた。

舌世の言葉たちを口説く旅。
男の口にかかれば、すべて上手いこと言った。
語尾砂漠、韻土、洒落神戸。
様々な土地を旅しても、男には忘れられない言葉があった。
故郷だ。
ショーウィンドに詩的なワードを見かけては、愛する故郷によく例えたりした。

旅を終えた男は故郷に帰り着いた。
ひどい有り様だった。
長くアイデアが降らず、創作物は枯れ、村人の頭も固くなり石化していたのだ。

男は甘乞いをすることにした。
甘い言葉を捧げ、甘雲を呼ぶ古くからの儀式。
休みなく、空を甘くて上手い言葉で口説く男。

何日めだろう。
男の言葉が響いたか、吹き出しのような甘雲が現れた。
甘雲は語呂語呂鳴り、やがて字が降ってきた。
字は大地の栄養文となり、華が咲き、文脈は流れ、村人も閃いた顔だ。

安堵した男は座り込んだ。
遊び疲れたのか、指輪にしていた宝物の句点を置くと、もう何も言わなくなった&。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!

独立した短いお話も、作品の並びや順番が変わることで、読む方の感じ方や楽しみ方も変化するLIVEのようなセットリストを考えてみました。

今後も400字の物語とともに、もう少し長めのショートショート作品もどんどん書いていきたいと思っています。
現在は来年初めの完成を目指し、ショートショート集を鋭意制作中です。

表紙イメージ(仮)

また、noteでも週に一度、たらはかにさん主催のショートショート企画に参加しております。
何かを書いてみよう!と思っている方にも、超絶おすすめの創作の場です。

また、この400字の物語を集めたアルバム(ZINE)も制作しております。
少しでも気になられた方はぜひ、ふらっとお立ち寄り下さい!

もうすぐ、クリエイターフェスも終わってしまいますが、その先もそれぞれの表現は続いていきます。

様々なクリエイターの方々の作品に触れて、凹んで、学んで、繋がって、作って作って、僕自身もよりワクワクできるような作品を届けられるよう励んでいきます!

そるとばたあ、でした!


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