【ファジサポ日誌】25.フォーカスをどこに置くのか~第39節vsツエーゲン金沢~
悔しいです!
アウェイ金沢戦は完敗でした。
この敗戦により、2位横浜FCとの勝点差は8に広がりました。2位以内、自動昇格への可能性は残されていますが、それにはファジアーノが残り3試合で全勝のうえ、2位横浜FCが1分2敗となることが最低条件になります。
社交辞令ではなく、本当に諦めてはいませんが、一方で3位を死守するという現実的な戦いにシフトする必要も出てきました。
チームは金沢戦の前日に今シーズンの6位以内(プレーオフ圏内)を確定しましたが(本当はこれだけでも快挙なのですが)、現在の3位でシーズンを終えることが出来れば、J1昇格プレーオフでJ2相手の2試合をホームで開催できます。しかもドローでも勝ち上がれます。
この優位性は非常に大きいのです。
何が何でも3位は死守しなければなりません。
そして順位という結果だけではなく、再び上り調子で今後の戦い(プレーオフを含めた)に臨む必要があります。そのためにはこの敗戦を糧にして、内容の改善を行うことが必要です。
今回は現地に行けずDAZNでの観戦になりましたので、岡山の失点シーンを中心にフォーカスし(ツライですが…)、今後の成長への材料を探りたいと思います。
1.金沢戦 試合結果&スタートメンバー
2.好調金沢のキーマン
3.弱点露呈
4.フォーカスをどこに置くのか
1.金沢戦 試合結果&スタートメンバー
前節岩手戦を3-1で快勝した金沢はスターティングメンバーに変更なし、好調を維持しようというねらいです。
一方、岡山は(7)チアゴがこの試合もベンチ外となりました。
ワントップにオーストラリア代表帰りの(15)デュークが戻り、ベンチには前節で好パフォーマンスを魅せた(38)永井、そして前節メンバー外の(27)河井が復帰しました。
2.好調金沢のキーマン
実はツエーゲン金沢には尊敬しているサポーターさんがいらっしゃるのです。Instagramに投稿をされているのですが、その写真やキャプションのひとつひとつから選手やクラブへのリスペクトが伝わってきます。
その影響か、いつも動向が何となく気になってしまう、そんなクラブのひとつです。
6月のホームでの対戦は5-1、圧勝しましたが、様々な変遷を経て現在は別のチームになっているといえます。
9月を2勝3分1敗と好成績で終えた金沢ですが、特筆すべきは6試合12得点の攻撃力です。各得点の細かい分析まではしていませんが、好調の要因はシンプルであると思います。最終ラインの安定と中盤の攻撃関与です。
① 金沢最終ラインの安定について
ポイントのひとつが、7.16の途中出場からこの岡山戦まで13試合連続で出場しているCB(35)孫大河の存在です。
大卒1年目の選手ですが、大学4年の昨シーズンにサガン鳥栖の特別指定選手となり、今シーズン正式加入。残念ながら鳥栖では出番がなく、6月に金沢へレンタルされました。
金沢のCBは長年(27)廣井友信が主力を務めてきましたが、その(27)廣井も37歳。世代交代を進めている最中なのです。今シーズン当初はやはり鳥栖から移籍の(4)松本大輔と(39)庄司朋乃也がファーストチョイスになっていましたが、この一角に(35)孫が割って入る形になりました。
(35)孫、(39)庄司の若いCBコンビは経験不足を露呈し(庄司は出場試合数は多いですが、若手と本格的にコンビを組むのはおそらく初です)、(35)孫がスタメンに定着した第28節からは5試合連続の複数失点、計16失点を記録してしまったのです。
もし、今回の対戦で金沢に弱いイメージを持っていた方はこの時期のゲームを観ていたのではないでしょうか?
