「見立て」のもたらすもの
愛してやまない小村雪岱の装丁した本。泉鏡花『日本橋』の景色です。表題の画像は、美術展ナビ 【開幕レビュー】「意匠の天才」、グラフィックデザイナーの先駆者 精緻な仕事ぶりに感嘆 小村雪岱スタイル展 三井記念美術館 – 美術展ナビ (artexhibition.jp)(2023年11月12日閲覧)よりお借りしました。
この展覧会にはもちろん最大の楽しみをもって伺いまして、それまで観た雪岱の魅力とはまた違う、といいますか、その雪岱ワールドの捉え方に感嘆した作品に出合えました。それが、この『日本橋』の装丁を見立てて製作された漆器です。
立体にしてなお、夢見るようなかすかな妖艶な景色をそのままに、かつ甘すぎないのは、やはり上品で繊細な苫舟のフォルムと、技術の高さがもたらす迫力のゆえでしょう。大分長い間、ためつすがめつ穴のあくほど眺めておりました。時間を忘れる、幸福な感動体験です。どんなに、雪岱を愛し、その世界をなぞらえて、深く模索したんだろう。。。と、感謝の念さえ覚えたほどです。
画像のキャプションに添付しましたリンクからお入りいただくとご確認いただけますが、作家 若宮隆志氏は、泉鏡花の熱烈なファンだそう。あ、そうか、やはりそこに愛があるからね、と後から勝手に納得しました。
もう、一種の凄みを感じる、深ぁ~~~い追及の末の極上品です。にんげんの ”好き” とか ”没入する" などの感性の力って、超人的な集中力を生み出すものですね。ふつう、自分の大切にしているものに関連させた別物には違和感を持ちがちかと思いますが、これには完全に参りました。
これこそが、「見立て」の力ですね。常々書き散らしている日本の手仕事の捧げる、込めるメンタルがもたらすもの。実際、芸術大学の授業では「見立て」とは日本独特の感性だ、というコメントを聞きました。
ちなみに、他にも雪岱&鏡花にフォーカスした作品も製作されています
この彦十蒔絵さんには、折々の展覧会で作品を拝見します。先日ツイートしました超絶技巧展にも、出品してらっしゃいました。
作品との出逢いは、ひととの出逢いの深さにも匹敵することがあります。
小村雪岱は泉鏡花との出逢いが重要な転機となりました。
わたくしにとっては雪岱、彦十蒔絵さんにとっては泉鏡花、そしてわたくしは、雪岱のおかげで彦十さんの素晴らしいお取り組みにも出逢えたわけです。