読んだ本の感想『みどりいせき』
TLに流れてきた受賞スピーチを見て、おもれー!と何も調べず買い求めた本。こんな感じの買い方は、金原ひとみさん、村田沙耶香さん、以来かも。作品というより面白い作家さん出てきた!という期待でワクワクする。
で、読み始めてみたら…
あ、やばいやつだ😅 最後まで読めるかな…この感覚は、『くっすん大黒』ぶり(途中下車した気がする)。
タイトル『みどりいせき』だって、何のことか、わからないのだ。内容も、よくわからないまま進んでいく。文章じゃなくて口語。しかも私たちが話す口語ではなくて高校生のまあまあやんちゃな子たちのそれで、本当にわからん笑
でも、小学生の野球の話から宇宙の138億年の話になり、太陽系や地球の誕生を成長期を迎えた未成年たちのニキビに例えて生まれたくもないのに生まれてきたことやお父さんが死んだことに触れながら、いろいろ拗らせてる高校生男子の主人公の現在にたどり着いたところでワォー!となった。
だんだん読めるようになってきた、と思わすうまさ
ちょうど半分くらい読み終えたあたりで「今読んでる本」の話題になった時、私は偉そうにこう言ったのだ。
なんだかラップやってる人たちみたいな独特のリズムの口語体の文章だから、最初は何のことだかわからなかったんだけども、読んでいくうちにわかるようになるねん。
なんか、古文漢文てさ、ちんぷんかんぷんなんだけども慣れると何となくわかってくるみたいなのあるやん。あんな感じ。言葉とか文章が変わっていくのかも?と思うとワクワクする!そんな作品だよー!
いや、ホントにそう思ったまま読み終わって、「くっすん大黒」では無理だった感じの作品を楽しめたことの満足感が大きかったんだけど(それこそ、主人公の桃瀬が「普通の高校生がやらないことをこなしてることに特別感を抱いてた」ような痛い感じだ)、待てよ?と思って、また最初から読んでみたら、やっぱり読みにくかった。つまり、作者が途中から手を緩めてくれたってことね…笑 やられた。
お話の中の出来事は、実はどうでもよい
作品紹介で必ず出てくると思うが、この小説は、違法薬物の取引や摂取にまつわるさまざまな出来事の渦中にいる、普通の道は踏み外してしまった高校生たちのお話だ。
なので、あぁあぁ、という部分はたくさん出てくる。そんこなことしたら…ということだらけだ。
でも読みながらわかっている。顛末がどうのこうのという話じゃない。捕まるとか、逃げ切るとか、痛い目に遭うとか、そういうのはどうでもいいことなのだ。太田ステファニーさんが書きたいことは、それじゃないんだと、思うった。
センセーショナルだからそこに目が行くけれども、大事なのは、その出来事の中でどんな感情を抱いて、何を特別だ、大事だ、失いたくない、と思っているか、一方で、何をどうでもいいと思っているか、それを、どんなふうに相手に伝えようとしているか、だなぁと。
そんなんで伝わる?と大人の私は心配になるのだけれど、しっかり伝わっていたり、そんな言い方したら離れちゃうよ?と思ったら、全然平気だったり、私にはわからない中で、この子たちめちゃくちゃ感じ合ってるんだな、と思った。
息子や息子の友達たちは、ここまでの話し方はしない。しないけど、LINEのグループ通話しながらゲームやってる時に聞こえてくるわちゃわちゃとした話題の中身は何言ってるかわからないところは同じ。話し言葉の程度は違うし、違法薬物とスマブラは違うけれども、たぶん同じことなんだなと思う。
タイトルの解釈
『みどりいせき』。ひらがなで、変なタイトルだけど、言葉にはなってるから意味は想像できる。緑、遺跡。と読む前は思っていた。
けど、違った。たぶん。
とってもlovelyなタイトルだな、と私は解釈した。
面白かった。
いろいろ感じた。
次の作品も読んでみたい。