ユーザー継続率向上に寄与する「顧客コミュニケーション設計」の進め方
こんにちは!UXデザイナーのまっちです。今回から「UXデザイナーの実践知」をテーマに連載していこうと思います。1回目ということで少し緊張していますが、ぜひご覧ください。
今回はクライアントからも多くご相談をいただく「サービスの継続利用のための仕掛け作り」についてお話ししたいと思います。オンラインサービス事業者にとって、サービスをリリースした後は、継続的に事業を成長させていくフェーズに移ります。ユーザーにどうしたらサービスをより使ってもらえるか悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
グッドパッチでもクライアントから、ユーザーの満足度向上・継続利用のための仕掛け作りについてご相談をいただくことも少なくありません。ユーザー継続率はLTVやエンゲージメント向上のために見る重要指標の一つである一方で、確実な答えがないために、様々な施策を取り組まれています。
このような悩みに対して効果的な「顧客コミュニケーション」の設計をご紹介したいと思います。今回はグッドパッチのUXデザイナーが実際にプロジェクトで実践したプロセスや工夫点をもとにお話しします。
こんな方におすすめ
プロダクト・サービスをリリースし、利用者が増加した。しかし利用者の状態にあわせてどんなコミュニケーションを取ればサービスをもっと利用してもらえるかがわからない
離脱率や解約率を下げるために施策を打つべきだが、チームで統一した認識を持てていない
漠然と「こうしたほうが良さそう」という勘所は持っているものの、計画的/効果的に実施できない
顧客コミュニケーション設計とは
顧客コミュニケーションとは、プロダクトのユーザーニーズや悩みを把握し必要な改善策を提供したり、より使いたくなる施策・情報の提供を通じてユーザーとコミュニケーションを取ることです。これにより継続的にかつ満足してサービスを使ってもらうことにつながります。
またこの設計ではプロダクトを使ってユーザーに実施してほしい行動やそのタイミングを定量/定性調査から見極めることが重要となります。
というのもユーザーの行動の結果が最終的には企業のビジネス成果につながるため、どの行動がインパクトをもたらすか、どのタイミングの行動が課題なのかを整理せず施策を実行すると改善効果が薄くなってしまうからです。
これからご紹介する2つのプロジェクトでは、この定量/定性調査を行った上で見極めたユーザーの行動をより多くのユーザーに行ってもらえるように顧客コミュニケーションを設計しています。
プロジェクト①ユーザーに行動を促す設計を行いABテストで検証
このプロジェクトではアプリのオンボーディングに課題がありました。まずは定量分析を通じてアプリをダウンロードした初日のオンボーディング達成率や1ヶ月後の継続率を調べ、その上で「1週間継続利用する人は1ヶ月後の継続率も高い」というような相関関係があるか調査しました。
この定量データを元に定性インタビューを設計し、顧客の課題を洗い出しました。プロダクトのチーム状況によってはすでにインタビューした内容から課題の洗い出しができる場合もあるため、再度インタビューを実施するかはチームで判断できるとよいでしょう。
コミュニケーション内容の検討・検証を実施する
改善施策を考える際に定量・定性調査から明らかになった課題に対応するコミュニケーションの目的や方法を検討しました。
この時、方法を考える上ではユーザーが行動したくなるか確認しながら進めることがポイントです。
なぜなら「こういう行動をしてね」と伝えたとしてもユーザーが必ず行動してくれるわけではありません。ユーザーにメッセージを送った後の行動について開発側では完全にコントロールできず、ユーザーの判断が全てだからです。(上図)
そのため、メッセージを受け取った後にユーザーの気持ちが「行動してみようかな」と動く施策やメッセージになっているかチームで確認できることが重要です。
ABテストを実施する
ABテストとは、2つ以上のパターンをランダムに表示し、それぞれの閲覧数やクイック数などの結果を比較することで、より高い結果を得られるパターンを見つける方法です。
ABテストでは比較対象・指標となるKPIや対象などを検証設計としてを行い、プロダクトに実装してユーザーの反応を確かめました。
上図の場合、Aの方が格段にユーザーが次の行動を選択しており、結果的に継続率が向上してることがわかりました。このようにABテストの結果を踏まえユーザーの反応がよかった改善施策を採用していきます。
