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暗中模索。

雨の日。冬。夕暮れ。
ふと頭に蘇る光景。

下校のチャイム。
冷えた村民体育館。小4。ミニバス。習字塾。
終わりのドアを開ければ既に暗く。
塾から自宅まで約5キロの道のりを。
歩く。歩く。

ひとりだろうが、暗かろうが、雪になろうが、
関係は無く。
ただ、ひたすら歩く。

途中、イタチ注意の真っ赤な看板が怖かった。
その看板を過ぎ去ると、
街灯もなくなって、徐々に不安が煽ってくる。
友達たちのように、
誰か迎えにくるかと少しの期待をいったりきたり。
立ち止まるという選択は無く。
小さな歩幅で懸命に歩く。

夜道を照らすのは
稀に通る車のライト。
雲間から覗く月明かり。
内心には想像のひかり。
自然に温みを求めて、もう少しだと、ひたすら歩く。

今、想えば
その時から始まっていたのかもしれない。

大人になった今も
あの頃と同じように歩けているか。
純粋に温みを求めて歩けているのか。

ありもしない期待や
綺麗な思い出に執着せず
臆せずに。立ち止まらずに。

月読の光。
四季の風。
水鳥の羽音。
花が好きな蝶の歌。
うん。
風景と言葉と感動を愛して、
残された時間。どこまで行けるか。
温みを求めて、もう少しだと、ひたすら歩く。歩く。

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