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国内のイタリア野菜産地事情 10年間で変わったこと

中小企業診断士のフクダです。
先日、国産イタリア野菜産地が集まる展示商談会「カンポ・プローバ」で司会を務めました。
私は2013年に初めてゲスト参加、2014年からは毎年出展しています。国内の西洋野菜市場はこの10年で随分状況が変わったなあ、と感じる部分がありましたので、今日はそのお話。


イタリア野菜とヨーロッパ野菜

イタリア野菜、ヨーロッパ野菜といっても、具体的にピンと来ない方が大半だと思います。
最近、特に注目されているイタリア野菜、ヨーロッパ野菜をいくつか挙げてみます。
・ラディッキオ(トレビス)
レタスの仲間で赤紫色の葉野菜。日本ではサラダ用として使われるが、イタリアでは加熱して食べる事が多い。
・カリーノケール(サラダケール)
世界的に流行しているサラダ用の柔らかいケール。キャベツの仲間で栄養価が高く注目されている。青汁用の品種よりも甘く柔らかく食べやすい。
・ビーツ
鮮やかな赤、黄色、渦巻模様などがある根菜。ボルシチなどの煮込み料理やサラダ、チップスなどで食べられている。「食べる輸血」と言われるほど栄養価が高い
・ルッコラ・セルバーティカ(ワイルドルッコラ)
日本で栽培されているルッコラ(ロケット)よりも小ぶりで風味が強い。イタリアではこちらのルッコラが主流。
他にも色々ありますが、またの機会にご紹介しましょう。

カンポ・プローバとは

イタリア語で「試験農場」という意味。2011年に、埼玉県加須市にあるトキタ種苗の大利根研究農場で始まったことから、この名前が付きました。
トキタ種苗はイタリア野菜の品種改良で有名な種苗メーカーで、毎年6月に、全国から国産イタリア野菜の産地団体が集まる展示商談会を開催しています。
プロ向けの展示商談会で、来場者は市場関係者、商社、食品メーカー、スーパー、外食チェーン、レストランなどのバイヤー。
この展示会は販路開拓の場であるとともに、全国のイタリア野菜生産者が一同に会する、生産者どうしの情報交換の場にもなっています。これからイタリア野菜を栽培したい生産者も多数来場します。
私は2013年から「さいたまヨーロッパ野菜研究会」(ヨロ研)の事務局を務めているため、毎年参加しています。

産地と生産者の数が増えた

今回(2023年)、展示会に参加した産地は29団体。この展示会には主に東日本の生産者が集まるので、全国の産地は40以上あると思われます。
2013年のカンポプローバに参加した産地は10団体程度だったと記憶しています。産地は飛躍的に増えました。
毎年出展団体を見ていると、入れ替わりは多いものの、毎年着実に栽培規模を増やしていく産地が増えました。ヨロ研も初出展の2014年には1ha未満だったのが、今では10haを超える栽培面積になっています。

ユーザーのニーズが多様化した

10年前から様々な分野のバイヤーが来場する商談会でしたが、当時は産地側の規模が小さいこともあり、成約にたどり着くのはレストラン向けの青果卸と、個人レストランが大半でした。

今年、バイヤーで目立ったのは大手チェーン飲食店、商社、スーパー、ネット通販サイトなど。以前は専門レストラン向けの食材でしたが、最近はファミレスやスーパーでもケールやビーツを見かけるようになってきていますね。
ファミレスなど、多店舗展開するお店に安定供給できるくらい、国内の産地が成長してきたことも関係しています。

産地が多様化した

以前、この展示会に来場した飲食店のお客さんに「みんな売ってる野菜が一緒じゃん、こんな展示会やって意味あるの?」と言われたことがあります。

10年前は「市場向けに1品種を大量に作る産地」と「レストラン向けに少量多品種栽培」のほぼ2択でした。栽培エリアも限られました。
今は北海道から沖縄まで産地が広がっています。
今年は初めて「レストランなどへ直接販売する少量多品種産地」と「チェーン店等への安定供給が可能な大ロット産地」にフロアを分けました。取引形態も、ニーズに合わせて多様化しています。

栽培方法は、大規模の有機栽培産地が目立ってきました。以前は有機栽培の生産者というと小規模な個人農家が多かったですが、こちらも様変わりしてきています。

また、産地もJAの部会単位、生産者同士のグループや組合、さらに地域商社など、多様な運営形態になってきました。

大型産地のリレー栽培ができるようになった

10年前、イタリア野菜の産地は少なく、市場規模も限られていました。
「こんなマニアックな野菜を大量に作っても、売る場所がないでしょう?」と言われたこともあります。
しかしこの10年、トキタ種苗はもちろん、全国の生産者とも「みんなで東京のイタリアンに売り込んでも仕方ない。地元を中心に市場全体の規模を広げていこう」というお話をし続けてきました。

10年後の今、ようやく国産イタリア野菜の市場規模は広がってきました。円安も手伝って、これまで輸入に頼っていたラディッキオなども、国産に切り替えようという動きが目立ってきました。

その結果、ケールなど、いくつかの野菜で全国の産地リレーができるようになり、大手チェーン店で国産イタリア野菜のメニューが提供される機会も増えました。

国産イタリア野菜・ヨーロッパ野菜の今後

国産イタリア野菜の将来については、トキタ種苗さんともよくお話をしています。
現在はニーズに供給が追いついておらず、潜在ニーズも掘り起こしきれていない状態です。産地を育てながら、同じペースで販路を作っていくという非常に難しいコントロールが必要になってきます。
また、大規模な産地リレーの前提として、隣県ぐらいまでの「地産地消流通」で売れる市場を作る必要があります。これは一般的な直売所だけでなく、飲食店向け卸売業者との連携が必須になってきます。
どれも難しい課題ですが、イタリア野菜の生産・流通に関わる方々はみなさん向上心があるので、まだまだ伸びていくと期待しています。



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