【フィンランドで出会った人図鑑 #1】 元船上シェフおじさん
フィンランドに来てから、
街で出会った印象的な人たち。
その一つ一つの出会いを
思い出として忘れないように、
まとめてみることにしました。
もともと初対面の人に
積極的に話しかけるタイプではないのですが、
せっかく新しい環境に来たのだから
「出来る限りたくさんの人と話そう」
「初めて会う人にもオープンでいよう」
と決めていました。
実際に来てみると、
日本から8000㎞離れた地に来て何か吹っ切れたのか、
知らない人とコミュニケーションを取ることが
だんだん楽しくなってきました。
自分から誰かに話しかけたり、話しかけられたり、
知らないおばさんと一緒にランチを食べたり。
(これはまた後日)
ということで、そんな出会いを
「フィンランドで出会った人図鑑」として
シリーズにしようと思います。
ちなみに表紙のイラストは
「その人たちの特徴、会ったときのまま」
を描いています。
#1 元船上シェフおじさん
〈 属性 〉ジャパン lover 属
〈 年齢 〉83歳
〈 外見 〉中肉中背、ハイキング風スタイル
〈 職業 〉元船上シェフ(現在は不明)
〈 好物 〉アジア料理
〈 出会った時期 〉2023年6月初旬
〈 場所 〉ラハティ市内・バス停
〈 その後の繋がり 〉なし
「どこから来たの?」
フィンランドに来て2週間目くらいの頃、
IDカードを作るために、市の中心部から
少し離れたところにある警察署へ行きました。
用事が終わり、バスで家へ帰ろうと
Googleマップを確認すると、
あと5分くらいで近くのバス停に来るとのこと。
警察署の周りはほとんど住宅街で、
車やバスが通る大きな一本道があるだけ。
平日の朝で人はほとんどいませんでした。
1人でひたすら歩いていると、
目的のバス停に先客が一人。
ベンチが空いているのに座らず
真ん中に立っていたので、
絶妙にこっちが座りずらい状態。
見た目は50代くらい。
良い感じに使い古したリュックサックを背負い、
顎紐が付いた帽子をかぶった
おじさんでした。
アクティブな服装だったので、
「旅行者かな」
「朝からハイキングでも行ってきたのかな」
くらいに思っていました。
そっと隣に立って待ってみましたが、
バスが来る気配は無い。
おじさんも私が来たことには気づいていましたが
話すか話すまいか迷っている感じ。
無言の間が気まずかったため、
思いきって「バス来ないですね」と
英語で話しかけてみました。
すると「うーん来ないね」と言いながら振り向き、
目が合うと、何かに気づいたかのように
「どこから来たの?」と聞かれました。
「日本です」と答えると、
「おー!こんにちは!初めまして!
えーお会いできてウレシイデス(日本語)」
とニッコニコの笑顔で話してきました。
(以下英語)
「え日本語話せるんですか!」と聞くと、
「昔ある日本人から習ったんだよ~」と。
何十年も前に、
とある日本のCAさんと食事をする機会があり、
その時に簡単な日本語の挨拶を教えてもらったそう。
おじさんは十数年たった今でも、その方の名前も
その日本語も、はっきり覚えていました。
そのあとも、昔柔道をやっていたこと、
日本食が大好きで家でお寿司を作ったりすること、など
次々と日本愛を語ってくれました。
私がなぜここにいるのかも興味があるらしく、
大学のために来たことを伝えると
「フィンランドはどう?」と聞かれ、
「街がすごく綺麗で、歩くのも楽しいです」と答えると
嬉しそうに笑っていました。
ここで気づきます。
バス全然こない_
すっかり忘れていましたが、10分以上遅れていました。
やっとのことで来たバスに乗っても、
まだ会話は続きます。
衝撃だったのが
このおじさん、83歳だったこと。
うちのお父さん(50代)と同じくらいに見えてた…
背筋はピンと伸びていて、
足腰もしっかりしてて、
確かにたまに耳が遠いときはあったけど
全く歳を感じさせない印象でした。
(運動が趣味らしい)
昔はクルーズの船上シェフとして働いていたらしく、
料理をすることも食べることも好きだそう。
私が「フィンランド料理でおすすめは何ですか」と聞くと、
「んー無い」と。
「サーモンスープとかあるけど、これといったものは無いし、僕はインドのカレーや日本食みたいなアジア料理のほうが大好きなんだよ」
と話していました。
(後に出会ったフィンランド人みんな結構な確率で同じこと言う)
その後もおじさん(いやおじいさん)の
人生遍歴を聞いていると、
バスは中心部のマーケット広場に到着。
月に一回、フリーマーケットが行われるのですが、
その日がたまたまその開催日。
窓の外にたくさん人がいて賑わっていたため、
降りてみることにしました。
丁度おじさんも友達と待ち合わせをしているらしく、
そこで一緒に降りて、お別れを言いました。
降りる時も、バスの揺れに負けない
すごい体幹の持ち主。
(自分の方がよろよろだった)
最後に名前を聞いてみると、
「たいすとぅ」
スペルが分からないのでひらがなのまま、
スマホにメモしました。
いつかまたどこかで会えますように。
ー 元船上シェフおじさん ー
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