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Where is the LOVE? 『 i 』はここに

他の国のトップが決まる話なのに、日本国内でこんなに報道が溢れ、時差もお構いなしにリアルタイムで開票速報が提示される国は、アメリカの他にもあるでしょうか?いや、無い。こういう時、日本ってアメリカに占領されていた時代の気質が抜けきれていないのかな、とひっそり感じています。

誰もが知っている通り、生活も経済も外交も、アメリカの動向は日本にとって良くも悪くも相当な影響をもたらす存在。

そんな大国アメリカで、前回の大統領在職後実に罪状34件で有罪となり、人種差別・女性差別的で、デマを拡散し、気候変動対策を逆戻りさせる人が、方針を改めるどころかそのまま突き進むことが分かっていながら当選したわけですね。積極的に支持する人だけでなく、対立候補・政党の方針に納得できず消去法的に投票した人もいるでしょうけども。

支持するしないは別として、そういう漫画のようなアイコン的存在が大国で過半数を超えて選ばれた、という事実に、シンプルに驚いています。あれだけ若さもエネルギーも多様性も内包している国で、80歳の頑固なおじいちゃんが引退を余儀なくされたら、78歳の強キャラおじいちゃんが当選する不思議。高齢が悪いというわけではないけど、任期4年もあるんだし、もうちょっと他に人材あるんじゃないかい?と思ってしまう。

トップ以外にも強キャラな議員編成になりそうで、今後の世界情勢は一体どうなっちゃうんだろうと、虚空を見つめております。

さて、以前雑誌でちらっと見かけた広告にあった西加奈子さんの小説は、大統領選とは全く関係なく最近読みましたが、日本と世界に関わる個人のアイデンティティーにまつわるお話だったので、ふと紹介してみることにしました。

『 i 』- 著者:西加奈子さん

紹介の本質は、あらすじにあるこのフレーズに凝縮されていると感じます。

たとえ理解できなくても、
愛することはできる。
世界を変えられないとしても、
想うことはできる。

Amazon公式あらすじより

ヘイトが撒き散らされることが常態化される世界では、本来まともなはずのことが「綺麗事」「机上の空論」とされます。大国のリーダーがそういうスタンスなら、これからアメリカでも、日本でも、そういう風潮がもっと強まってしまうかもしれない。

でも、いくら国の方針や世界の風潮が変わろうが、そこに住む一人一人に生活があり、物語があることは変わりません。結局、国と国の関わりじゃなくて、人と人が解像度を上げて関わることがいかに重要か、と私はさらに強く思います。

この本は、シリアで生まれ、日本人とアメリカ人カップルの養子となり、アメリカで育ち日本で成長していく女の子、アイ、のお話です。アイのように多様な背景を持つ人は、日本にも実際少なからずいますが、アメリカほど多くはありません。

異文化・多文化の環境を渡ることでぶつかる壁とか、悩みとか、葛藤とか。そういったある意味「あるある」事象もたくさん出てきますが、この本は「あるある」の羅列をして外国人はこう、移民はこう、養子はこう、みたいにカテゴライズするような薄っぺらい内容ではありません。

どんなにカテゴライズされてもあくまで一個人としてのアイを。ある属性に属していても内面的なものは個人個人千差万別であるという事実を。そういったことを丁寧に描くことで存在するアイを知ることから、世界へ想いを広げることができるでしょう。

この先どんな国際問題が起ころうが、人と人、個人と個人の繋がりが大切なんだ、重要なんだ、という「綺麗事」を、こんな時代だからこそ、私はこれからも愚直に体現していきたいと思っています。

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