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【ファジサポ日誌】66.哀しき完全燃焼~第28節清水エスパルスvsファジアーノ岡山~

※カバー写真はいつかの静岡鉄道、新清水駅付近です。

今、出せる力は出し尽くしたのかなと感じたアウェイ清水戦でした。
全体的にみましてチームはよく戦えていたと思います。
そう思いますので、精一杯戦った結果に寂しさも感じました。
振り返ります。

1.試合結果&スタートメンバー

J2第28節 清水vs岡山 時間帯別攻勢・守勢分布図(筆者の見解)

結果は0-1の敗戦でしたが、正直なところ点差以上の差を感じましたし、秋葉体制の清水が案外これまで取りこぼしてきたことを考えても、その隙を突ききれなかった点に岡山の力不足を感じました。

岡山としては前半0-0は計算どおりであったと思います。
しかし、誤算は後半でした。
これまで岡山は後半立ち上がりの15分に攻勢を仕掛けるゲームが多かったのですが、この時間帯に守勢に回ってしまい、最終的に(10)C.ジュニオに先制ゴールを許してしまいました。おそらくこの時間帯に大きくゲームプランが崩れたと推測します。
レビューではこの時間帯を中心に紐解きます。

J2第28節 清水vs岡山 スタートメンバー

続いてメンバーです。

清水の選手層の厚さを感じさせるラインナップでした。
前節で負傷した(33)乾貴士や(9)チアゴ・サンタナは不在でしたが、今シーズン9得点の(10)C.ジュニオ、カップ戦から調子を上げてきたコソボ代表(17)B.コロリ、乾不在のトップ下にはボランチの(14)白崎凌兵が上がり、ボランチにはユース出身の実力者(13)宮本航汰が穴埋めする布陣です。更に海外挑戦から復帰した(70)原輝綺がRSBに、(23)鈴木唯人もベンチ入りしました。

岡山は熊本戦で好プレーを魅せた(6)輪笠祐士が(44)仙波大志に代わってスタメン復帰、あとは前節と同じメンバーなのですが、システムが3-1-4-2(3-5-2)から3-4-2-1に代わっていました。この変更のねらいについても後ほど触れてみたいと思います。

実はそれよりも注目しましたのが、ベンチに(13)金山隼樹の名前が無かったことです。これまで今シーズンはリーグ戦2試合に出場している(13)金山ですが、(1)堀田大暉や(21)山田大樹がスタメンの際もチームの精神的支柱としてベンチ入りを続けていました。
しかし、この試合、今シーズン初めてベンチを外れました。天皇杯湘南戦で安定したプレーを魅せた(21)山田大の評価が更に上がったのかもしれませんが、(13)金山のアクシデントでない限り、若手中心で今後は戦っていくというベンチの意思表示なのかもしれません。

2.レビュー

(1)3-4-2-1のねらい

月曜の熊本戦から中4日となる岡山にとって、このゲームの3-4-2-1には体力面の消耗を防ぐ意図があったようにみえました。

J2第28節 清水vs岡山 5分清水のビルドアップに対する岡山の制限

5分(22)佐野航大が自陣でインターセプト、そのまま左サイドを駆け上がりシュートまで至った直後の陣形です。

ねらいのひとつは2トップで行うよりも、立ち位置で効率よく清水のビルドアップに制限をかけることであったと思います。
前線から3枚で清水最終ラインに制限をかけ、清水の球出しを遅らせることで味方のネガトラを助け、守備ブロックを敷く時間をつくる、1人あたりの走行距離を短くする、そして清水のダブルボランチにそれぞれマークに付くことで、サイドへの誘導をより確実に行うという意図であったと思います。
この場面は清水CB(50)鈴木義宜からいったん(57)権田修一に戻させ、更に右に展開させました。

J2第28節 清水vs岡山 8分清水のビルドアップに対する岡山の制限

続きまして8分、今度は清水が高い位置からビルドアップを開始します。
ここでも(8)ステファン・ムーク、(18)櫻川ソロモンの2枚で清水のダブルボランチを確実に消しています。そして(14)田中雄大は清水(28)吉田豊を見ながら(10)C.ジュニオへのパスコースを消しています。
この状況で清水(50)鈴木は5分の場面同様にパスコースを探っています。これだけでも岡山にとっては「時間稼ぎ」に成功していたといえます。

