【人間】
秋と自殺
大学2年の秋、僕は自殺をしようとした。
昇る朝日を横目に少し頬に刺さるような風を4階のベランダで受けながら、飛び降りようとした。
あまり記憶はないが1時間~2時間ほど立ち竦んだと思う。勇気が出なかった。ただそれだけだった。
自分に価値があると思い込んでいた幼少期。親の作品にだけはなりたくないともがき、自分の存在をこの世の中に残そうとしていた。映画のような主人公になりたかっただけだった。時がたち、自分は何者でもないということに薄々気づき始めた。高校生になったころにはとっくに生きる希望を見失い、自分に価値はないと思い込んだ。自分に価値はないと感じてから今度はせめて誰かの作品になろうと思ってた。愛してくれる人の最高の作品になりたかった。
作品と愛
愛する人のすべての要望に応えた。わがままも言わなかった。好みに合わせた。ただうまくはいかなかった。完璧な作品になろうとしても、なったとしても誰も受け入れてくれはしなかった。
しかし、完璧な作品になろうと心がけてからはうまくいかなくても後悔はしなかった。人のせいにできた。自分自身を合理化することができた。
みかけの愛を大切にしていた。