これが9月に入り改善する訳ですが、シンプルにこのCBコンビの「慣れ」により最終ラインに安定感が生まれます。更にMF(6)松本大弥が得点を量産し始めました。
今シーズン7得点をマークしている(6)松本弥ですが、このうち実に6得点は8月以降に上げたものです。
これも細部まで観ていませんが、試合後の金沢、柳下監督のインタビューからは、マイボールになった際の後ろの選手の攻め上がりや追い越しについて少しずつ出来るようになっている点が読み取れます。
ボランチを主戦場としている(6)松本弥の得点増はその象徴ともいえ、ボランチから一列前のLIHへ配置転換された岩手戦では、一気に2得点とその攻撃力を更に増しつつあったのです。
守備の安定から良い攻撃へ。攻守のバランスが良い金沢は非常に良い状態で岡山戦に臨んでいたといえます。
3.弱点露呈
この試合、岡山が3バック採用以降の弱点を金沢に突かれた一戦でした。
一般的な3バックの弱点は3バックの脇にスペースができることと言われています。岡山に当てはめるならこんな感じです。
もちろん岡山もその弱点はわかっており、皆さまご存知のように守備時には4-4-2(または5-3-1)のブロックを形成し、3バック脇のスペースを埋めています。
では、前半19分岡山の失点はどのような要因で起こったのか見てみましょう。
岡山右サイド寄り(16)河野から(14)田中の前を狙ったロングボールは長くなり金沢(35)孫へ。(35)孫は自陣左サイドに持ち運び、タッチライン際にロングボールを送ります。
岡山右サイドにいた(5)柳はこのボールに対応できず、対峙していた金沢(11)杉浦に裏をとられ、そのままドリブルで持ち運ばれゴールを許しました。まず失点の流れを図示します。
ポイントが2点あると思いました。
このゴールシーンの前、(5)柳は(26)本山にフィードしているのですが、ボールを出した後、金沢(11)杉浦の動きに合わせて、タッチライン際にポジションを移しています。
岡山としてはしっかり人につく場面ではありますが、(11)杉浦のこの動きによって(5)柳が吊り出された格好になっています。
金沢(35)孫のロングボールはこの(11)杉浦をめがけて迷いなく蹴られており、このシチュエーションは偶発的ではなく金沢が予めデザインしていたものと考えられます。
映像ではボールへの対応に(5)柳が慌てているようにも見えます。(35)孫のフィードに何らかの工夫があった可能性もあります。
そしてもうひとつのポイントは、金沢(20)林のランです。(5)柳は(23)バイスにカバーを求めていますが、(23)バイスは(20)林のランを警戒しながらの追走となり、カバーが間に合いませんでした。
このシーン、すぐに金沢が前線にボールを送ったことにより、岡山は守備ブロックを形成することが出来ず、最終ライン背後のスペースを使われてしまいました。それではこのシーン、岡山はどのように対応すべきであったのでしょうか?いくつか考えてみます。
① 柳のポジショニング
最近の柳は状況によって前に出てきます。前に出ることによってプレスに参加。最終的な刈り取り役も担っています。例えば、以前に示しましたこのシーンです。
岡山の前線がプレスしながら相手のパスコースを限定していますが、最終的には(5)柳が刈り取っています。こうした(5)柳の働きにより岡山は高い位置でゲームを進めることが出来るようになりました。
おそらく(5)柳は(11)杉浦に入るボールを狙っていたのでしょうし、刈り取る自信もあったのでしょう。
しかし、そのポジションは(11)杉浦を外に置く形が良かったと思います。(11)杉浦が外にいれば、裏を取られてもサイドに追い込むことができました。
② (41)徳元のカバー
この失点シーンの最後で(41)徳元がチラッと画面に入ってきます。細かいポジショニングは分かりませんが、その前のシーンでは一度岡山は(41)徳元の左からビルドアップを試み断念しています。
この左から作ろうとして断念したタイミングで一度下がり目のポジションを取るという選択肢はあったのかもしれません。
今の岡山はLWB(22)佐野が中に切れ込む、またサイドに流れることによって出来た隣レーンのスペースを(41)徳元が使うことで分厚い攻撃を展開しています。(41)徳元のポジショニングは(22)佐野と連動していますのでどうしても前目になりますが(この試合では後半5分のシーンが代表的です)、今後の相手によっては守備リスクも考えなくてはなりません。攻撃時にカウンター対策として、最終ラインのカバー枚数を増やす。これは現実的な選択肢かと思います。
(34)輪笠が(20)林を掴まえる可能性も考えましたが、ライン間でのポジションを取って攻撃に備えていましたので、少し難しかったかもしれません。
金沢のキーマン(35)孫が起点となった岡山の1失点目でした。2失点目はもう一人のキーマン(6)松本弥の鋭い動き出しにやられてしまいました。
後半7分です。
相手陣内左サイドでボールを受けた(22)佐野がダイレクトで中の(14)田中に浮き球のパスを出そうとしますが届かず、金沢(8)藤村にカットされます。この瞬間(6)松本弥は前線に向かってダッシュを開始、(14)田中のプレスを受けた(8)藤村は(20)林へ浮き球を出し、自らリターンをドリブルで運びます。