そして前線3枚のこの立ち位置は、(14)田中、(8)ムーク共に5-4-1の守備ブロックに移行しやすかった(赤い矢印)という効果があったように見えました。

清水が直近で敗れたのが6/28の第21節秋田戦(0-1)でしたが、この試合では秋田の守備ブロックに対して、清水は中央を避け外へ展開。そこから何本ものクロスを浴びせましたが、秋田の強固な中央を崩すことが出来ませんでした。
おそらく岡山にもこのような守り方のイメージがあったのではないかと推測します。

しかし、そんな守備ブロックをも崩さんとばかりの清水の巧さを感じた前半でもありました。
先ほどの8分の場面では、実は清水を右サイドに誘導出来ず、(17)B.コロリの動き出しの速さと(4)高橋祐治の視野の広さから岡山陣内中央にパスを通されてしまいます。守備ブロックが強固な分、そこから先には通さなかったのですが、徐々に清水は各選手の鋭い動き出しと強く速いパス、判断の速さから岡山の守備ブロックをこじ開けようとしてきます。

岡山は高い集中力により対抗しますが、攻撃時のパススピードや判断スピードでは個の部分で大きな差があったと感じました。

この前半、岡山の前線守備のキーマンであった(8)ムークがイエローカードを受けてしまったのは大きな誤算であったといえます。

前半0-0でチームとしてはゲームプランどおりであったと思いますが、結果的にはこの前半に先制出来なかったことが響きました。決定機があっただけにです。この点は後ほど触れたいと思います。

(2)運動量低下から後手に回った後半

前半にイエローカードを受けた(8)ムークから後半開始に(48)坂本一彩にスイッチ。前半は清水のボランチを上手く消していた岡山でしたが、この後半は(18)櫻川も(48)坂本も清水最終ラインに積極的にプレスを仕掛けます。しかし、このプレスが甘く、かつ後方と連動していない為、清水のボール運びは前半と比べて格段にスムーズになってしまいました。

木山監督としては、前半を耐えて後半に前から奪いにいく「自分たち」のサッカーという考えであったのだと思いますが、却って清水を助けてしまったように筆者には見えました。
この試合に関しては少なくとも後半途中までは、前半と同じように戦うべきであったと思います。

更に清水はこの後半から3バック(守備時5バック)に変更、(70)原がRCBに移り、岡山前線からのプレスに対して数的同数、また数的優位を保ち始めます。攻撃時には(11)中山克広や(28)吉田豊も前半より高い位置に押し出され、一気に攻勢に出ます。

岡山にとって不幸であったのは、後半開始から10分も経たない内に、見た目にも明らかに各選手の運動量が落ちたことでした。中4日の不利がおそらく想定より早くきてしまったのだと思います。

清水(10)C.ジュニオの先制点のシーン、(5)柳育崇は自らのプレーに失点の原因を求め、サポーターからも彼の責任を問う声が多いようですが、そもそも清水のビルドアップに対する前線からのプレッシャー、岡山ライン間にボールを入れられた際の中の寄せ等、チームとしてすべてのプレーのスピード、強度が甘くなっており、個人の責任を強調しても何の解決にもならないと筆者は考えます。あえて責任というのであれば、ベンチ、選手、全員の責任ではないのでしょうか?

ただそれでもこの1失点で凌いだ守備については、清水のJ1級の攻撃精度を踏まえましても筆者は及第点であったと思います。

(3)ゴールを奪うために

以上のような試合展開であったことを踏まえますと、結果論ですが前半の決定機逸が悔やまれます。時間を巻き戻して16分(18)櫻川が決定機を迎えたシーンを考えてみます。

J2第28節 清水vs岡山 16分 岡山の決定機

素晴らしい攻撃であったことは間違いないのです。
左サイドを(41)田部井涼が長い距離を走りサポート、(8)ムークが前向きにボールを持ち(14)田中を経由して(18)櫻川へ。(18)櫻川がフィジカルを活かして反転、コントロールショットを放ちますが僅かに外れます。清水の(50)鈴木が巧く肩を入れた分(18)櫻川のシュートが外れたように感じました。(18)櫻川も、ある意味(5)柳と同様でこうした目の前のプレーを決め切れないことに責任を感じているようです。

しかし(18)櫻川は清水の(4)高橋と(50)鈴木に挟まれており、当然(57)権田もその後ろに控えています。枠内に飛ばすのは難度が高い作業といえるのではないでしょうか?
全体的に岡山の選手は相手を背負っていたり、相手が目の前にいたりと苦しい体勢でシュートを撃っているように見えます。
もっと楽な体勢、フリーの状態でフィニッシュを撃てないのかと考えた場合、この場面について一考の余地があるように思えます。

