鯛の昆布締め
今夜のおつまみ、鯛の昆布締め。鯛はさくのまま全体に薄く塩を振って冷蔵庫で30分ほど寝かせ、出てきた水分を林家ペーパータオルでよく拭き取る。出汁用の昆布を鯛の大きさに合わせてカットし……と言っても我が家にはそんな巨大昆布はないので、四枚並べたらちょうど鯛の大きさになるくらいにカット。これを八枚用意して、濡らした林家ペーパータオルで全体を拭いて湿らせておく。サランラップの上に湿らせた昆布四枚を並べ、その上に鯛を寝かせ、さらにその上に残りの昆布を載せたら、なるべく空気を抜くようにサランラップで包む。これを冷蔵庫で一晩から二晩寝かせたらできあがり。
鯛なんて滅多に買えない超高級食材なのだけれど、いつも行くスーパーで特売がかかると「こ、これなら買える……!」というお値段になるので、その時は勇気を振り絞って買います。そんなわけで超絶久しぶりに昆布締めを作りました。いつにも増して荒々しい盛り付けぶりから、日頃いかに鯛(というかお刺身)を家で食べ慣れていないかがお察しいただけるかと思う。
じっくり二晩に渡って昆布の鎧をまとった鯛……もう私の貧相な語彙で表現するまでもないかと。どちゃくそめちゃんこおいしいです!塩でキュッと引き締まった鯛を口に含むと、昆布の香りがふわりと広がり、続いてえもいわれぬ昆布の旨みが追いかけてくる。鯛の清廉にして淡白な身体、それだけでもおいしいのに、そこに昆布の出汁を効かせるだなんて、そんなのどう考えても最高であります。一切れ食べるごとに脳汁がバンバン溢れてくるうまさ。そこにきりりと冷やした辛口の白ワインをすかさず流し込む……至高!至高オブ至高!あまりのおいしさに泣けてくるわこんなの。紫蘇でくるんで食べると、鯛の上品さと昆布の旨みに清々しい爽やかさが加わって、もう脳内が大変なことに。己の分泌した脳汁で溺れそう。浮き輪!誰か浮き輪投げて早く!
鯛のみで腹を満たせる(かつ、ワイン一本呑みきれる)量を買うだけの財力は持ち合わせていないので、サイドおつまみとして冷や奴も用意してみた。醤油にごま油数滴落として食べるのが大好き。これは池波正太郎御大の「剣客商売」で呼んで以来、ずっと真似しているお気に入りです。
私はお酒を外で呑んでも家で呑んでも、いわゆるシメを食べる習慣がない。シメの時間帯にはお腹がはつはつになっていて、もうお酒しか入らない状態になっているからだ。周りがお茶漬けとかうどんとか頼む傍らで、いつも空気を読まずシメのお酒を注文している。最後にラーメン屋に流れても、ラーメンは頼まずハイボールと搾菜なんかを頼んでいる。だって炭水化物なんか入れる隙間があるなら、一滴でも多く呑みたいんですもの……。
でも今夜は何しろ鯛の昆布締めがあるため、お茶漬けを食べぬわけには行くまいよ!ということで鯛茶漬けでシメました。ほかほかごはんに鯛を載せ、そこに昆布とお酒と薄口醤油で作ったあつあつの出汁をたっぷり注いで、白ごまと紫蘇の実漬けを添えてできあがり。脳味噌が完全にバカになるおいしさです。キュッと締まっていた鯛が、出汁との邂逅によってその身をふんわりとほどき、やわらかくなっている。さっぱりと上品な出汁と共にさらさらサラリと掻き込むと、なんとも満ち足りた気持ちになった。ああ、おいしかった……!ごちそうさまでした。でもまだワインが少し残っているので、引き続き呑みます。