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「もったいない」だけでは失敗する地域ブランド商品開発

中小企業診断士のフクダです。
今日は地域ブランド商品のなかでも、規格外品や未利用資源などを活用した「もったいない商品」の開発についてお話します。

いらないものを加工して、いらないものができる悲劇


地方産品が集まる展示会に行くと「もったいない」「フードロス対策」「アップサイクル」「SDGs」などのキーワードをちりばめて開発された商品をよく見かけます。
B品や規格外品、加工過程で捨ててしまう部分、これまで食用にされていなかった食材などを原料にして作った「もったいない商品」は、行政などからの補助金が出やすく注目されやすいので、安易に開発されがちです。

食育や、SDGsの意識付けキャンペーンの一環として取り組むならば素晴らしいことです。でも、こういう商品って正直、なかなか売れないんです。
結局売れ残って賞味期限を過ぎて、捨てるハメになることも。
売れない理由ははっきりしています。プロダクトアウトの商品だからです。

「プロダクトアウト」と「マーケットイン」

「もったいない」と思うのは、大抵の場合、作り手・売り手です。
もったいないから加工して、食べられるようにしたい。保存が利くようにしたい。常温で売れるようにしたい。
そうやって作られた乾燥食材、ペースト、健康茶、佃煮などなど、たくさん見てきました。
しかし、お客さん目線でその商品を見たときに「もったいなくないから買いたい!」って思うでしょうか。

作り手目線で、技術や素材をベースに商品開発することを「プロダクトアウト」といいます。
「良いものを作れば売れる」という考え方です。
分野は違いますが、大学発ベンチャーなどでもこういった「プロダクトアウト」の商品や技術を作っているところが沢山あります。
iphoneのように革新的な商品であれば爆発的に伸びる可能性がありますが、食品でプロダクトアウトに成功することは、かなり難しいです。

逆に、お客さんのニーズを深掘りして商品開発することを「マーケットイン」といいます。
ここで気をつけなければいけないのは、お客さんに「何が欲しいですか?」と聞いても、お客さんの口から答えが出てくることはない点です。不満はあるけれど、お客さん自身が答え(欲しい商品の具体的な姿)を認識していることは、ほぼありません。
お客さんの目線で商品を開発することは、マーケティングの専門家でも難しいのです。

お客さん目線で欲しい商品を作っているか

例えば、「もったいない加工品」の代表格に、野菜を乾燥させて粉砕したパウダーがあります。
原料が沢山あるから日持ちするパウダーにしてみました。調べてみると健康効果があるみたいなので、そこをウリにしたいんですが、どこに売ったらいいでしょう? といったご相談もよくいただきます。
残念ながら売れないことが多いです。

レストランで使ったり、惣菜などの原料に使えたとしても、乾燥させれば重量がかなり減りますし、加工すれば加工賃がかかります。結果、キロ当たり単価がかなり高くなり、業務用としても使いにくくなってしまいます。

とはいっても、パウダーが全部売れない訳ではありません。

私が事務局を務めている「さいたまヨーロッパ野菜研究会」でも、メンバー企業のレストランがビーツのパウダーを作っています。
これは、「もったいない」からできた商品ではありません。

ビーツは鮮やかな赤色が特徴の野菜で、「食べる輸血」と呼ばれるほど栄養価が高いことも知られていますが、調理に手間がかかるのと、独特の土臭い香りがあることから、なかなか普及しませんでした。
また、収穫期も限られるため、地元の飲食店や学校から「ビーツを使いたいんだけれど、使いにくい」という声が多くありました。

そこで、「お客さん目線」で、ビーツのきれいな色や甘みを生かしたまま、土臭い香りを抑えてパウダーにすることで、手軽にビーツを使えるようにしたのです。

鮮やかな色のビーツパウダーを少量混ぜるだけで、パスタやポテトサラダ、スープ、スイーツなどを手軽にピンク色に染められるようになりました。しかも天然色素なので、健康を気にされる方でも安心です。

ビーツパウダーは昨年発売とともに人気商品となり、あっという間に品薄になりました。

同じ野菜のパウダーでも、どちらの目線で開発するかで売れ行きが全く違ってきます。
「もったいない」プラス「お客さん目線」で、売れる商品を作っていきましょう。


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