【Research】 単位と技術と企業とデザイン ( G-series,70年代和文タイプライター,航空会社Oceanic Airlines )
さて今回は少々雑多ですが,私たちの生活や暮らしに当たり前に存在している,単位,技術,企業という概念を再考するきっかけとなるオーダーのリサーチを紹介します!
【 1 - 16. G-series 】
オーダーは,新しい紙のフォーマットGサイズの提示(そのためのサンプルやチャート,ダミー)です。
まず紙について考えました。例えば新聞は,ネットニュースやSNSなどと比べるとスピードは遅いけど情報の信用度は高く,印刷の不可逆性を示しているいい例であると考えます。
講師陣から「経済的な合理性と過剰なグローバル化から来る規格化は,その土地性の様なものが失われていくというコンセプトを踏まえておく必要はある。日本の単位で畳の枚数から家の規格が決まるのは面白い。」と意見があり,まず単位という概念に着目した方が良さそうだと考えました。
世界中の単位の起源をリサーチすると,腕,足,手,親指,体から単位が決まることが明らかになってきました。
『人間は万物の尺度である』という古代ギリシャの哲学者プロタゴラスの言葉は,概念的な『人』でなく,世界中の一人一人の人のことだと捉えられます。
オーダーに対する具体的な回答として,
・展示会場を最大の単位にして,それを当分して単位を作る。
・学生全員の腕の長さ測り,それぞれのGsizeにする。
・ある日の延ばした足とそこにつけた腕(日々ストレッチで変わるので紙サイズも変わる)
など,平均化されすぎた世界へ物申すようなアイデアを提案したいと考えています。
【 1 - 17. moon disasters 】
これは,アポロ11号の宇宙飛行士たちが月で遭難した場合にニクソン大統領が取るべき対応のメモと、テレビで読み上げるIn Event of Moon Disaster (月での災難に際して)と題した追悼文です。大統領のコピーライター William Safire (ウィリアム・サファイア)が寄稿しました。
このオーダーではこのテキストを日本語訳し、1970年代の日本製タイプライターを使用して5枚コピーを作成します。
日本とアメリカの違いに着目しながらリサーチを行う中で,特に日本製のタイプライターについて興味を抱きました。
欧文タイプライターと異なり,ひらがな,カタカナ,漢字,その他記号を含め2000種程の文字を打つことができますが,その分打ちたい文字を探すのが大変で打ち間違いの頻発は避けられなかったようです。
その他にも,句読点は版の面積が小さいため力が一点に集中するので,活字が紙を突き破ってしまう一方で,画数の多い漢字は圧力が分散されるので鮮明に印字するにはより力を入れて印字レバーを押すなど,機能面は洗練されておらず,印字するには繊細な力加減と集中力を必要とします。
このような繊細な作業は,MagicキーボードやCanonの高機能プリンターが溢れた現代では味わうことはほぼないでしょう。
このプロジェクトを通して,普段使用しているキーボードやプリンターでは使うことのない身体感覚を体感しながら,印字する体験ができたらと思います。
【 1 - 18. Oceanic Airlines 】
こちらはアメリカのドラマや映画に登場する架空の航空会社 Oceanic Airlinesについての作品です。この会社の新しいコーポレートデザインをし,いくつかのオブジェクトを作ることが今回のオーダーです。
物語の中でOceanic Airlinesは,ハイジャックや爆破または墜落など,様々なハプニングを起こします。実際の航空会社が負いたくないマイナスイメージを一手に引き受けてくれているようです。数々の作品を跨いで登場するので,虚構だと分かっているけれど,皆が共通認識で作品に利用し見る側もそれを分かっている状況は, Oceanic Airlines が人々の意識内で確実に実在しているように感じます。
ワークショップ内で Maki や Radim から,Oceanic Airlines が他の航空会社とどう違うのかをリサーチしてアプローチしていくようアドバイスしていただきました。
爆発することが前提であるようなこの航空会社の魅力が伝わるように,リサーチとアイデアの検討を続けていきます。
今回は,紙の単位や文字を打つこと,航空会社など,現代では当たり前の存在に,私たちのデザイン的観点を通して新たな側面に向き合うオーダーの紹介でした。
次回のリサーチ紹介は、小説などの創作された物語とデザインの関係を見つめるオーダーの紹介になります。
ぜひ!
【 クラウドファンディングのご支援のお願い 】
本プロジェクトは,今秋の展覧会開催のためにクラウドファンディングを実施しています。
現在目標金額400万のうち,半数の200万円ものご支援をいただいております。
ご支援いただいた皆様,本当にありがとうございます!
こちらは7月末までの期日で,まだまだ皆様のお力が必要です。
少しでも「応援したい」と感じた方は,ぜひご協力よろしくお願いします!
詳しくはこちらのリンクからご覧ください。
また,以下のSNSも随時更新しております!
ワークショップの様子など紹介していますので,こちらもぜひご覧ください。
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