J2第28節 清水vs岡山 16分 岡山決定機のシーン仮説

この場面、(8)ムークはゴールに向かってボールを持ち、前に広いスペースがあったことを考えると、彼が最も良い状況でシュートを撃つことができた可能性があります。図示しました程、単純にはいかないかもしれませんが、まずは(8)ムークがもっとドリブルしてボックス内に入っても良かったと思います。そしてゴールに向かったままシュートを撃つことが出来れば、ゴールの可能性はより高まったかもしれません。
その為に(18)櫻川は清水2CBを引きつけて囮になる選択もチームとしては必要であったのかもしれません。
もちろん(18)櫻川は自分で獲りたい、それは熊本戦の彼の様子を踏まえましても理解はできますが、例えばこの場面であれば(8)ムークに撃たそうとすることで、自分自身へのマークが緩くなりフリーになれる可能性も出てきます。(18)櫻川自身がゴールを決めるためには、ボックス内で他の選手の為に動くことも必要なのかもしれません。

3.まとめ

ちょうどこの試合でリーグ日程の2/3を終了しました。
岡山には数字上十分なプレーオフ進出の可能性が残りますが、今シーズン連勝が1度しかないこと、良い内容のサッカーをみせながらも攻守が噛み合わず勝点を十分に上積めない現状を考えますと、プレーオフ進出は極めて厳しい状況といえるのかもしれません。更にこの試合では、最近の繋ぐサッカーで進境著しい活躍を魅せていた(41)田部井が負傷しました。怪我の詳しい状況はわかりませんが、離脱となれば大変痛い戦力ダウンとなります。

サポーターとして残り14試合をどのように観ていけばいいのかという事を考えた時、木山監督が今の「繋ぐ」サッカーの完成形をどこまで求めるのかという点が筆者には気になります。

これまでの監督のコメントを聞く限りは、元々ポゼッションは重視していないと思いますし、ポゼッションに対してのアンチテーゼすら感じる時があります。それが故に昨シーズンのサッカーになったという側面もあり、ポゼッションサッカーの新潟に年間で勝ち越すなどの成果も挙げられた訳です。

しかし、今シーズンはミッチェル・デュークがいなくなり、相手の対策も進んだ、更には審判の判定もテクニカルなチームに有利になるよう傾きかけている、このような状況を踏まえて「繋ぐ」サッカー、自分たちでボールを持つことに取り組んでいるのだと思います。
しかし、まだ岡山の「繋ぎ」では清水は上回れない。それもはっきりした一戦でした。例えば、自陣でマイボールになった際に、近くの味方に預けてリターンを前向きにもらって攻撃に転じるような「繋ぎ」も必要になってくるのです。熊本も得意であると思いますが、これが出来るようになれば、この試合での失点のようなシーン、自陣に押し込まれた場面で失点せず裏返すことも出来るようになるのだと思います。

もっと「繋ぐ」ことを残りの14試合で極めてほしいです。

2021シーズン終盤のような来季に期待を持たせる勢いがあれば良いのですが、積極的な補強がない現状ではそれは難しいのかもしれませんね。

しかし、前年3位チームの意地は見せたいですね。

今回もお読みいただきありがとうございました。

※敬称略

【自己紹介】
麓一茂(ふもとかずしげ)
地元のサッカー好き社会保険労務士
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ
ゆるやかなサポーターが、いつからか火傷しそうなぐらい熱量アップ。
ということで、サッカー経験者でもないのに昨シーズンから無謀にもレビューに挑戦。
持論を述べる以上、自信があること以外は述べたくないとの考えから本名でレビューする。
レビューやTwitterを始めてから、岡山サポには優秀なレビュアー、戦術家が多いことに今さらながら気づきおののくも、選手だけではなく、サポーターへの戦術浸透度はひょっとしたら日本屈指ではないかと妙な自信が芽生える。

応援、写真、フーズ、レビューとあらゆる角度からサッカーを楽しむ。
すべてが中途半端なのかもしれないと思いつつも、何でもほどよく出来る便利屋もひとつの個性と前向きに捉えている。

岡山出身ではないので、岡山との繋がりをファジアーノ岡山という「装置」を媒介して求めているフシがある。

一方で鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派でもある。
アウェイ乗り鉄は至福のひととき。多分、ずっとおこさまのまま。

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