『他人の家』でモヤモヤ
何となくタイトルがキャッチーだったのでふと読んでみようかと思ったら、未読ですがよく平積みになっている『アーモンド』の作者さんの著作でした。たぶんきっと韓国で有名な作家さんの本、という知識だけで読んでみる。
『他人の家(타인의 집)』- 著者: ソン・ウォンピョン(손원평)さん
微かなデジャヴ
読み始めてすぐ、以前に読んだペク・スリンさんの著作『夏のヴィラ』
とテイストが似ているなと感じました。なんて思っていたら、本書の後書きによると、韓国語版の推薦文はまさにペク・スリンさんが書いているとのこと。ほほう。
年代の近い作家さん同士での交流があるのかも知れませんが、作風に近しいところがあるのも関係するのかもな、と思いました。
日本語版では残念ながらそのペクさんの文章はどこにも見当たらなかったのだけど、きっと静かにカッコいい感じでしたためてあるんだろうなあと推測します。
独特の世界観
ちょっと似てるなと思いきや、読み通してみたら全体を通しての印象はだいぶ変わりました。『夏の〜』も、心の闇というか深淵を覗く覗かれるような内容も含まれたり、スッキリ爽やか!ではない系統の物語は多くありました。
でも、今回の短編集である『他人の家』の方が、より全体のトーンが暗めで、不条理劇のような展開が目立ちました。それに何というか、表現がより抽象的だったり、近未来のディストピア的なダーク多めのファンタジー要素が入っていたり。
ソンさんの他の著作の登場人物がカメオ出演するというにくい演出もありますが、何というか、それすらどんよりとせざるを得ない場面で。
読後感としては、私は正直なところ、うーん。でした(ごめんなさい)。
たぶん近頃もお疲れモードなので、どちらかというと無意識に、せめてもう少し清涼感のある物語を求めて読んでいた可能性はあります。
でも、何かを静かに淡々と読みたい人には、良いのかも知れません。韓国の現代の世相を反映したお話も色々あります。
作風の評価判断って難しい
ソン・ウォンピョンさんの紹介文を読んでみると、作品によって結構作風も違うらしい。だから、この本では私は響かなかったけれど、他のでは自分にもしっくり来るものがあるかも知れません。
逆に、ある作品が大好きでその作家さんの他の作品を意気揚々と読んでみたら、あれ?なんか全然違って前の方がいい…となることも十分あり得るわけです。
ましてや文芸評論家でも稀有な超読書家というわけでもない平凡な私が、ある作家の本を1冊読んだからといって、それだけでその作家さんの作品全体へのイメージを固定化してしまうのは、たぶん、いや、だいぶ勿体無いことなんだろうな、とも思います。
実はほかの著作で無茶苦茶素晴らしい出会いがあるかも知れないのに、食わず嫌いで可能性を狭めちゃっているかも知れない。
そう思うと、よっぽど生理的にand/or論理的にムリ!!となった本でなければ、同じ著者の違う本を試してみるのは一見の価値があるのかも。
それに本って、さっき自分でも書いている通り、その時々の気分、状況、疲れ具合、年齢、経験値、などなど、外部的な要素の違いでけっこう印象が変わってきます。
あの頃は大好きだと思ってたのに、今になるとしっくり来ないとか、そのまた逆もあり得ますよね。
内容が好きかどうかはともかく、ジャンルや作家の好みに縛られず、気の向くままにその時々で気になった本を読んでみる面白さをまた知る機会となりました。
思いがけない内容に自分の気持ちがどう反応するか(例えば、ほうほう、こういうのをつまんないと思うのか、とか、こういうのも意外と好感を持つのか、なんていう発見)の観察も、興味深いものです。
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