岡山(34)輪笠がボール奪取を試みますが交わされ、岡山陣内右ニアへ走り込んだ(6)松本弥へパス、岡山(5)柳が対応も、早いタイミングでクロスを出され、(23)バイスのOGを誘ったシーンでした。
少し距離がある(14)田中へリスクが高いダイレクトの横パスを出そうとした(22)佐野の判断ミスがきっかけになりましたが、この後の金沢のカウンターが非常に速くて見事でしたね。
(6)松本弥がボールを受けようとせず、前線へ駆けあがった判断、スピード、そしてパサーのイメージが強い(8)藤村のドリブルは意表をつくもので少し岡山の対応が慌てたように見えました。
(34)輪笠が(8)藤村にスライディングすれば、止められていたようにも見えましたが、最終ラインも控えていましたし、自身も出場停止にリーチがかかっている状況では冒険は出来なかったかもしれません。
事実(5)柳の対応も余裕があるように見えましたが、(6)松本弥のクロスを上げるタイミングが速く、これも(5)柳の予測を上回ったように見えました。
綺麗に崩された場面でしたが、この2失点目については私は金沢を評価するべきと考えます。
この日、現地観戦された前述の金沢サポさんの話によると、この日は観戦中に熱中症になる方も続出したコンディションでした。(5)柳にしても、(23)バイスにしても判断やプレースピードにいつもよりも狂いがみられた試合でした。
以上から岡山の弱点を一言で述べますとカウンター攻撃に弱いこととなります。そして、この弱点を補うフォーカスをどこに向けるのかが、今後の戦いのポイントになると思うのです。
4.フォーカスをどこに置くのか
3失点以上の敗戦は実に第4節町田戦以来でしたが、岡山としては一番良い状態の金沢に当たってしまったということは言えるかと思います。
では岡山の時間はなかったのかというと、そんなことはなく実に打ったシュートは22本、ただし枠内が6本とフィニッシュに精度を欠いた戦いともいえます。
木山監督の振り返りはこの点に置かれています。
続いて(35)堀田のコメントです。
今年のファジアーノはブレていなくて、あくまでも相手よりも得点を多く奪えなかったこと、そして相手陣内での即時奪還にフォーカスしています。
ある意味、潔いですし好感も持てるのですが…
この金沢戦で、岡山の弱点が今後対戦する各チームに露呈したことになります。この先、リーグ戦やプレーオフで当たるかもしれない各チームは、それぞれサイドやライン間のスペースの使い方に特徴があります。
秋田のサイドへの落とし、クロスの質、熊本の人と人の間でのポジション取り、大分の強烈な右サイド、J1・16位は果たしてどうでしょうか?
当然、岡山の弱点は狙われることになります。
だからこそ、個人的にはこの日の失点、特に1失点目については守備のリスク対策に繋げてほしいと思うのですが、この点は現場サイドで細かい修正が行われるかもしれませんし、この先の試合に注目したいと思います。
そしてチームのフォーカスに則しますと、今後はこの日多かった中盤でのパスミスは厳禁です。ミスをしない、狭いスペースでも慌てずにボールを扱える、そしてゴールから逆算した展開力を持つ(27)河井陽介の力が改めて重要になります。
開幕当初に(27)河井に注目していました。ダイレクトプレーばかりではなく、しっかり彼に預けることも必要です。
まとめ
それでは簡単にまとめます。
1.金沢は好調であった
2.岡山は金沢のカウンターに屈することにより弱点を露呈した
3.チームは相手より得点すること、ボールの即時奪還にフォーカスする
4.相手カウンター時の最終ラインのカバーについてもフォーカスしてほしい
5.この先、河井陽介の力がより重要になる
最後に(23)バイスの言葉で締めましょう。
#我々はファジアーノ岡山なので絶対に諦めることはない
お読みいただきありがとうございました。
(写真は以前の金沢遠征の際に撮りました。)
※敬称略
【自己紹介】
今シーズンから未熟な内容ながらもレビューを続けております。
ありがたいことに、最近、コメントや反応をいただくことも多くなって参りましたので、少しばかり自己紹介をさせていただきます。
麓一茂(ふもとかずしげ)
40代。社会保険労務士です。
コミュニケーション能力に長けていないにもかかわらず、人の意図、心情、人と人との関連性、組織の決定などを推測しながら、サッカーを広く浅く観ています。
公私において、全体的にこのレビューのような論調、モノの見方、性格だと思います。
1993年のJリーグ開幕でサッカーの虜になり、北九州に住んでいた影響で、一時期はアビスパやサガンをよく観戦していました。
(ギラヴァンツが産声を上げるずっと前の話です。)
ファジはJFL時代からです。
J2昇格がかかったリーグ終盤、佐川急便戦を落とした時の伊藤琢矢選手の涙は未だに印象に残っています。
ずっと何気なく一喜一憂しながら応援していましたが、2018シーズン後半に「なぜファジは点を取れないのか」考えるようになり、ちょっとずつ戦術畑を耕すようになりました。
ミラーレス一眼片手の乗り鉄です。
金沢アウェイに岡山→大垣→東京→上野→水戸→郡山→会津若松→新津→新潟→直江津→泊→富山→金沢という、周囲から不思議がられるルートで入ります。状況が許すようになれば、乗り鉄&away戦のレビューも行いたいです。