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映画の中の子どもたち③

『マチルド、翼を広げ』

2017年のフランス映画。
ノエミ・ルヴォヴスキの作品。

登場人物が着ている
洋服の色の絶妙な
組み合わせとか、
住んでいる部屋の
壁紙の模様や小物の
配置にまで気を配って
映像にしているのが
気に入って、
フランス映画や
スペイン映画を
観るようになった。

この映画も
実にカラフルだ。
9歳の主人公、
マチルドがいつも
背負っているリュック
には無数のバタフライが
舞っている。

左右別の色のリボンを
使って髪の毛を
編み込むのが、
とても可愛らしい。
チラッと見える
腕時計も洒落ている。

マチルドは母と二人暮らし。
母は、精神的に不安定だ。
父は離れて生活しているが、
娘との仲は良い。

母と娘の共通点は、
空想の世界と現実の
世界を自由に行き来
しているところだ。

母は、「人生と結婚する」と
言って、純白のウェディングドレスを
買って街を練り歩いたりする。

マチルドは、
学校で見せ物にされている
人体標本の骨を気の毒に思って
盗み出して救ったりする。

「死人は葬ってあげよう」と、
森の中でたった一人墓を掘り、
スーツを着せた人体標本の骨を
ていねいに埋葬するシーンが
私は一番好きだ。特に、
指輪をはめてあげるところ。

同じ空想を抱えていても、
自分の活力にして世界を
広げていくマチルドと
違って、大人の母は、
やがて自分を見失って
闇に飲み込まれて
いってしまう。

「思考が逃げていく。
捕まえなきゃ。」
とつぶやく
母の姿は痛々しかった。

どこが境目なんだろうか?
私にはわからない。

マチルドと母は、
別々に暮らすことになる。

空想と現実のバランスを
上手くとってくれる存在
として、母がプレゼント
してくれたフクロウが
マチルドを多方向から
助けてくれる。
フクロウの声は、
マチルドにだけ
聞こえる。

このフクロウの
存在はなんなのか?
分析するつもりもないが、
マチルドのイマジナリー
フレンドというだけ
ではなく、
もしかしたら、
母が自分の中にある
「マチルドを想う心」
の一部を託したのかな?
なんて思った。

この作品は、
監督の自伝的映画だ。
監督自らが、
母を演じている。

とても一般的とは
言えない家庭で育ち、
空想と現実を行き来しつつ、
培われた思考や感情を
映画という形で
昇華させたのかと
思うと、胸が熱くなる。

境目から、「表現」
という翼で飛び立った
この映画、とても好きだ。

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