このプロセスによるメリット
過去のインタビューから漠然と「こうしたほうが良さそう」という勘所を持っている場合、施策をまずは実施したくなってしまうのではないでしょうか。このプロセスを踏むことで、一呼吸おいた上で体験が適切か見極めて仮説精度を高めることができます。同時にABテストは比較的クイックに検証を回すことができるため、定量的にも「より確からしい」結果を導きつつ、効果のある改善施策を実施することが可能です。
プロジェクト②アカウントプラン見極めと顧客ピラミッドによる仮説設計&インタビューやメール検証
このプロジェクトではクライアントの提供するBtoB向けアプリの利用促進に課題がありました。エンドユーザーとなる人事担当者へのフォロー体制に悩みを持たれていました。
そこで、アプリの提供価値とビジネスの成果を紐づける「アカウントプラン」の作成を行い、コミュニケーションの設計を行いました。
アカウントプランは、新規見込み顧客や既存の顧客に関する重要な内容を体系化するプロセス(https://japan.marketone.com/articles/account-plan#i)となっておりますが、こちらのnoteではプロダクト価値とビジネス成果を接続するアクションをまとめた計画書と呼んでいます。
ユーザーが手に入れたいものや結果に対し直接プロダクトが提供する場合もありますが、特にBtoBの場合はそうでない場合が多くアカウントプランはこれをフォローする役割になります。
例えば採用向け施策支援代行アプリ(施策がラインナップされており、ユーザーは選ぶだけで施策が実行できる)で考えると、
採用向けの施策をアプリで提供する(プロダクト価値)
利用者である採用担当者がアプリで施策を実行する
求職者が参加し応募者が増加する
結果、採用者数が増加する(ビジネス成果)
という流れが生まれるため、このアプリにおけるアカウントプランは施策実行の推進となり、この方法としてメール配信や相談会などの具体案に繋がっていきます。
アカウントプランはコアの行動から考える
アカウントプランは上記のように簡単に決まるわけではなく、開発チームの中で自分たちのプロダクトの価値について確認するプロセスが必要です。
まず、プロダクトを通じ利用者に実施してもらいたい、かつ企業のビジネス成果につながる効果が高いコアの行動を明らかにします。
具体的には、定性的なインタビューを実施し明らかにうまくプロダクトを活用している人の行動を把握すると、一定の傾向が見えてきます。例えば、人事部が求職者から「楽しかった、また参加したい」というような声を聞き、施策を実施する意欲が湧いているというような傾向が見えてきたりします。
同時に定量的にも調査できるとよく、施策実施による満足度が高い人ほど継続している、というような相関関係がわかるデータがあると、ビジネス成果につながるコア行動の確からしさがより高くなります。
アカウントプランの具体化を進める
コアの行動が明らかになった後は顧客ピラミッドの考え方を活用します。例えば施策回数別・解約予備軍といったセグメントを分け、それぞれリクルーティングしインタビューを実施します。
どの情報を届ければ行動をしてくれるか価値仮説を考え、セグメント別に数件のメールを送信し、開封率やアプリへの遷移率を測る調査を実施しながら、より具体的で効率的な成果に繋げるプランを考えていきます。
このプロセスによるメリット
アカウントプランを作成することでユーザーに促進すべき行動・ ユーザーの分け方の基準・それぞれへの提供すべき情報やコミュニケーションの取り方、プロダクト改善案をチーム内で共通認識を持つことができます。また、全方位的に施策を打つのではなくユーザーをセグメント分けすることで施策の効果を高めることにもつながります。
さいごに
以上、2つのプロジェクトの進め方のご紹介でした。顧客コミュニケーションの設計においては定量/定性調査を起点にすることが重要です。そうすることで、セグメントを分けることができ、それぞれの課題に合った施策を提供することができます。
グッドパッチでは、こうした定量/定性調査を活用したプロダクトの改善サイクルや、ユーザーとのコミュニケーション設計のノウハウが蓄積されています。少しでも現状の進め方に不安があったり、お悩みを抱えていたら、ぜひ一度気軽にご相談ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?