「すばらしき世界」感想
監督:西川美和
主演:役所広司
ジャンル:クライム、スリラー、ヒューマンドラマ
あらすじ
元殺人犯・三上
人生の大半、13年間を刑務所で生きてきた男・三上。繊細でまっすぐで不器用、短気な元極道。
4歳で親と離別、施設に入る。11歳ごろから放浪癖が生じて暴力団と関わり始める。16歳で初犯。
刑務所を出てからのことを考えていたが、繰り返しの日々で世間のことも分からず、頭が真っ白になっていったという。
三上は血圧に病があってうまく働けず、生活保護を申請。
そんな折りで「母親探し」を番組に依頼して、ディレクターの津乃田と出会う。
三上のまっすぐさ、不器用さに惹かれる
一見すれば、元極道の男が一生懸命暮らしているだけの話なのですが、三上は動作ひとつとっても繊細で、細かくて、怒りと感情のまま生きている。
真っ直ぐやりたいだけなのに、世間の冷たさや薄れた人情に翻弄される。
とても下手くそな生き方からなんでか目が離せません。
吉澤プロデューサーが言う「レールからはみ出たら死ねと言わんばかりの不寛容な社会」「でもレールの上を歩いている私たちも、ちっとも幸福なんて感じてないから、はみ出た人を許せない」
という台詞が印象的です。
我慢を重ねて行き着くところは…
三上は人を殺しているけど、そこに罪悪感を持てるほど普通でもない。
仲良くなったスーパーの店長とも喧嘩し、役所の担当にも見捨てられ、津乃田からは「人に暴力を振るうのをやめなければ社会で生きていけない」「あんたは母親に捨てられたんだ」と言われ、居場所を失う。
そして三上は暴力団に戻っていってしまう。
でも兄弟分と再会してから、組が警察に検挙されそうになっていた時に、兄弟分の奥さんに
「最後のチャンスをふいにするな」「シャバは我慢の連続ですよ、その割に大して面白くもない、けど空が広い」と説得され、三上は東京まで帰ってきます。そして母親に繋がる人と出会う。
転がるように三上の人生は好転していく。そして、最後は……
本当に最後まで目が離せない衝撃の作品です。見る価値がある。