『雪の夜は小さなホテルで謎解きを』の古き良きRPG感
敢えて時期を限定するならクリスマスシーズンがベストタイミングだけども、まだまだ寒い冬の季節に読めてよかった本です。
色んな方々のnoteをきっかけに読んでみる本も、気付けばそこそこ数えられるほどに増えてきました。今回のもその1つ。
自分だけだったら全く気付かずに生きていたであろう本や映画に、誰かの何かをきっかけにふと出会うというのは、偶然のような必然のような、それでいて唯一無二のような不思議な感覚があります。あぁ楽しい。
『雪の夜は小さなホテルで謎解きを(Greenglass House)』- 著者:ケイト・ミルフォード(Kate Milford)さん
昔はそれなりに私も、金田一少年シリーズや赤川次郎さん、アガサ・クリスティーさんやらにハマっていたり、東野圭吾さんや宮部みゆきさんも読んでみたりしてました。
だって、謎解きって楽しいじゃない!
でも、「ミステリー」に振り分けられるお話って、大抵は人が殺されますよね。それも大抵は2、3人以上かもっと(ぎゃー)。謎解きをしたい気持ちは今もあるけれど、いつしか読むと辛い気持ちの方が勝るようになってしまって。
なのでもうだいぶ前から、「人が(なるべく)死なない平和なミステリー」に親和性が高くなっています。でもなかなかミステリーの棚には置いてないのよ。続けて読めたのは『ビブリア古書堂』シリーズぐらい。他にオススメがあればぜひ教えて頂きたいです。
(と言いつつ、完全にそこは割り切って、消されるのなんて2-3人どころじゃないMCUシリーズも観たりしてるけど笑)
でも今回の本は、だいぶ安心。さらに、世界観がもうたまらん!でした。
映像と違って小説でしか成り立たない絶対的ルールは、誰もが順番に文字面を追うことだけでしか先に進めないこと。当たり前だけど、「さっき画面にチラッと映ってたから気付いてた!」ってことが無いわけです。
なので、読者全員がそこで初めて気付く発見だとか、人物のキャラクター変化とか、随所で小説だけの強みが存分に活かされていました。
それに何と言っても、初期の頃のドラクエあたりを彷彿とさせる、リアルRPG感!小さい頃に友達となりきって遊んだのを思い出すなぁ。言うなれば、人の家の引き出しで(笑)「小さなメダル」を見つけるようなあの感覚。なんてことないガラクタに「賢者の杖」的に仰々しい名前を付ければ、本当にそれは私にとっては魔法の道具になっていた、あの感じ。
謎解きも良いんだけれど、この小説の中の子どもたちの世界観に私はすっかり惚れてしまい、ぐんぐん読み進みました。スマホもパソコンもなぜか出てこない、どこの国とも街ともわからない架空の家の中のお話。
こうやって電子機器でないものでたくさん遊んでたんだよな、と、すっかりスマホPCに頼りがちな大人になってしまった自分を、ちょっぴり反省しつつ。…いや、普通にゲームもしてたな。だからドラクエごっこしてたんだし笑。
ところで、原題は全然違うのね!
『Greenglass House』
ははぁ、タイトルそうきたか!装丁もタイトルも日本語版とは雰囲気も全く違うので驚き。映画でよくある邦題あるある、「タイトルだけでだいぶネタバレ」が実は炸裂してたのね…!!でも今回私は、雪の夜に小さなホテルで謎解きをしたいと思ったから読んだわけで、私の中で今回は邦題の勝ちでした。
では、せっかく見つけたからこの本の宣伝もちらりと読んでみるか。ふむふむ…
“Winner of the Edgar Award for Best Juvenile Mystery”
…ん!?Juvenile!? ですと!?児童書だって!?
なるほど、このお話、児童向けだったのね!道理で!!おっとこれ以上は言えねぇ。
日本で敢えて大人向けの装丁にしたのは何か理由があるのかしら。とは言え、児童書だからって大人も十分楽しめます。
大人が読んでも深い面白い児童書って、世の中たくさんありますよね。例えば以前紹介したこれもオススメ。
『Wonder(ワンダー)』- 著者:R.J. Palacio(R.J. パラシオ)さん
小学生の頃に初めて読んで、もはや話の筋もほとんど忘れた今、また読みたいようなまだそのままにしておきたいような気持ちに揺れているのは、こちら。
『モモ(Momo)』- 著者 : ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)さん
時間どろぼうに大切なものを盗まれまくっていた大人を、小さい頃はあれまぁと憐れむような気持ちで読んでいたけれど。いつの間にか歳ばっかりいい大人になった今、あのどろぼうたちとどう対峙できているかと思うと…ちょっと読むのが怖い気もするのです。でも懐かしいな。そうか、もう文庫もあるんだなぁ。これは単行本で読みたいな。
児童書と名の付くものほど、小さい頃に初めて読んで、少し大きくなっても、大人になっても、また読んで。活字も装丁も何も変わっていないはずなのに、印象が変わったり変わらなかったりの原体験になりますね。
大人になってから初めて読むのも、面白い。児童書も私、大好きです。